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公益財団法人大阪ガスグループ福祉財団

助成事業調査・研究助成の過去助成状況


※記載年度は報告を行った年度です

2017年度「研究助成報告書」

Ⅰ.一般部門

A.福祉の向上関係
(1)2015年度1年助成
高齢者虐待予防に効果的な「高齢者生活援助モデルの開発」
−高齢者に魅力のある生活の場を作るための施設環境への取り組みに着目して−
研究代表者同志社大学大学院社会学研究科 博士後期課程 任 貞美
■要旨
本研究の目的は、高齢者の尊厳ある生活を支援し、施設内虐待予防に効果的な援助要素を抽出することである。そのため、高齢者福祉施設に勤務する介護職員を対象に質問紙調査を行い、虐待認識と介護実態の関連を検討した。調査の対象者は、近畿2府4県の高齢者福祉施設に勤務している介護職員1000人である。その結果、「利用者が好きな時にシャワーや入浴をすること」「利用者が本屋や銀行、スーパーマーケット等の地域の社会資源を使うこと」のような高齢者の自己決定と交流に関する介護業務は、重要と認識されていながらも実行されていないことが明らかになった。介護の質を高めるためには、高齢者の自己決定や交流を支える業務の実行に働きかける必要があると考えられる。


B.健康の維持・増進関係
(1)2015年度1年助成
高齢者における睡眠時無呼吸症候群が
バランス機能に及ぼす影響の検討
研究代表者姫路獨協大学医療保健学部理学療法学科 専任講師 金﨑 雅史

共同研究者姫路聖マリア病院耳鼻咽喉科 小川 晃弘

■要旨
バランスと睡眠の障害は高齢者における共通の健康問題である。本調査では高齢者における睡眠時無呼吸とバランス障害との関連を検討することを目的とした。
対象者は年齢を補正したコントロール群14名と、睡眠時無呼吸症候群を呈する高齢者36名であった。全ての被験者はフルポリソムノグラフィーによる睡眠評価を行った。睡眠時無呼吸症候群の選択基準は終夜フルポリソムノグラフィーにて無呼吸低呼吸指数が20events/hour以上とした。
睡眠時無呼吸症候群を呈する高齢者において、開眼条件での内外側方向成分中の最大振幅は年齢を補正したコントロール群と比べて統計学的に有意に高値を示した。開眼条件での内外側方向成分の最大振幅は低呼吸指数、無呼吸低呼吸指数、無呼吸指数及び覚醒指数とそれぞれ統計学的有意に相関関係を認めた。加えて、開眼条件での内外側方向成分中の軌跡長は統計学的に有意に低呼吸指数及び無呼吸指数と、それぞれ相関関係を認めた。ステップワイズ回帰直線解析は睡眠時無呼吸症候群を呈する高齢者において、無呼吸指数が開眼条件での内外側方向成分の独立した決定因子であることが示された。高齢者における中等度以上の睡眠障害はML方向の重心動揺の増大との関連が認められた。
今後症例数を増やし、重症度別に加齢の平衡機能への影響及び転倒率を検討する予定である。



退院後の身体活動量増加支援が身体機能低下患者に及ぼす影響
研究代表者兵庫医療大学リハビリテーション学部 講師 森沢 知之

共同研究者
兵庫医科大学ささやま医療センター リハビリテーション室 理学療法士 荻野 智之
兵庫医科大学ささやま医療センター リハビリテーション室 理学療法士 和田 智弘
兵庫医科大学ささやま医療センター リハビリテーション室 医師 和田 陽介
兵庫医科大学ささやま医療センター リハビリテーション室 医師 内山 侑紀
兵庫医科大学リハビリテーション医学教室 主任教授 道免 和久

■要旨
[目的]
入院中にリハビリテーションを受けた身体機能低下患者に対する退院後の身体活動量増加支援が、身体機能・体組成・ADL能力・精神心理機能に及ぼす影響を明らかにする。

[対象および方法]
退院時に身体機能低下が認められた高齢患者12例。退院後に1日の目標歩数を設定し、目標歩数を目安に身体活動量を維持・向上するように指導、支援した。退院から1ヶ月、3ヶ月の時点で身体機能、体組成、ADL能力、精神心理機能を測定した。

[結果]
介入後3ヶ月の時点においてShort Physical Performance Battery、筋力、歩行能力、骨格筋量、筋肉率、Functional Independence Measure、セルフエフィカシーは有意に改善した(p<0.05, p<0.01)。

[結語]
退院後の身体活動量増加支援は短期間であっても、身体機能、筋力、歩行能力、ADL能力、精神心理機能を改善する可能性がある。


人工股関節全置換術後患者における術後早期身体活動
〜実態および身体・心理機能、社会環境要因との関連調査〜
研究代表者
滋賀医科大学医学部附属病院リハビリテーション部 理学療法士 久郷 真人

共同研究者
滋賀医科大学医学部附属病院リハビリテーション部 理学療法士 有吉 直弘
滋賀医科大学整形外科学講座 助教 医師 三村 朋大

■要旨
背景:
本研究の目的は人工股関節全置換術(THA)後患者における術後早期の身体活動と日常生活活動の実態およびその関連因子を検討することである。

方法:
対象はTHAを施行された48名48股を対象とし、身体機能(股関節可動域、股関節外転筋力、Timed Up & Go test)、心理状態(modified Gait Efficacy Scale; mGES, JHEQ精神スコア)、社会環境(就労状況、家族構成)、身体活動(歩数、Life Space Assessment; LSA, JHEQ動作項目)を術後2カ月時点で調査した。LSAおよびJHEQ動作項目におけるしゃがみ動作の可否に関連する因子を抽出するため重回帰分析を行った。

結果:
全体の1日平均歩数は4842.0 ± 2181.7歩であった。また、平均LSAは75.9 ± 23.7点であり、町外への外出を行っている者は17名(35%)であった。重回帰分析の結果、LSAには歩数、性別、m GESが、しゃがみ動作の可否には股関節屈曲可動域、JHEQ精神スコアが抽出された。

結論:
THA後早期の身体活動は制限され、行動範囲も狭小化していた。本研究はTHA後の生活空間およびしゃがみ動作の向上に有益な情報を提供するかもしれない。


サルコペニア肥満およびサルコペニアと低栄養との併存が
高齢者の運動機能・歩行能力に及ぼす影響に関する大規模研究
研究代表者 京都大学大学院医学研究科 人間健康科学系専攻 池添 冬芽

共同研究者
京都大学大学院医学研究科 人間健康科学系専攻 市橋 則明
京都大学大学院医学研究科 人間健康科学系専攻 坪山 直生

■要旨
本研究は地域在住高齢者のサルコペニア、肥満、低栄養と運動機能、歩行能力との関連性について明らかにすることを目的とした。
対象は地域在住高齢女性1281名(年齢68.2歳)とした。多周波数インピーダンス計を用いて測定した筋量からSMI(skeletal muscle mass index)を算出し、5.7 kg/m2以下を低筋量と判定した。運動機能として、股屈曲・外転、膝伸展筋力を測定した。歩行能力として、通常・最大歩行速度、Timed Up & Goを測定した。対象者を低筋量のみみられる群(サルコペニア群)、低筋量に加えて低栄養がみられる群(サルコペニア低栄養群)、低筋量に加えて肥満がみられる群(サルコペニア肥満群)の3群に分類し、各群の運動機能および歩行能力を比較した。
各群の筋力を比較した結果、サルコペニア低栄養群・サルコペニア肥満群ともに、いずれの筋力もサルコペニア群との間に有意差はみられなかった。また、サルコペニア群・サルコペニア低栄養群の2群間で歩行能力の違いは認められなかったが、サルコペニア肥満群ではサルコペニア群と比較していずれの歩行能力においても有意に低かった。
本研究の結果、サルコペニアと低栄養の併存が歩行能力に及ぼす影響は少ないが、サルコペニアと肥満の併存はサルコペニア単独でみられる場合よりも、歩行能力のさらなる低下を招くことが示唆された。



高齢肺がん患者の術前後における呼吸代謝能評価スケールの開発
研究代表者
大和大学 保健医療学部 大阪府立大学大学院 総合リハビリテーション学研究科 阿波 邦彦

共同研究者
京都橘大学 健康科学部 堀江 淳
三菱京都病院 リハビリテーション部 平山 善康
三菱京都病院 胸部外科 山下 直己
城西国際大学 福祉総合学部 大杉 紘徳
枚方公済病院 リハビリテーション科 伊藤 健一

■要旨
高齢肺がん患者のVATS前後において、呼吸機能と健康関連QOLは有意に低下した。呼吸代謝能はpeak VO2とpeak Loadが有意に減少したが効果量は小さく、筋力や歩行能力は有意差を認めなかった。また、術後健康関連QOLにおいて、身体機能に関するSF-36のPCSは術前のpeak VO2、peak VCO2、peak心拍数、peak Loadと有意な相関を認めたが、呼吸機能、筋力、歩行能力とは有意な相関は認められなかった。術後PCSの大小に関する呼吸代謝能をROC曲線で解析した。その結果、各指標のAUCは中等度以上の正確性を持ったカットオフが検出された。これらの知見から、中等度以上の正確性を持ったカットオフは、術後の健康関連QOLを予測できる可能性が示され、周術期における患者教育のツールとして活用が期待できる。
【キーワード】VATS、運動耐容能、健康関連QOL


高齢悪性胸膜中皮腫患者における外科手術前後の身体運動機能と
健康関連QOLの変化の関係についての検討
研究代表者兵庫医科大学病院リハビリテーション部 田中 隆史

共同研究者
兵庫医科大学リハビリテーション医学教室 道免 和久
兵庫医科大学呼吸器外科 長谷川 誠紀
新潟医療福祉大学医療技術学部 森下 慎一郎
兵庫医科大学呼吸器外科 橋本 昌樹
兵庫医科大学病院リハビリテーション部 井谷 裕介

■要旨
【はじめに】
悪性胸膜中皮腫(以下、MPM)は、アスベスト暴露に関する極めて予後不良な悪性腫瘍である。しかし、MPMに対して手術を施行した高齢患者の、術後急性期の身体運動機能及び健康関連QOL(生活の質)について調査したものは少ない。今回、MPMに対して胸膜切除/肺剥皮術(以下、P/D)を施行した高齢患者の、身体運動機能及び健康関連QOLを調査することを目的とした。

【方法】
対象は当院呼吸器外科に入院し、MPMに対してP/Dを施行した65歳以上の患者10名。運動機能は、握力、膝伸展筋力、6分間歩行距離(以下、6MWD)を測定し、呼吸機能は努力性肺活量(以下、FVC)と1秒量(以下、FEV1)を測定した。健康関連QOLはSF-36を用いてそれぞれ術前後に評価した。

【結果】
術後急性期では、身体運動機能は6MWD、FVC、FEV1が大きく低下した。また健康関連QOLでは、全体的健康感を除くすべての項目で低下した。

【結論】
医療者は今回の結果に留意し、手術を施行した高齢MPM患者特有のリハビリプログラムを構築することが重要と思われた。


地域在住高齢者における身体活動と運動器慢性痛の関係
〜座業活動、活動強度別身体活動、歩行活動の検討〜
研究代表者神戸大学大学院保健学研究科 博士後期課程 村田 峻輔

共同研究者
神戸大学大学院保健学研究科 小野 玲
国際医療福祉大学 成田保健医療学部 理学療法学科 澤 龍一
訪問看護ステーション さくら 中村 凌
神戸大学大学院保健学研究科 斎藤 貴
国立長寿医療研究センターもの忘れセンター 杉本 大貴

■要旨
身体活動は運動器慢性痛を抑制することが報告されているが、歩行活動、強度別身体活動、座業活動に分類し、関係性を検討した研究はない。本研究の目的は、地域在住高齢者において客観的に測定した身体活動と運動器慢性痛の関係を検討することである。本研究は横断的研究で、269名(平均年齢: 75.3、女性: 67.3%)が解析対象者となった。運動器慢性痛の有無を質問紙にて聴取し、一軸加速度計を用いて身体活動を測定した。統計解析はロジスティック回帰分析を用い、各身体活動と運動器慢性痛の関係性を検討した。本研究の結果は、歩行活動や中高強度運動が多いものほど運動器慢性痛を有する割合が低く、座業活動が多いものほど運動器慢性痛を有する割合が高いことが明らかとなった。歩行活動や中高強度運動を増やす介入や、座業活動を減らす介入を行うことで、運動器慢性痛を減らせる可能性が示唆された。


C.分野横断的課題関係
(1)2015年度1年助成
認知症に伴う視空間失認の徴候把握を可能にする
身体運動テストの開発
研究代表者滋賀大学教育学部 教授 渡部 雅之

共同研究者滋賀大学教育学部 准教授 松田 繁樹

■要旨
認知症に伴う空間失認は空間的視点取得能力と強く関連し、さらに実際の運動を司る感覚運動機構とも結びついている。それ故、空間的視点取得課題と運動能力テストの成績に対応が予想される。本研究の目的は、運動能力検査で認知機能を予測できることを示し、軽度認知障害をスクリーニングする運動機能基準を定めることであった。68名の健康な高齢者が2条件下でビデオゲーム形式の空間的視点取得課題を行った。また、片足や閉眼など各種の起立状態で重心動揺を自動計測した。さらに足蹠や土踏まずの形も測定した。空間的視点取得課題の反応時間を基準変数とし、重心動揺の各種指標と身体的特徴を説明変数として重回帰分析ならびに判別分析を行った。その結果、重心動揺の2種類の指標の組み合わせで認知機能の低下を有意に予測できることがわかった。重心動揺の成績と身体的特徴を組み合わせて認知症の簡易検査を開発できれば、認知機能低下を早期に発見して介入し、患者の待遇や生活の質の改善に繋がるだろう。


居宅介護支援事業者の介護支援専門員によるアセスメントにおける
情報把握の実践とその関連要因に関する研究
研究代表者梅花女子大学看護保健学部口腔保健学科 准教授  綾部 貴子

共同研究者大阪市立大学大学院生活科学研究科 教授 岡田 進一

■要旨
本研究では,介護支援専門員によるアセスメントにおける情報把握の実践(以下、「情報把握」)に関連する要因を明らかにすることである。調査対象者は、近畿2府4県の500か所の居宅介護支援事業所の介護支援専門員である。有効回収率は37.4%(187名)であり、調査方法は自記式質問紙による郵送調査を実施した。分析方法は、「情報把握」の各因子を従属変数とし、コントロール変数を含む介護支援専門員個人の特性、インフォーマル資源やフォーマル資源との関係、地域包括支援センターによる後方支援を独立変数とした強制投入法による重回帰分析を行った。結果、「情報把握」の関連要因については、利用者や家族、居宅サービス事業者、地域のインフォーマル団体との築かれた関係であった。


生活行為を導き、動かす認知機能の役割の解明:
遂行機能の何が、どのように生活行為を実現させるのか
研究代表者京都橘大学健康科学部理学療法学科 専任講師 小田桐 匡

共同研究者
京都大学大学院医学研究科 講師 武地 一
京都大学大学院医学研究科 助教 麻生 俊彦
京都大学大学院医学研究科 助教 並木 千尋
京都大学大学院医学研究科 助教 上田 敬太

■要旨
手段的日常生活動作の実行における遂行機能の役割を明らかにするために、軽度認知障害者ならびにアルツハイマー病患者の簡易な手段的日常生活動作課題時の眼球運動特性について、アイトラッキングシステムを用いて分析すると同時に、本動作の行動分析と道具使用や日常活動に関わる神経心理検査を実施した。本研究ではまず視線移動距離を遂行機能による能動的な外界探索の指標として用いた。加えて、短時間注視と呼ばれる注視行動を運動計画の指標として分析した。短時間注視の時間は、ある新規なサッカード準備に要する時間(約200ミリ秒)よりもさらに短く(約100ミリ秒)、対称空間内での同時並列的なサッカード準備の指標として考えられている。患者群は記憶や全般的認知機能などの検査成績に有意な低下を示すものの、手段的日常生活動作においては有意な低下を示さなかった。しかしながら、視線移動距離と短時間注視の割合は健常群と比べ有意に大きかった。さらに、短時間注視率は遂行機能成績と正の相関を示し、記憶成績とは負の相関を示した。動作中の眼球運動指標の有意な増加は認知機能障害の初期段階に観察される遂行機能のある促進した状態を反映しているのかもしれない。手段的日常生活動作を達成するために、患者群の遂行機能は、課題の実行に影響する認知機能の低下を代償すべく促進されたのかもしれない。その結果、患者群では、健常群以上に、作業空間内で連続した道具使用のための視空間的注意をより多く発揮したのかもしれない。アイトラッキングシステムを用いた量的分析は、認知機能低下を有する対象者の動作遂行能力のわずかな変化と遂行機能の特別な役割を明らかに出来る。
キーワード:手段的日常生活動作、眼球運動、アイトラッキング、軽度認知障害、アルツハイマー病


(1)2014年度2年助成
認知症の人と家族への初期集中支援としての並行的介入:
BPSDの心理社会学的なメカニズム解明とその解決を目指す介入の試み
研究代表者同志社大学社会学部 教授 山田 裕子

共同研究者
藤田保健衛生大学医学部 教授 武地 一
同志社女子大学看護学部 准教授 杉原 百合子

■要旨
この研究は、認知症初期にBPSDの生成がなされるのではないかという、これまでの我々の研究結果からの仮説を元に、初期認知症と若年性認知症のための認知症カフェ「Oカフェ」に参加する認知症の人とその家族に対する並行的介入の方法とその効果を明らかにすることを目的とする。BPSDは、すでにでき上がってから明るみに出る事が多く、その生成機序は明らかではない。またそもそも、BPSDは認知症の周辺症状として、認知機能の低下に基づく、本来的なものと受け取られていた事もあるが、今では、身体的影響と社会的環境の影響も大きいと認識されているが、何がBPSDの生成に寄与する社会的環境になるのかは必ずしもあきらかではなかった。この調査では、Oカフェに通う3組の初期のもの忘れの人とその家族が認知症の進行により遭遇する数々の困難について、カフェスタッフが本人とその家族から聞き取った記録をもとに、明らかにし、それらの困難を解決できるのではないかと、試行錯誤しながら、認知症の人とその家族に並行的に行った支援や介入を詳述し、その効果を考察した。


D.福祉現場の創意工夫関係
(1)2015年度1年助成
要介護者の転倒発生におけるバランス機能と
活動の不均衡の影響:症例対照研究
研究代表者西大和リハビリテーション病院リハビリテーション部理学療法士 小嶌康介
■要旨
本研究の目的は要介護者においてバランス機能と活動の不均衡が転倒発生に与える影響を症例対照研究にて検証することである。対象は通所リハを通年利用する要介護者で自宅内移動手段が歩行であるものとした。一年間の転倒調査の後に、対象者を転倒群及び非転倒群に分類した。評価として研究参加時のTimed up and go test (TUG)とFIMを測定し、各群内におけるTUG値の順位からFIM得点の順位の差を求めFunction-Activity gap (F-A gap)として用いた。F検定にて両群のF-A gapの分散を比較した。また両群の生活予後の調査として一年後のTUG、FIM、Frenchay Activities Index (FAI)、要介護度を調査した。転倒群は38名、非転倒群は20名であった。両群の属性比較において転倒群は非転倒群に比べ有意に高齢であった。転倒群ではF-A gapが有意に大きいことが示され、一年後のFIM、FAI、要介護度が全て有意に増悪した。要介護の転倒者では非転倒者と比べてバランス機能と活動が乖離しており、生活予後不良の要因である可能性が示された。


地域包括ケアを進めるための地域ケア会議の
効果的な運営に関する研究
研究代表者聖泉大学看護学部地域看護学領域 教授 原田 小夜

共同研究者
聖泉大学看護学部地域看護学領域 講師 種本 香
聖泉大学看護学部地域看護学領域 講師 安孫子 尚子
野洲市地域包括支援センター 所長 清水 めぐみ
滋賀県草津保健所 副主幹 松浦 さゆり

■要旨
地域ケア会議の効果的な運営方法を検討するために、地域包括支援センター(以下、地域包括)にグループインタビューを行った。委託型地域包括の主任介護支援専門員(以下、主任CM)3グループ、5保険者1グループである。【地域ケア会議の位置づけ・目標設定に対する迷い】【地域ケア会議運営・ファシリテートの力量不足によって生じる不安】【居宅CMや住民を巻き込んだ地域づくりの難しさ】【地域ケア会議の効果】の4コアカテゴリが抽出された。地域ケア会議の効果的な運営には、①試行錯誤しながら会議の企画運営を進める過程が重要であり、組織的内協議と必要に応じた外部支援者の参画、②地域包括のファシリテーターに関する学習とチームでの会議運営、③地域ケア個別会議における成功事例の積み上げ、④地域包括は目標をもって地域づくり活動への参画、⑤課題を掘り下げ予防的な視点での事例検討の実施⑥地域包括のデータ管理に関する学習の必要性が示唆された。


(1)2014年度2年助成

孤立防止のための互助・自助強化プログラム開発研究
研究代表者京都大学こころの未来研究センター上廣倫理財団寄付学研究部門 助教 清家 理

共同研究者
京都大学こころの未来研究センター センター長、教授 吉川 左紀子
国立長寿医療研究センター 副院長 荒井 秀典
京都大学大学院医学研究科人間健康科学専攻 准教授 青山 朋樹
京都大学医学部付属病院病態管理栄養部 副部長 幣 憲一郎
秀司法書士事務所 所長 小山 秀司

■要旨
本研究では、超高齢社会で深刻な問題となっている地域住民の孤立や孤立に伴う心身・社会活動面の不健康や障害予防を目的に、「からだ」「こころ」「社会活動」三側面からの健康づくりで互助・自助強化を図る、双方向型学習プログラム開発を実施した。
本プログラムは、3ステップ方式(初級・中級・上級コース)の学習プログラムを提供しており、2014年−2016年は初級コース(4回)、2016年−2017年は中級コース(1回)を開講した。各コースの設定は、1クール(3か月間)で、講義は6回開講(運動・老年医学・栄養・心理・福祉・法律)の設定であった。1クールあたりの参加者は、約25名である。現在までに、初級コース4クールが終了し、修了生は97名となった。そして、初級コース修了者のうち、中級コース(1コースあたり3か月間開催)を修了した者が20名となった。初級コース修了生の40%以上が地元のボランティア活動に参加し始めた。修了生が計画と管理を担当する活動は、健康的な生活の延長につながる重要な活動であり、彼らは地域の相互支援の要になっていると言える。
※記載年度は報告を行った年度です

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