5月中旬のある快晴の日、大阪ガスビルの屋上に突如、田んぼが出現!実はこれ、京都大学大学院農学研究科水環境工学研究室が進めている栽培実験なんです!
大阪ガスでは、環境負荷の低減や省エネ、生態系の維持など、屋上緑化によるさまざまな取り組みに励んでいます。
そこで京大の研究に賛同し、社屋の屋上を提供するという形で共同研究しているんです。
川島茂人先生と濱武英先生が、研究室の大学院生に指示を出しながらテキパキと動いておられます。青い水槽一つひとつが田んぼになるんですよ。
この実験は今期で3期目。焦点は、ズバリ「イネの水耕栽培でヒートアイランドをどれだけ緩和できるか」です☆
これまでの研究を簡単にご紹介すると、1期目(2011年)は、まず「炎天下や風雨にさらされる屋上という環境で育つかどうか」の実験でした。「茶わん1杯ぶんのくず米しか収穫できませんでした。しかも、まずくて食べられたものじゃなかった(笑)。でも、しっかり育ってくれました」と濱先生。
2期目(2012年)は「せめて食べられるくらいには」と肥料の入れ方を試行錯誤。「水耕栽培のイネは、土で栽培するイネより肥料の養分の消費が多いので、最適な肥料の量と施肥のタイミングをいろいろと探りました。
そしてこれまでの問題点をクリアし、さらに「水耕栽培でヒートアイランドをどれだけ緩和できるか」を定量的に調査するのが、今回の3期目の実験なのです。
これは水耕栽培といって、水と肥料だけで育てるシンプルな栽培法。簡易で、土よりも軽量なんです。
この実験は、なんと世界初のプロジェクト!屋上でイネを育てる試みはすでに行われていますが、水耕栽培によるものは、意外にも世界で初めてなんです(^^)
さあ、田植えスタート!
苗を一本一本スポンジで包み、水槽内のネットに挿し込みます。
とても細かい手作業!
この青い水槽一つから、0.5合(茶わん一杯分)のお米が収穫できます。
「イネは吸水力が強く、多量の水を積極的に葉から蒸発させます。そして蒸発とともに田んぼの表面からは熱が奪われます。
つまり、田んぼがあると、それだけ屋上の床面に熱が届きにくくなるんです。しかも、暑さがピークになる夏にかけてよく生育します。
だからイネを水耕栽培すれば、植栽や芝生など普通の庭園よりもヒートアイランドの抑制効果が高くなるはずです」(濱先生)。
濱先生は、「水耕栽培によるヒートアイランド抑制効果をデータで明らかにして、さらにはそれを分かりやすく定量化して、どんどん広めていってもらえればうれしいですね」と展望を語られました。
去年は、収穫したお米を大阪ガスクッキングスクールで調理してもらい、みんなで味わったんですよ♪今年も収穫の秋が待ち遠しいところです。