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助成事業調査・研究助成の過去助成状況


※記載年度は報告を行った年度です

2013年度「研究助成報告書」

Ⅰ.一般部門

A.福祉の向上関係
(1)2011年度1年助成
介護家族対象の知識啓発型“つどい場”が
認知症高齢者の生活機能に与える影響
研究代表者関西福祉科学大学 保健医療学部 重森 健太
■要旨
本研究の目的は、認知症者を介護する家族を対象に知識啓発型のつどい場を11回シリーズで開催し、介護家族の介護負担感など一般的な評価に加え、実際に介護を受けている認知症高齢者の生活機能の変化を調査することである。対象は、A市(人口80,374人)の29,501世帯につどい場参加募集のチラシを回覧し、応募のあった中・高齢者51名中、実際に認知症者の介護に携わっている27名(平均年齢57±9歳;34歳〜81歳、男性3名、女性24名)である。平成24年5月から平成25年3月まで、月1回(全11回)知識啓発型“つどい場”を開催した。“つどい場”の時間は第1回目から第11回目までの全スケジュールで2時間程度実施した。アンケート調査および評価は、第1回目、第4回目、第7回目、第10回目に行なった。その結果、知識啓発型“つどい場”により、介護家族の認知症に関する知識は向上し、介護負担感も軽減することが確認できた。しかしながら、認知症者の生活機能に有意な変化は認められなかった。従って、介護家族対象の知識啓発型“つどい場”は、介護家族に還元するものであり、認知症者の生活機能には直接的な影響を与えないと結論した。


鉄道シニアパスが郊外住宅地の高齢者の暮らしに与える影響分析

研究代表者 大阪大学大学院工学研究科 松村 暢彦

共同研究者
大阪大学大学院 工学研究科 猪井 博登
兵庫県立福祉のまちづくり研究所 天野 圭子

■要旨
研究は「鉄道シニアパス」が郊外に居住する高齢者の交通行動に及ぼす影響を明らかにすることを目的としている。購入者の余暇活動頻度や内容、市街地利用形態の変化について特に考察する。また一部の被験者に沿線の店舗や施設・イベント情報をメーリングリストを用いて配信し、効果を検証した。ケーススタディ地域とした兵庫県川西市は、能勢電鉄と阪急バス沿線にオールドニュータウン群を有し、ターミナルの川西能勢口駅周辺は商業施設が並ぶ。アンケートの分析結果から、シニアパスは余暇活動と鉄道利用に、メーリングリストは鉄道利用に促進の効果が確認された。鉄道利用に伴って買い物や趣味、交流、余暇活動などの増加がわかった。また、川西能勢口駅周辺と、梅田や宝塚沿線の買い物やスポーツ、交際・交流等がシニアパスにより促進されていた。



高齢者通所サービスにおけるソーシャルサポート効果に関する研究
研究代表者関西福祉科学大学社会福祉学部 家高 将明

共同研究者
関西女子短期大学 医療秘書学科 三田村 知子
関西女子短期大学 医療秘書学科 清水 香織
関西福祉科学大学 保健医療学部 西井 正樹
関西福祉科学大学 保健医療学部 酒井 ひとみ

■要旨
通所サービスは、失われていた高齢者のソーシャルサポート効果の回復を図るうえで有用な社会資源であると期待されている。しかし通所サービスを対象としたこれまでの先行研究は、通所サービス内で行われているソーシャルサポートについて十分な検討をしてこなかった。そこで本研究は、通所サービス内で行われているソーシャルサポートに焦点を当て、通所サービス利用者180名を対象とする実態調査を行った。調査期間は、2012(平成24)年9月〜11月である。そして調査の結果、?通所サービス内で行われる情緒的サポート及び情報的サポートといったソーシャルサポートは利用者の年齢・健康感・介護度によって差異がないこと、?女性に比べて男性は利用者同士の交流が少ないこと、?情緒的・情報的なサポートを他者に提供することによって利用者の自尊心が高まり、うつの程度が軽減する可能性があることを明らかにすることができた。


「小地域ネットワーク活動の担い手である
地区福祉委員の課題に関する調査研究」
研究代表者 大阪人間科学大学 人間科学部医療福祉学科 中家 洋子

共同研究者
大阪人間科学大学 人間科学部医療福祉学科 武田 卓也
大阪人間科学大学 人間科学部医療福祉学科 時本 ゆかり
社会福祉法人 吹田市社会福祉協議会 広田 倫久

■要旨
少子高齢化が進展する中で家族の変容は著しく、住民同士の関係の希薄化も相俟って地域は脆弱化し、高齢者の孤立や孤独死、高齢者虐待などの多様な問題が顕在化してきている。このような地域が抱える多様な課題を解決するために地域の活力を活かした住民主体の助け合い活動として小地域ネットワーク活動が期待されている。
本研究の目的は、小地域ネットワーク活動の主たる担い手であるA地区福祉委員から「担い手不足」の相談を受けたことに端を発し、活動における課題について検討することである。調査方法は、A地区福祉委員の活動実態を把握するために平成23年9月にA地区福祉委員4名を対象に集団面接調査を実施した。その結果をもとにKJ法による再分析を行い、A地区福祉委員が活動における慢性的な課題として「実動隊不足」があることが明らかとなった。その実態の詳細を把握するためにA地区福祉委員64名(全数)を対象に質問紙調査を実施した。
その結果、A地区福祉委員が抱える慢性的な課題の背景には、役員の負担とその可視化がもたらす担い手としての不安、実動する地区福祉委員数および個々人の役割分担と活動回数の格差による時間的拘束への負担感が明らかとなった。しかし、このようなA地区福祉委員が抱えている課題がある一方で、活動は楽しく、健康になり、地域交流に繋がると実感しながら「より良い地域を、より良い活動を」という地域への愛着を持ち活動を行っている実態も明らかとなった。

B.健康の維持・増進関係
(1)2011年度1年助成
加齢による筋密度・筋硬度の変化が高齢者の運動機能および生活機能に及ぼす影響
研究代表者京都大学大学院医学研究科 人間健康科学系専攻 池添 冬芽

共同研究者京都大学大学院医学研究科 人間健康科学系専攻 市橋 則明

■要旨
研究は加齢に伴う筋特性(筋密度・筋硬度・筋厚)の変化について明らかにすること、および高齢者の筋特性と運動機能・生活機能との関連性について明らかにすることを目的とした。
対象は健常若年女性16名(20.3±0.49歳)および健常高齢女性34名(84.2±6.1歳)とした。大腿四頭筋を対象筋として、筋硬度計を用いて筋硬度(スティフネス)、超音波診断装置を用いて筋厚・皮下脂肪厚、筋輝度(筋密度)を測定した。筋スティフネスについては安静時と最大等尺性収縮時の2条件で測定した。高齢者の運動機能として等尺性最大膝伸展筋力、生活機能として立ち座り能力を測定した。
若年者と高齢者を比較すると、筋スティフネスは安静時では2群間で有意差がみられなかったが、収縮時および収縮時の変化率は高齢者で有意に低い値を示した。筋厚は若年者と比較して高齢者では有意に低値を示した。筋輝度は若年者と比較して高齢者では有意に高値を示した。高齢者の筋力は筋厚・筋輝度と有意な相関を認め、立ち座り能力は収縮時の筋スティフネス・筋輝度と有意な相関を認めた。
本研究の結果、加齢に伴い、筋厚、筋密度、収縮時の筋スティフネスの減少が生じ、これら筋特性の変化は高齢者の運動機能や生活機能に影響を及ぼすことが示唆された。


老人福祉施設におけるノロウイルスの感染経路解明に関する基礎的研究
-マウスノロウイルスを用いた環境中のウイルス挙動について-
研究代表者大阪府立公衆衛生研究所感染症部 研究員 山崎 謙治

共同研究者大阪府立公衆衛生研究所感染症部 研究員 中田 恵子

■要旨
新たに分離したマウスノロウイルス(MNV)のヒトノロウイルス(HuNV)代替としての有用性について、ネコカリシウイルス(FCV)と比較した評価を行った。その結果MNVの代替ウイルスとしての優位性が示されたことから、HuNVの接触感染経路解明を目的としてMNVを用いた感染実験を実施した。
12枚重ねのトイレットペーパーによる拭き取りでMNVは平均で9枚まで通過した。木製の床、受話器、パソコンマウスからは容易に感染することが確かめられたが、ドアノブからは感染し難かった。床からの拭き取りは乾燥紙タオル、濡れ紙タオル共に清掃効果はほとんど見られなかった。これらから、清掃によってHuNVの感染源を断ち切ることは容易ではなく、適切な消毒等の措置が不可欠であると考えられた。


高齢者における脳卒中・心疾患の住環境要因を探る
温熱・光住環境と血圧モーニングサージおよび夜間血圧変動に関する横断研究
研究代表者奈良県立医科大学 地域健康医学講座 助教 佐伯 圭吾

共同研究者奈良県立医科大学 地域健康医学講座 特任助教 大林 賢史

■要旨
<目的>
本観察研究の目的は起床後の温熱環境と血圧モーニングサージの関連、光環境、メラトニン分泌量、夜間血圧低下率の間の関連を調べることである。
<方法>
我々は奈良県在住の高齢者において、曝露温度、光曝露量、自由行動下血圧、夜間メラトニン代謝産物、アクチグラフィによる日中身体活動量を連続2日間測定した。血圧モーニングサージは起床後2時間の平均収縮期血圧−睡眠中最低血圧前後90分の平均収縮期血圧から算出した。夜間血圧低下率は(日中平均収縮期血圧−夜間平均収縮期血圧)/日中平均収縮期血圧×100から算出した。
<結果>
537人の平均年齢は72.8歳(標準偏差10.0歳)で、そのうち251人が男性であった。血圧モーニングサージを従属変数として、起床後2時間の曝露温度に加えて血圧測定の繰り返し順序、年齢、性別、BMI 、現在の喫煙習慣の有無、降圧薬の服用、飲酒、eGFR、アクチグラフを用いた身体活動量(起床後2時間の平均値)を説明変数とする多変量混合モデル線形回帰分析において、起床後2時間の曝露温度は血圧モーニングサージと有意な負の関連を認めた(回帰係数:-0.374, 95%信頼区間:-0.657 to -0.101, P < 0.01)。
次にメラトニン分泌量を従属変数として、日中平均光曝露量および夜間平均光曝露量に加えて、年齢、BMI、睡眠時間、 日中身体活動量を説明変数とする多変量重回帰分析において、日中平均光曝露量はメラトニン分泌量と有意な正の関連を認めた(回帰係数:0.065, 95%信頼区間:0.006 to 0.124, P = 0.03)。最後に、夜間血圧降下率を従属変数として、メラトニン分泌量に加えて、年齢、性別、BMI、降圧薬の内服、睡眠時間、 日中身体活動量を説明変数とする多変量重回帰分析において、メラトニン分泌量は夜間血圧降下率と有意な正の関連を認めた(回帰係数:1.140, 95%信頼区間:0.032 to 2.248, P = 0.04)。
<結論>
高齢者において、起床後曝露温度が低いほど血圧モーニングサージが高いこと、日中光曝露量が多いほどメラトニン分泌量が多いこと、またメラトニン分泌量が多いほど夜間血圧低下率が大きいことが明らかになった。


認知症高齢者の情動を活かした介入方法の開発に向けた脳画像(MRI)とBehavioral and Psychological Symptoms of Dementia(BPSD)、情動との関連性の調査
研究代表者京都府立医科大学医学部 看護学科 講師 占部 美恵

共同研究者京都府立医科大学大学院 医学研究科 講師 成本 迅

■要旨
認知症高齢者の情動を活かした介入方法の開発に向けて、本研究では、アルツハイマー病(AD)における脳画像(MRI)から、脳の萎縮部位とBPSDおよび生活の中で出現する情動の関連性を調査した。
MRIでは、情動障害が出現しているAD群と対照群の比較では、両側海馬および扁桃体領域、両側の側頭葉の萎縮がみられた。情動障害がない又は軽度なAD群と対照群の比較では、右側海馬および扁桃体領域の萎縮がみられた。Behave-ADでは、対象者全員に何らかのBPSD、特に「不穏」「悲哀」「抑うつ」「不安」などの心理症状が出現していた。これらの心理症状とクリクトン高齢者行動評価尺度との関連では、「移動」、「睡眠」、「対人接触」、「失禁」において有意だった。(p<0.05)
情動障害の出現には、扁桃体・海馬領域や周辺領域の萎縮の程度が関連している可能性が考えられ、ADLの低下から引き起こされるネガティブな情動体験が、BPSDの心理症状に関連する可能性が示唆された。


人工股関節置換術後高齢患者の心理特性と身体活動量の関連調査
―日常生活活動における転倒恐怖感に着目した分析―
研究代表者京都橘大学 健康科学部理学療法学科 助教 永井 宏達

共同研究者
増原クリニック 理学療法士 生友尚志
京都大学大学院 医学研究科人間健康科学系専攻 助教 山田 実
増原クリニック 院長 増原健作
京都大学大学院 医学研究科人間健康科学系専攻 教授 坪山 直 

■要旨
<背景>:
本研究の目的は人工股関節全置換術(THA)後症例における身体活動量に心理特性が及ぼす影響を明らかにすること、そして転倒恐怖感の実態を解明し、それに関連する因子を明らかにすることである。
<方法>:
THA術後女性を対象として、身体活動量と日常生活動作(ADL)における転倒恐怖感、不安特性、転倒歴、股関節機能スコア、歩行能力を調査した。その後、身体活動量、転倒恐怖感に関連する因子の分析を行った。
<結果>:
THA後症例の身体活動量は不安特性の影響を受けてはいなかった。転倒恐怖感は階段昇降、入浴動作、床の物を拾う動作、床からの立ち座り動作時などに有している症例が多く、それらには股関節機能、転倒経験、歩行能力、不安特性、年齢が関連していた。
<結論>:
不安特性はTHA術後症例の身体活動量には関係しているとは言えない。一方で、特定のADLにおいて転倒恐怖感を有しやすく、リハビリテーションにおいて考慮が必要である。


転倒予防のために活用できる足趾の踏ん張る力(足趾筋力)の効果的な発揮方法がわかるバイオフィードバックシステムの開発および足趾筋力を日常的に効果的に発揮する方法の一般市民への普及
研究代表者大阪河﨑リハビリテーション大学 リハビリテーション学部 助教 久利 彩子

共同研究者大阪電気通信大学 医療福祉工学部 吉田 正樹

■要旨
我々は、転倒予防のために活用できる足趾の踏ん張る力(足趾筋力)の効果的な発揮方法がわかるバイオフィードバックシステムを開発した。開発したシステムを用いて、転倒予防のために、足趾筋力を日常的に効果的に発揮する活用方法を促すことを目的に、一般住民対象に普及活動を計3回実施した。参加者は、計162名であった。活動時に参加者の足趾接地状態を調査した結果、動かす能力があっても立位時に床に接していない足趾(PFT:Pseudo Floating Toe)のある参加者は、70.3%であった。転倒予防のために立位時の足趾の活用方法を促す普及活動は有益であると考えられた。さらに、足趾筋力の情報は、個人の立位バランス能力の一つの有力な情報となり得ることから、日常的に使用する足趾の状態(足趾が屈曲せず、中間位のままの状態)で発揮される足趾筋力が計測可能な足趾筋力計の開発研究を実施した。開発した足趾筋力計で計測実験を対象者1名(47歳女性)で実施した。結果は、右足趾筋力は76.2N〜88.5N(平均83.1±4.3N)、左足趾筋力は50.6N〜69.8N(平均57.3±5.6N)であった。開発した足趾筋力計は、立位で日常的に使用している足趾の状態での計測を可能とする装置として応用できると考えられた。


ノルディックウォーキングは下半身の関節間力を低減させエネルギー消費量を増大させるか
研究代表者同志社大学 スポーツ健康科学部 教授 竹田 正樹

共同研究者
同志社大学 理工学部 教授 小泉 孝之
同志社大学 理工学部 教授 辻内 伸好
同志社大学 生命医科学研究科修士課程 藤倉 遼平
同志社大学 スポーツ健康科学部スポーツ健康科学科  4年 浅井 みゆき

■要旨
本研究は、近年健康運動して急速に普及が進んできたノルディックウォーキングについて着目し、下肢関節への負荷が軽減するかどうかを通常歩行と比較することにより、明らかにしようとしたものである。5名の健康な男子大学生を被験者とし、平面上に設置された床反力計の上をそれぞれのウォーキングで歩行させ、床反力計のデータと被験者にマーカーをつけて高速ビデオカメラで撮影したモーションデータを統合することにより、足、膝、股および腰関節の関節負荷を算出した。負荷の算出は逆動力学に従って計算した。本研究結果から、ノルディックウォーキングは通常歩行に対して第4・5腰椎のせん断方向の関節負荷軽減効果がみられ、第4腰椎では19.4[%]、第5腰椎では27.7[%]軽減することがわかった。また、ノルディックウォーキングは通常歩行に対して股関節と膝関節の圧縮・せん断方向の関節負荷軽減効果がみられ、股関節の圧縮方向で8.6[%]、せん断方向で10.0[%]、膝関節の圧縮方向で12.1[%]、せん断方向で28.0[%]軽減することがわかった。さらに、高齢者は若年者に比べてポールにより体重を負荷させて歩行することにより下肢関節負荷軽減効果があったと考えられる。


高齢慢性透析患者の身体活動量に及ぼす自己管理能、健康関連QOL、心理的要因の影響に関する研究
研究代表者武庫川女子大学 健康運動科学研究所 教授 松尾 善美

共同研究者
いぶきクリニック リハビリテーション科
武庫川女子大学大学院 健康・スポーツ科学研究科 望月 寿幸
いぶきクリニック 内科 田端 作好
いぶきクリニック 泌尿器科 福田 豊史
いぶきクリニック 泌尿器科 矢嶋 息吹

■要旨
高齢慢性透析患者の自己管理能、健康関連QOLおよび透析日と非透析日における身体活動量、心理状態、疲労、運動セルフ・エフィカシー(SE)の差異とそれに関連する諸要因を検討することを本研究の目的とした。
いぶきクリニックに週3回外来通院していた患者21名(71.9±5.8歳、男性16名・女性5名)に、自己管理能、SF−36を調査し、身体活動量測定、疲労検査(MFI)、STAI、SDS、運動SE検査を透析日、非透析日に分けて実施した。統計解析には1標本t検定、対応のあるt検定、Wilcoxonの符号付順位和検定、単相関分析を用いた。
自己管理能は時間当たりの歩数と有意に負の相関を示した。非透析日では歩数が透析日より有意に多く、意欲の低下が軽減していた。意欲の低下は、非透析日のMFI総得点・活動性の低下と有意に正の相関を示した。高齢慢性透析患者は自己管理能が高ければ、活動性が高まり、非透析日では活動性や意欲が向上し、心理的安定が活動性に、疲労が意欲に影響していた。


転倒のスクリーニングを目的とした加速度計による
身体動揺評価法の確立に関する研究
研究代表者姫路獨協大学 医療保健学部 准教授 山中 悠紀

共同研究者大阪府立大学 総合リハビリテーション学部 助教 野中 紘士

■要旨
本研究では健常男子大学生6名(年齢20.8±0.4歳)を対象として、静止立位保持および片脚着地課題における身体動揺を腰部正中後面に装着した小型9軸ワイヤレスモーションセンサーで評価し、3次元動作解析装置で測定した身体重心(COG)や床反力(GRF)と加速度波形の時間積分から推定したCOG変位(COGacc)や運動方程式から推定したGRF(GRFacc)との比較から加速度計で評価した身体動揺評価指標の特徴について分析した。その結果、静止立位では前後(AP)成分の実効値(RMS)、最大振幅(PTP)が有意に低値を示し、COG とCOGaccの振幅が異なる可能性が示されたが、非線形解析ではCOGaccはCOGと同様にカオス性を示した。着地動作ではAP成分の単位時間軌跡長(NPL)が有意に高値を示した。



高齢者における歩行時の視線の特徴
研究代表者神戸大学大学院保健学研究科 堤本 広大

共同研究者
神戸大学大学院保健学研究科 小野 玲
神戸大学大学院国立長寿医療研究センター自立支援システム開発室 島田 裕之
神戸大学大学院神戸大学大学院保健学研究科 澤 龍一

■要旨
高齢者の転倒要因の一つに視機能低下の問題が挙げられ、視力およびコントラスト感度の低下との関連が報告されているが、視線の動きと転倒との関連は明らかにされてはいない。本研究では、歩行中の視線の配分が、転倒リスクの一つである遂行機能との関連を携帯型視線同定装置を用いて検討すること、視線配分とステップ正確性の関連を検討することとした。対象者は平均年齢69.8歳の高齢者21名で、DSCTの点数下位4分の1の者をLE群、それ以外をHE群として群分けした。LE群では、歩行中に前方視覚課題と下方ステップ課題を同時に遂行する際、上方凝視割合が有意に低かった。上方凝視割合と下方ステップ課題エラー数には有意な負の相関関係が認められた。遂行機能の低い高齢者は、より足下への視線が集中することが明らかとなった。遂行機能の低い高齢者は、足下に視線を配分しているにも関わらず、ステップの正確性が低い傾向が認められ、視線を集中させるだけでは転倒予防には繋がらず、効率の良い情報取得能力が重要であることが示唆された。



地域高齢者の咬合力と介護予防因子との関連について
研究代表者武庫川女子大学 生活環境学部食物栄養学科 栄養科学研究所 前田 佳予子

共同研究者
武庫川女子大学 生活環境学部 食物栄養学科 高橋 志乃
武庫川女子大学大学院 生活環境学研究科 食物栄養学専攻 中村 早緒里
武庫川女子大学 生活環境学部食物栄養学科 栄養科学研究所 鞍田 三貴

■要旨
在宅高齢者の咀嚼能力と介護予防因子との関連性に着目し、介護予防の支援を目指して、咀嚼能力の指標である咬合力と咀嚼力ガムを用いての「咀嚼力フローチャート」の作成および高齢者の身体状況・口腔機能状況・栄養状態を本人はもとより、本人を取り巻く栄養状態に関わるすべてのスタッフが共有するための媒体として「おたっしゃ健康手帳」を作成した。在宅高齢者の食生活支援および地域での包括的な介護予防の一つのツールとして活用できるか否かを検討し、以下の結果を得た。
1) 咀嚼能力別(ABC分類)による身体状況の比較では、咀嚼能力が低い程、握力が低い傾向であった。
2) 健康手帳を持つことで、健康を意識するようになった者は57.8%(n=26)、健康手帳を利用した者は31.1%(n=14)、家族やかかりつけ医へ見せた者は15.6%(n=7)であった
3) 健康手帳をツールとした地域連携を行う上で、ボランティアの果たす役割は大きいことが分かった
以上のことから、今後、地域で包括的な介護予防を実施するためのツールとして、「咀嚼能力フローチャート」および「おたっしゃ健康手帳」を組み合わせた活用が可能であることが示唆された。


高齢患者の術後せん妄発症を早期に発見するための
「術後せん妄アセスメントスケール」の信頼性に関する予備的検討
研究代表者奈良県立医科大学医学部看護学科 助教 松浦 純平
■要旨
本研究の目的は、手術後の高齢者に高確率で発症する術後せん妄の発症前駆症状に関して、臨床経験豊富な看護師の経験知に基づく術後せん妄発症を早期に発見するための「術後せん妄アセスメントスケール」開発へつなげるための基盤とすることである。術後せん妄発症前駆症状について看護師300名へ質問紙調査を実施した。
その結果、看護師が術後せん妄前駆症状として考えている高い症状は「看護師へ遠慮して何も言わない」、「自分で寝返りを打たない」、「創部痛を訴える」、「尿意を訴える」、「便意を訴える」、「現在の時刻を間違う」、「適切な食事動作が取れない」、「ナースコールを有効に使用できない」であった。
術後せん妄前駆症状をそれぞれ類似する症状別に研究者が検討を重ね類似するカテゴリー別に分類した。その結果「行動」、「混乱」、「陰性症状」、「睡眠」、「妄想」、「排泄」の6個のカテゴリーに分類された。


(2)2010年度2年助成
社会経済格差による健康格差をふまえた国民健康保険加入者の
壮年期から高齢期までの継続的な支援方略の開発
研究代表者大阪府立大学看護学部 准教授 和泉 京子

共同研究者
大阪大学大学院医学系研究科 阿曽 洋子
大阪府立大学看護学部 上野 昌江
大阪府立大学看護学部 大川 聡子
大阪府立大学看護学部 根来 佐由美
羽曳野市保健福祉部保険年金課 渡辺 浩一
羽曳野市保健福祉部高年介護課 尾久 聖子

■要旨
健診未受診の要因は、近年、高齢者では低所得や低い教育年数といった社会経済的背景の影響が明らかになっている。所得なしの世帯が3割弱を占め平均所得も低い国民健康保険加入者は健診の未受診率が高い。本研究の目的は、国民の4割を占める国民健康保険加入者の経済状況別の健康状態と健康行動を明らかにし、壮年期から高齢期までの継続的な支援方略を開発する示唆を得ることである。平成21年度のA市の国保加入者21,101人について分析を行った結果、経済的ゆとりのない者は壮年期では53.0%、高齢期では43.5%であった。経済的ゆとりのない者は、壮年期・高齢期とも体調不良、うつ傾向、BMI25%以上、よい生活習慣を心がけていない、健診未受診、体調不良があるが医療機関未受診の割合が多かった。
経済的なゆとりのない者は体調不良があっても特定健診受診や医療機関を受診せず、治療に結びつきにくいことが明らかになった。体調不良を放置することによって症状が悪化する危険性が危惧される。悪化するに伴い心身の負担も大きく、治療にかかる医療費も高くなることより、壮年期からの早期に特定健診を受診し、医療機関の受診・治療に結びつける支援が重要となる。


C.分野横断的課題関係
(1)2011年度1年助成
地域包括支援センターと諸機関の連携による
認知症支援に関する研究
研究代表者関西大学人間健康学部 教授 黒田 研二

共同研究者
神戸学院大学総合リハビリテーション学部 講師 水上 然
大阪市社会福祉協議会認知症連携担当者 主査 森岡 朋子
関西医療大学保健看護学部 助教 室谷 牧子
大阪府福祉部介護支援課 主査 田中 園代
NPO法人介護支援の会松原ファミリー 理事 佐瀬 美恵子

■要旨
<目的>:
地域包括支援センターと諸機関の連携による認知症支援に関し、支援担当者が感じている支援困難感とその軽減方策を検討することを目的とした。研究方法:大阪府内の地域包括支援センター(237施設)を対象とする郵送質問紙調査を行った。173施設の3職種499人から回答が得られた。また地域包括支援センター職員と認知症地域支援推進員が参加する事例検討会を7回開催した。結果:質問紙調査において8割以上の包括支援センター職員が、認知症の早期診断体制、行動・心理症状が強いときの緊急入院受け入れ、身体合併症の入院受け入れが不十分だと回答した。質問紙調査と事例検討会より、支援困難と感じる要因として、本人と周囲の人との関係の悪化、本人の代弁者の欠如や支援受け入れ拒否、認知症に伴う行動・心理症状、支援側の力量やネットワークの弱さなどが見いだされた。考察:多職種による事例検討会の開催は、多様な視点から支援のアプローチ方法の検討ができ、参加者の視点の拡大、支援の力量向上に有効である。地域ケア会議を通じて事例検討を定着させることが、支援困難感の軽減や地域の支援ネットワークの強化につながると考えられる。


高齢社会における買物難民危険地域の可視化と高齢者の買物動向に関する実証的研究
−買物行為による高齢者の外出機会増大を目指して−
研究代表者京都大学大学院医学研究科 孔 相権

共同研究者
京都大学大学院医学研究科 野本 愼一
京都大学大学院工学研究科 安東 直紀
京都大学大学院工学研究科 小山 真紀

■要旨
猛烈な人口減少を受容できるような縮小型社会システムの構築を目指すためには、まず買物難民危険地域の可視化を行い、地域の実態を把握する必要がある。そこで本研究では京都府与謝野町を調査フィールドに選定し、買物難民危険地域の可視化を行い地域の実態把握を行った。得られた結果は以下の通りである。
1. 食料品小売店の踏査調査より、与謝野町では小規模な個人商店が店舗タイプとして多いことが明らかになった。しかし、品揃えが豊富で駐車場を完備したスーパーマーケットが進出しており、廃業又は生鮮食料品などの取扱いを止める個人商店が増えている実態を明らかにした。
2. 与謝野町の高齢化率、小売店位置情報、路線バス停留所位置情報、コミュニティバス停留所位置情報より、与謝野町における買物難民危険地域が6地域あることを地図上に可視化した。
以上の結果より、買物難民危険地域内の高齢者の買物実態を把握する必要性と、買物難民危険地域を減らす手段として居住地再編による縮小型社会システムの重要性を指摘した。


(1)2010年度2年助成

高齢な失語症者が楽しめる博物館の展示解説:ユニバーサルな観点か
研究代表者兵庫県立大学 自然・環境科学研究所/人と自然の博物館 准教授 三谷 雅純
■要旨
生涯学習施設での高齢な失語症者に適した文章のあり方と、それを応用した展示解説技術を探った。時代を変えて選んだ高齢者になじみのある原文とそれを子ども向けに直したもの、コミュニケーション障がい者向けに直したものをそれぞれ作成し、来館者に評価してもらった。コミュニケーション障がい者に多い高齢な失語症者には、①漢字と平仮名が同時に参照できること、②文章は短くすること、③文章は意味の区切りに空行を入れると理解しやすくなった。このことを現実の展示解説に活かすために、失語症当事者に協力してもらい、展示解説を模したマルチメディアDAISYによる絵本の読みやすさを調べた。すると失語症者 21名の内、15名が理解した。しかし機械的な人工音声に違和感を覚えた失語症者がいた。今後は生涯学習施設をユニバーサル・ミュージアムとするために、失語症者以外のコミュニケーション障がい者にも広く協力を仰ぎ、使いやすく、健常者にも違和感のない展示解説技術にしていく必要がある。
※記載年度は報告を行った年度です



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