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公益財団法人大阪ガスグループ福祉財団

助成事業調査・研究助成の過去助成状況


※記載年度は報告を行った年度です

2025年度「調査研究助成報告」

Ⅰ.一般部門

A.福祉の向上
(1) 2024年度 1年助成
介護老人保健施設に勤務する看護職のケア倫理コンピテンシーに影響する個人要因および組織要因
―職場の心理的安全性と道徳的感受性に着目して―
研究代表者姫路大学大学院 博士後期課程 和田 美穂

共同研究者
姫路大学大学院 看護学研究科 特任教授 白水 眞理子

■要旨
本研究は、介護老人保健施設に勤務する看護職を対象に、ケア倫理コンピテンシーに影響する個人要因および組織要因を明らかにすることを目的とした。全国の老健1,000施設を無作為抽出し、無記名Web質問紙調査を実施した。主要尺度項目の欠損が10%以内であった453名を分析対象とし、職場の心理的安全性(PS)、道徳的感受性(M)、ケア倫理コンピテンシー(EC)を測定した。構造方程式モデリング(MLR+FIML)により媒介モデル(PS→M→EC)を検証した結果、職場の心理的安全性は道徳的感受性に正の影響を示し(β=0.43、p<.001)、道徳的感受性はケア倫理コンピテンシーに正の影響を示した(β=0.47、p<.001)。さらに心理的安全性はケア倫理コンピテンシーに直接効果(β=0.36、p<.001)および間接効果(β=0.20、p<.001)を示し、モデルは分散の49%を説明した。以上より、倫理的看護実践能力の向上には心理的安全性を高める組織的取り組みが重要であることが示唆された。


(2) 2023年度 1年助成(1年延期)
医療資源の乏しい小規模自治体における「認知症の人と家族の一体的支援プログラム」の意味と課題の探索的検討
研究代表者大阪信愛学院大学 看護学部 講師 松村 麻衣子

共同研究者
大阪信愛学院大学 看護学部 得居 みのり
こころの訪問看護ステーションひなた 森脇 崇

■要旨
医療資源の乏しい小規模自治体A町は、認知症の人と家族が孤立しやすい状況にある。本研究はA町で実施した認知症の本人と家族の一体的支援プログラムの意味と参加者の経験、および運営課題を探索的に検討することを目的とした。参加者2家族4名を対象に、孤独感、精神的健康度、介護負担感の前後比較と半構造化面接による質的分析を行った。さらに運営スタッフ5名に質問紙およびフォーカスグループインタビューを実施した。心理指標の明確な改善は認めず、参加者の中には悪化した者もいた。一方で、質的データからは、家族の新たな側面への気づき、自己開示の促進、交流の拡大がみられた。プログラムは安全で支えとなる場として評価された。一方、対象者確保や効果の可視化、運営体制に課題が示された。本プログラムは心理指標の改善には至らなかったものの、参加者の経験において家族関係の再構築や対人関係を促進する可能性が示唆された。資源の乏しい小規模自治体での継続には、地域特性に応じた運営体制の整備が必要であると考えられた。


B.健康の維持・増進
(1) 2024年度 1年助成
教育入院となった糖尿病患者に対する集中的な運動療法・テーラーメイドな運動療法指導が運動セルフエフィカシー・アドヒアランスに及ぼす影響
研究代表者大阪医科薬科大学病院 リハビリテーション科 理学療法士 筆保 健一

共同研究者
大阪府済生会茨木病院 リハビリテーション科 伊東 憂郁
大阪府済生会茨木病院 リハビリテーション科 関川 清史
大阪府済生会茨木病院 リハビリテーション科 坂井 真奈美
大阪府済生会茨木病院 リハビリテーション科 上田 透
大阪府済生会茨木病院 内分泌・糖尿病内科 山口 史子
大阪府済生会茨木病院 内分泌・糖尿病内科 秀嶋 絵里子

■要旨
【背景】2型糖尿病患者の運動療法継続には運動セルフ・エフィカシーの向上が不可欠だが、教育入院中の集中的な運動療法およびテーラーメイドな運動指導が運動セルフ・エフィカシーに及ぼす報告は限られている。そこで、本研究の目的を糖尿病教育入院における集中的な運動療法およびテーラーメイドな運動指導が、運動セルフ・エフィカシーおよび身体機能に及ぼす影響を明らかにすることとした。【方法】前向き単群コホート研究の中間解析として21例の2型糖尿病患者を対象とした。13日間の教育入院中に、理学療法を実施した。評価項目は日本語版self-efficacy for exercise scale(SEE)含むアンケート形式の評価と、移動能力を中心とした身体機能評価とし、Wilcoxon符号順位検定を用いて入院時と退院時での前後比較を行った 。【結果】SEEは61点から68点へと向上傾向を示し、中等度の効果量を認めた(p=0.107, r=0.35)。体重(p=0.001, r=0.65)および下腿周径(p<0.001, r=0.86)は強い効果量を伴い有意に減少した。身体機能に有意な変化はなかった。【結論】教育入院中の理学療法は短期間で2型糖尿病患者のSEEを向上させる可能性が示唆された。一方で、下腿周径の減少は筋肉量減少のリスクをはらんでおり、教育入院中の筋肉量維持が課題となる。【キーワード】2型糖尿病、運動セルフ・エフィカシー、運動療法、教育入院、サルコペニア


フレイルを早期に発見する両手運動評価手法の開発
研究代表者京都橘大学大学院 健康科学研究科 博士後期課程 藤川 翔也

共同研究者
京都橘大学    中野 英樹
京都橘大学大学院 澤井 舜
京都橘大学大学院 山本 涼介
京都橘大学大学院 静 雄介

■要旨
本研究は、地域在住高齢者を対象に、ロバスト、プレフレイル、フレイルの各段階における両手運動特性の違いおよび身体機能との関連性を検討することを目的とした。体力測定会に参加した358名のうち、除外基準を満たした302名を解析対象とし、基本チェックリストによりロバスト136名、プレフレイル126名、フレイル40名に分類した。磁気センサ型指タッピング装置を用いてインフェーズ課題およびアンチフェーズ課題を実施し、44項目の手指運動パラメータを算出した。身体機能として握力、長座体前屈、開眼片脚立ち、Timed Up and Go Test(TUG)、骨格筋量、最大歩行速度を測定し、年齢を共変量とした共分散分析および偏相関分析を行った。その結果、インフェーズ課題におけるオープニング加速度の極大点の平均にのみ群間差を認め、フレイル群はロバスト群より有意に低値を示した。さらに同指標は、プレフレイル群およびフレイル群において握力、TUG、骨格筋量、最大歩行速度など複数の身体機能と有意に関連し、特にフレイル群で関連が強かった。これらの結果から、本指標はフレイル段階に応じた両手運動特性を反映し、全身的な身体機能低下を捉える簡便な評価指標となる可能性が示唆された。


キメラ抗原受容体遺伝子導入T細胞療法後のサイトカイン放出症候群が骨格筋量に及ぼす影響
研究代表者兵庫医科大学病院 リハビリテーション技術部 理学療法士 西角 暢修

共同研究者
兵庫医科大学 医学部 リハビリテーション医学講座 内山 侑紀
兵庫医科大学 医学部 リハビリテーション医学講座 道免 和久

■要約
【目的】キメラ抗原受容体遺伝子導入T細胞(以下CAR-T)療法ではサイトカイン放出症候群(以下CRS)による全身炎症が生じるが、骨格筋や呼吸筋への影響は明らかではない。本研究はCAR-T療法前後の筋量および身体機能の変化を検討した。【方法】CAR-T療法を受けた造血器疾患患者29例を対象とした前向き観察研究とした。CAR-T療法前および14〜21日後に身体機能、四肢骨格筋指数(以下SMI)、大腿四頭筋および横隔膜筋厚を評価した。身体活動量は投与後7日間測定した。【結果】SMIおよび横隔膜筋厚はCAR-T療法後に有意に低下した。一方、握力、膝伸展筋力、歩行速度、6分間歩行距離には有意な変化を認めなかった。身体活動量の中央値は464歩/日であった。筋量変化は修正CRS grade、発熱期間、身体活動量と関連を示さなかった。【結論】CAR-T療法後に骨格筋量および横隔膜筋厚の低下を認めたが、身体機能低下は認めなかった。


高齢者の歩行を支援する足関節補助装具の開発と臨床評価
研究代表者佛教大学 保健医療技術学部理学療法学科 准教授 谷田 惣亮

共同研究者
大分大学 理工学部理工学科 菊池 武士
おした整形外科医院 リハビリテーションセンター 土山 裕之

■要旨
日本では急速に高齢化が進行しており、健康寿命の延伸が重要な課題となっている。高齢者の自立した生活を維持するうえで歩行能力の保持は重要であり、その低下を予防する支援技術の開発が求められている。本研究では、新たに靴に装着するタイプの足関節補助装具を開発し、その効果を検証した。従来の歩行補助装具には重量や装着の煩雑さといった課題があったが、本装具は3Dプリンタを用いて製作することで総重量約290gの軽量かつ簡易な構造を実現した。さらに、機械的な制御機構を用いず、支柱の弾性を利用して歩行時の足関節背屈を補助できる点が特徴である。歩行に不安を有する高齢男性8名を対象に歩行評価を実施した結果、装具装着時には遊脚期における足関節背屈角度、つま先の高さ、歩幅、歩行速度のいずれにおいても有意な向上が認められた。本装具は歩行時に足関節の背屈、つま先の挙上を補助することでつまずきを防ぎ、歩行の前方推進を円滑にする可能性がある。これにより、高齢者の安全な移動を支援し、生活範囲の拡大や身体活動量の向上を通じて、疾病予防や健康寿命の延伸に寄与することが期待できる。


(2) 2023年度 2年助成
ウェアラブルデバイスを用いた高齢者施設入所者の身体活動量の実態調査および栄養状態との縦断的関連の検討
研究代表者滋賀医科大学大学院 医学系研究科看護学専攻 特任教授 龍野 洋慶

共同研究者
大阪大学大学院 医学系研究科 教授 神出 計

■要旨
本研究は高齢者施設入所者を対象に?活動量計を用いた客観的な測定による身体活動量の実態を調査し、?身体活動量と栄養状態の縦断的な関連を検証することを目的とした。高齢者施設の歩行可能な入所者41名(年齢86.8±7.1歳、男性31.7%)を対象に基本属性とMini Nutritional Assessment-Short Form(MNA-SF)による栄養状態の調査および活動量計による7日間の身体活動量等を測定した。MNA-SF平均値は11.3±1.7、53.7%が低栄養または低栄養のリスク状態であった。身体活動によるエネルギー消費は451.7±196.1 kcal/日でMNA-SFと血清アルブミン及び中性脂肪と有意な正の相関があった。また、A/G比は1年後追跡時の身体活動指標のうち座位行動(1日に占める座位で過ごす時間の割合)と有意な負の相関があり、中強度活動(1日に占める中強度活動の割合)と有意な正の相関があった。本研究によりベースラインと1年後追跡時で指標は異なるものの、高齢者施設入所者の栄養状態は身体活動と相関があることが明らかになった。


加齢に伴う構音機能低下と舌機能・全身機能との関連
研究代表者大和大学 保健医療学部総合リハビリテーション学科 准教授 中尾 雄太
■要旨
加齢に伴い構音機能は低下するが、舌機能および全身機能との関連は十分に明らかにされていない。本研究では、加齢に伴う構音機能低下を音響学的に解析し、舌機能および全身機能との関連について検討した。対象は構音障害を呈する疾患の既往がない20〜90歳の健常成人とした。音響解析として「北風と太陽」の音読、Oral diadochokinesis(Oral-DDK)、最長発声持続時間を測定した。「北風と太陽」から抽出した標的語「外套(gaito)」の連母音 /ai/ を用いてF2 slopeを算出した。舌機能として舌圧測定および舌筋超音波検査を行い、舌筋断面積と舌筋の筋質指標であるQuality indexを算出した。全身機能として握力、骨格筋量指数、Phase angleを測定した。高齢群は若年群と比較して、音読所要時間の延長およびOral-DDK /ta/、/ka/の低下を認めた。また、舌筋断面積は高齢群で有意に大きく、Quality indexは高齢群で有意に低値を示した。Quality indexはOral-DDKと有意な相関を認めた。 身体機能が保たれた高齢者においても、舌筋萎縮を伴わない段階から筋質低下が生じ、それが構音速度の低下と関連する可能性が示された。


C.分野横断的課題
(1) 2024年度 1年助成
演劇的手法を用いたアドバンス・ケア・プランニング(ACP)市民向け介入プログラム『お茶の間人生会議』の開発と効果検証
― 高齢者の健康維持・福祉向上に向けた社会実装モデルの検討 ―
研究代表者京都大学経営管理大学院 経営管理研究部 特定准教授 蓮 行

共同研究者
九州大学大学院 医学研究院地域医療教育ユニット 助教 岡崎 研太郎
京都大学大学院 医学研究科社会健康医学系専攻予防医療学分野 特定教授 岡田 浩
株式会社スギ薬局 事業本部医療戦略室 藤田 あゆみ
京都大学経営管理大学院 経営管理研究部 特定助教 末長 英里子
大阪大学大学院 人間科学研究科 特任研究員 紙本 明子
京都大学 経営管理研究部 特定研究員 大山 渓花

■要旨
本研究は、演劇的手法を用いた市民向けアドバンス・ケア・プランニング(ACP)介入プログラム「お茶の間人生会議」を実施し、その量的・質的効果を検証したものである。ACPは、高齢者が自らの価値観に沿った医療・ケアを受けるために重要な意思決定支援のプロセスであるが、日本では認知度・実践率ともに十分とは言えない。本プログラムは専門家による講義とロールプレイを組み合わせ、参加者が多世代の役割を交代しながら終末期医療の対話を疑似体験する構成とした。26名を対象とした前後比較の結果、結果評価および遵守意思において統計的に有意な向上が確認された。さらにインタビュー分析からは、心理的準備の促進や家庭内対話のきっかけ創出といった効果が示された。以上より、演劇的手法はACPに対する心理的障壁を低減し、市民の対話実践を促す教育的アプローチとして有効である可能性が示唆された。
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