(1993〜2019年)
長い年月をかけて、家族のカタチは少しずつ変わってきています。現代における家族とは個人の集合であり、それぞれが個人としてのプライバシーを尊重されるべきという意識も強くなってきました。
そんな中、住まいの基本モデルは“nLDK”という定型の形式を取ったままであり、今後さらに多様化していくと見られる家族のカタチにとって、最適とは言い難いものとなっています。
「自立家族の家」は、従来のリビングと同等に扱われるコモンスペースと、そこから隣り合う4室の個室を設けた住戸です。家族とのつながりを持ちつつ、個室では自立した個人の時間を過ごしながら社会とつながる…そんな「家族のつながり」と「個人のネットワーク」を両立できる住まいを作りました。
住戸内には、立体街路と直接つながる個室が4室並んでいます。自立した個人は、外との関係ならびに、家族との関係をそれぞれ自分で調節することが可能です。
跳ね上げ式のオーバードアを開ければ、個室はリビングに対しオープンになる設計となっています。
誰かの個室から入る、家族のコモンスペースとしてのリビング、ダイニング、そしてキッチン。それぞれが気配を感じつつ異なることをするのにも充分な広さがあるため、それぞれが自立した時間を確保することができます。
キッチンは家族全員が調理に参加できるアイランド型で、家族との交流の時間を過ごす場所としても活用できます。
大阪ガスから私たちに与えられた「自立家族の家」というテーマに対して、4人家族のためにそれぞれ玄関兼個室とスペースAと呼ぶコモンスペースからなるプランを提案した。個室を通してしか外とつながっていないスペースAと、最小限の広さの個室からなり、南北両面の壁一面の建具を跳ね上げることによってスペースAと一体になったり、南側の外部の床とつながったりする。平面つまり床によって新しい家族の生活を提案した。住まい手参加型の設計ではほぼ間違いなく実現できなかったと思う。空間のあり方と人間関係のインタラクティブな関係が興味深く、住戸=家族という枠組みを維持した場合、個室が並んだ倉庫のような無味乾燥な空間でありながら、ワンルームの集合ではない、あくまで新しい家族の空間を目指したのが「自立家族の家」だったと思う。新しい家族コミュニティの変化をラディカルに空間で表現しようとした作品と言える。
改修年 | 1993年〜2019年8月 |
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広さ | 142.68㎡ |