都市・自然・ひとのこれからの住まい
私たちが生きる世の中は、時代の流れとともにさまざまな移り変わりを辿ってきました。変化を遂げた世帯構成に、少子高齢化問題。社会が変わり、都市が発展しています。1世帯向きの建築が基本モデルとして確立した現代で、人々は他者との関わり方を模索しています。
「305住戸 余白に住む家」では、コミュニティ形成やシェアリングの拠点として活用される住まいのカタチを提案。住まいの中に、内と外をゆるやかにつなぐ「余白」を残すことで、他者との共棲空間を作り出しました。
人と人とのつながり以外にも、余白を通じて外部空間が住戸内に引き込まれ、室内には光が差し、風が入り、緑が溢れる…そんな自然との共棲も実現しました。
自然の変化を感じながら、住まい手が本当の豊かさと心地よさを手にし、「素のままで美しく暮らす」姿が、見えてくることでしょう。
目指したのは、余白の回遊性。入れ子のように室が点在し、外土間と内土間が室内を曖昧につなぎます。さらに内と外の緑をつなぎ、自然との一体感を感じられる空間にしました。
ウチとソト、ズレと間合い、ネガとポジ。境界を曖昧にするからこそ生まれる豊かさや居心地のよさを体感できる空間になりました。
境界としては曖昧でありながらも、意識的な結界がしつらえる室内。人とつながり、自然とつながり、それでもなお、ここは住まいとしてのカタチをしっかりと保っているのです。
さまざまなカタチを持つ「室」が入れ子状にズレながら点在し、「余白」として残された多様な「土間」空間として、おおらかな一室空間を形成しています。
「余白」は空間を重ね着するように「ウチとソト」を曖昧にし、心地よい間合いをもたらすことを可能にしました。
「ウチとソト」「室と土間」には、さまざまな床レベルと素材をあてがわれ、曖昧に連続しながら意識的な結界が結ばれます。
入れ子状の壁、垂壁や天井の構成により空間のスケールが視覚化され、柱や窓に透かされた懐の深い空間が生み出されています。
「室」と「土間」はネガとポジの関係を持ち、光と影に移ろう素材や色彩、テクスチュアが不均質な揺らぎのある空間を満たします。その合間を抜けながら、四季折々の心地よい居場所が見い出され、豊かな回遊性がもたらされます。
「素の暮らし」、それは住まい手が場を再解釈し、再構築できるような余地や余白をもち、時を経て、形を変えようとも、飾らぬ人やモノがありのままに還る場所なのだろうと考える。NEXT21は都市型集合住宅でありながら、豊かな自然・色彩・骨格・本物の素材・技術が織りなされ、27年の歳月を経たその立ち居姿は、まるで生き物のように躍動感があり、いつからそこにあったのかという想像をも越えた存在を放っている。かつて描かれた近未来予想図を、時代とともに再構築しながら、今もなお描き続け実践する唯一の実験住宅であるが、ここに暮らす人々、緑や生き物の「素の暮らし」は、根源的で普遍的であることもまたこの実験住宅の最たる価値である。305住戸のインフィルは、街路・躯体・緑化といった集住環境のしなやかさと、そこにある余地や余白を場の力として再現し、根源的で本質的な「素の暮らし」を、その時そこにある技術、素材、環境設備により実現したものである。
改修年 | 2013年(全面改修) |
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広さ | 87.26㎡ |