(設計パートナー・コンペティション最優秀賞)
1つの空間をシェアする1.5世帯の新しいマンション暮らし
集合住宅の基本モデルは、核家族を対象にして作られてきました。しかし、今後もそれを続けていくのでしょうか。
ひと昔前まで、住居には3世代家族が住まうのが主流でした。それから何年もの時を経て、いまは核家族が多い時代。これからさらに先の時代になれば、住まい方はもっと多様化していくことも充分に考えられます。
今後、私たちは誰と一緒に、どのように住むのか。「誰か」は、家族だけでなく、家族でない人かもしれません。
501住戸では、誰かと何か(空間、時間、行為…)をシェアしながら生活をともにする、そんな次の時代の住まいの形や可能性を求めました。
ワーキングシングルの増加を背景に、60代を中心とした世帯構成には「1.5世帯(夫婦+単身の子)」が増加しています。
戸建住宅においては、幅広い世帯構成に合わせた住まいが作られ始めていますが、ほとんどの集合住宅は、「1世帯」向けに作られており、住まい手を限定してしまいます。
そこで「501住戸 プラスワンの家」では、50〜60代の夫婦を住まいの中心軸として、今後さらに増えることが予想される1.5世帯に向けた新しい集合住宅のカタチを提案。
時の流れに沿って、ともに暮らす「誰か(=プラスワン)」が変化しても、お互いの生活を尊重しながら住み続けられる住まいを作りました。『家族の在り方』が変わろうとも、家は変わらない。それが501住戸のコンセプトです。
玄関から一歩足を踏み入れると、立体街路からつながる土間空間。メイン住戸とプラスワンルームをつなぐ共有部です。各部屋の入口は奥に設けることで、土間を通るお互いの気配を感じられ、安心感が生まれます。
さらに、入口前ではシンボルツリーを育てることで、両エリアのつながりを創出しました。
メイン住戸のリビングにある大きな窓からは、緑と光を取り込みます。床面を下げたことで緑に近づき、落ち着ける空間を作り上げました。
主寝室とキッチンの間は収納を壁として区切っているため、プライベートは確保される設計となっており、安心です。
プラスワンルームは、住戸内のもうひとつの住戸として存在しています。中心軸となる夫婦の息子や娘以外にも、祖母や、ひいては他人まで、さまざまな人の利用が可能です。
メイン住戸とプラスワンルームをそれぞれ個々に利用できるのはもちろんのこと、両方の部屋の格子戸を開ければ大きな空間として利用することも。勝手口を設けているため、回遊性や利便性にも優れています。
土間空間を共有部として、メイン住戸とプラスワンルームを緩やかにつなぐ…ここではお互いの気配を感じながらも、適度な距離感を保ちながら生活できる住まい方を実現します。
両親と娘、夫婦と年配の親、夫婦と姪、住居と職場としての使い分けなど、さまざまな『家族の在り方』を受け入れます。
立体街路からつながる土間空間。玄関からまっすぐ進んだ奥に各部屋の入口があるため、誰かが土間を通るたびにお互いの気配を感じることができます。
気候のよい時期には各部屋の格子戸を開けることで、土間を中間領域として活用することも可能です。
格子戸を開けると、ふたつの部屋はつながり、大きな一体空間となります。格子戸と土間の使い方を工夫しながら、さまざまな利用シーンを楽しむことができます。
メイン住戸のリビングは南面の窓を大きく確保したことで、光と緑を取り込みます。床面を下げたことで落ち着いた空間に。
家族の憩いの場として、ゆったりとした時間を過ごすことが可能となっています。
新型コロナウイルス感染対策に配慮し、取材・撮影を行っています。
「2020年の住まい」という少し先の未来を、今まさに私たちは迎えています。
当時私たちは、今後は単身あるいは2人住まいが増え、家族が分散する方向にあると想定しました。実際、昨今大阪市内でマンションを購入検討されているお客様の傾向と当てはまっています。
ただ、単に家族が分散するのではなく、少し距離をおきながらも繋がりを持てるようにという想いでプラスワンの家を考えました。
501住戸で提案したような「1.5世帯向けマンション」はまだ実現できていませんが、この取り組みをきっかけに、当社では「変化する家族の在り方に合わせて住み続けられる」をコンセプトにした商品「マドルノ」や土間を有効活用した住戸プラン等が誕生し、新しい住まいのあり方を示したマンションを提供してきました。
この設計コンペへの参画は、当社にとって新たな暮らしの提案と実現の可能性を広げる、有意義なものだったと実感しています。
改修年 | 2014年7月(全面改修) |
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広さ | 88.26㎡ |