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公益財団法人大阪ガスグループ福祉財団

助成事業調査・研究助成の過去助成状況


※記載年度は報告を行った年度です

2012年度「研究助成報告書」

Ⅰ.一般部門

A.福祉の向上関係
(1)2010年度1年助成
高齢者・障害者に対する外出情報の提供をめざした市民参加型プログラムの開発・評価

研究代表者公益財団法人 公害地域再生センター 藤江 徹

共同研究者
公益財団法人 公害地域再生センター 谷内 久美子
長野大学環境ツーリズム学部 清水 万由子

■要旨
本研究では、主体的かつ継続的にバリアフリー情報を収集し、提供することができる市民を育成することを目的として、教育プログラムを実践し、プログラムを評価した。まず、高齢者や障害者にヒアリング調査を行い、これをふまえて、市民参加型の教育プログラムを実施し、バリアフリー情報を収集した。最後に、参加者および第三者からの教育プログラムに対する意見を元に、本プログラムを評価した。
その結果、教育プログラムの実施により、市民目線に立ったバリアフリーマップを作成することができた。本教育プログラムのマップの特徴は、「バリアフリー整備がされていなくても人的な対応をしてくれる施設を掲載している」、「公的な施設だけでなく民間の小規模施設の情報も掲載している」、「生活者の視点から総合的である」点である。本教育プログラムは、参加者の意見をフィードバックしながらプログラムを進めていったことで、参加者の主体性を増すことができ、まちづくりに対する意識を高めることができた。


B.健康の維持・増進関係
(1)2010年度1年助成
高齢COPD患者に対する呼息時低周波電気刺激の臨床効果に関する研究
―パイロットスタディ−
研究代表者大阪府立大学 地域保健学域総合リハビリテーション学類 伊藤 健一

共同研究者
結核予防会大阪府支部大阪病院 リハビリテーション科 濃添 建男
結核予防会大阪府支部大阪病院 内科 奥田 みゆき
大阪府立大学 地域保健学域総合リハビリテーション学類 野中 紘士
神戸国際大学 リハビリテーション学部 堀江 淳
甲南女子大学 看護リハビリテーション学部 川村 博文

■要旨
目的:本研究の目的は、我々が開発してきた低周波電気刺激装置を用い、呼息時に対する低周波電気刺激の効果を検証することである。対象:対象は高齢慢性閉塞性肺疾患患者12名である。方法:対象者はプラシーボ介入群(対照群)と呼息時低周波電気刺激介入群(介入群)に割り付けられた。これらの対象者に対し介入前後の安静時および運動時の換気機能、酸素飽和度、自覚的運動強度を測定した。結果:介入群において換気パラメータの平均値において改善が認められた。しかし、その結果は有意差を伴うものではなかった。考察:今回の研究では換気パラメータの有意差を伴った改善が認められなかった。しかし、平均値の改善傾向と標準偏差のばらつきが認められていることから、対象者数を増やすことで有意差を伴った改善効果が期待できるものと推察された。今回の研究結果より、呼息時低周波電気刺激の効果が示唆されたとともに、本研究の継続意義が明らかとなった。


高齢者の立ち上がり動作における筋収縮のタイミングに関する研究

研究代表者 総合リハビリテーション学研究科 岩田 晃

共同研究者
大阪府立大学大学院 総合リハビリテーション学研究科 樋口 由美
医療法人瑞穂会 小川病院リハビリテーション科 木村 大輔
大阪労災病院 リハビリテーション科 岡本 健佑
大阪府立大学大学院 総合リハビリテーション学研究科 米津 亮
大阪府立大学大学院 総合リハビリテーション学研究科 淵岡 聡

■要旨
高齢者にとって、椅子からの立ち上がり動作は自立生活を維持する上で、不可欠な動作である。この動作は座位から立位へと身体重心を前上方へ移動させる動作であり、歩行開始時の重心制御能力などを考慮すると、前脛骨筋とヒラメ筋の筋活動が大きな役割を果たしていることが考えられる。そこで、各筋の活動および両筋の同時収縮の割合と時間を測定し、その特徴を明らかにすることを目的とした。65歳以上の女性44名を対象として、デジタルビデオおよび筋電図を用いて、動作と筋活動について解析を行った。その結果、殿部離床までは前脛骨筋の活動が大きく、殿部離床の際にほぼ同じ活動量になり、その後はヒラメ筋の活動が大きくなることが明らかになった。また、両筋の活動開始時間は、動作時間と有意な相関が認められたが、同時収縮に関しては、動作時間との関係は認められなかった。このことから、立ち上がり動作は下腿筋の協調的な活動によって制御され、活動開始のタイミングによって、動作時間がコントロールされている可能性が示唆された。


維持期在宅脳卒中患者に対する積極的リハビリテーションが身体機能および動脈機能に及ぼす影響

研究代表者畿央大学健康科学部 高取 克彦

共同研究者
畿央大学健康科学部 庄本 康治
西大和リハビリテーション病院 中村 潤二

■要旨
本研究の目的は在宅脳卒中患者に対する積極的リハビリテーションが身体機能および動脈機能に及ぼす影響を調査することである。対象は通所リハビリテーション利用中の維持期脳卒中患者44名とした。対象を専用機器による筋力増強訓練を中心とした積極的治療群(実験群)とストレッチングおよび歩行訓練を中心とした標準的治療群(コントロール群)との2群に割り当て、3ヶ月間の治療介入後における身体機能および動脈機能を比較した。身体機能面の評価には10m歩行速度、30秒間立ち上がりテスト、Timed Up and Go テスト、最大握力を用い、動脈機能の評価には心臓足首血管指数(CAVI )および足関節上腕血圧比(ABI)を用いた。
結果として、介入後の身体機能面には両群ともに有意な差は認められなかったが、動脈機能では実験群の麻痺側CAVIおよび非麻痺側ABIがコントロール群に比較して有意に改善した(共にP<0.01)。
これらの結果から、維持期脳卒中患者に対する積極的リハビリテーションは身体機能を維持し、動脈機能を改善させることが示唆された。


2型糖尿病患者における非運動性活動量の増加が糖・脂質代謝に与える影響

研究代表者京都大学大学院 人間・環境学研究科 宮本 俊朗

共同研究者
京都逓信病院 第一内科 福田 和仁
オムロンヘルスケア株式会社 大島 秀武
京都大学大学院 人間・環境学研究科 森谷 敏夫

■要旨
本研究の目的は、活動量計によって、2型糖尿病患者の非運動性活動量(NEAT)を増加させることが可能であるかを検討し、NEATの増加が糖・脂質代謝に与える影響を明らかにすることである。対象は、2型糖尿病患者38名(61.8±8.4歳、BMI 24.8±3.6、HbA1c 6.6±0.7%)とした。すべての患者をコントロール群(Con群)、NEAT群、歩行運動群(walking群)にランダムに振り分けた。Con群は、歩数、3METs以上の総活動量、NEAT群は歩数、NEAT活動量(3METs未満の生活活動量)、Walking群は、歩数、3METs以上の歩行活動量がそれぞれ表示される活動量計を装着した。介入は、NEAT群にはNEAT量を、Walking群には歩行活動量を増加するように指導し、12週間行った。NEAT群において、総活動量、NEAT活動量が有意に増加したが(p<0.05)体重、糖・脂質代謝に関する指標において有意差は認めなかった。今回、アウトカムには有意な影響を及ぼさなかったが、活動量計によって、NEATを増加させることができたのは、今後のNEATを含めた糖尿病ケアの研究において有用な基礎データとなり、今後の糖尿病予防・治療という観点においても社会的意義が大きいものと考えられた。


(2)2009年度2年助成
家庭用ゲーム機器を用いた高齢者の順応性に関する研究

研究代表者
京都大学大学院医学研究科 青山 朋樹

共同研究者
京都大学大学院医学研究科 山田 実
京都大学大学院医学研究科 永井 宏達
京都大学大学院医学研究科 立松 典篤
京都大学大学院医学研究科 中村 雅俊
天理よろづ相談所病院リハビリセンター 田中 武一

■要旨
本邦においては高齢者人口の増大と共に、急激な社会環境の変化に順応できない高齢者の増加も問題になっている。その一つとして現実空間と仮想空間の錯綜が挙げられ、言葉の上での混乱も生じている。一方で現実の活動を仮想空間に投影する拡張現実技術の発展は著しく、そのいくつかは既に医療応用が進められている。そこで本研究では拡張現実技術の商用化を果たした代表例であるWii Fit(任天堂)を用いて高齢者の拡張現実への順応性を明らかにすることを目的とした。施設入所中の特定高齢者17名を対象にWii Fitプログラムのうち、踏み台リズム、スキースラロームを実施した。この獲得点数あるいは所要時間を測定値として介護度、転倒経験の有無、さまざまな運動機能との相関を解析した。この結果、踏み台リズムの獲得点数と介護度、転倒経験、座位ステッピング回数が相関する結果が得られた。今回得られた結果が高齢者のどのような能力を反映するかを言及することはできないが、実年齢と相関する結果ではないことから、高齢者の何らかの能力を表す新しい指標となる可能性がある。


ロコモティブシンドロームにおける高齢者の下肢関節不安定性に対する実践的研究

研究代表者
大阪大学大学院医学系研究科器官制御外科学 大阪大学医学部付属病院リハビリテーション部 坂井 孝司

共同研究者
大阪大学大学院医学系研究科運動器バイオマテリアル学 秋山 慶輔
大阪大学大学院医学系研究科運動器バイオマテリアル学 小柳 淳一朗
大阪大学大学院医学系研究科運動器バイオマテリアル学 菅本 一臣

■要旨
MRIのtrue fast imaging with steady-state precession撮像法と、voxel-based registration法を用いて、ロコモティブシンドロームを呈する60歳以上の女性10例、正常女性10例、及び臼蓋形成不全女性12例の合計32例を対象とし、臼蓋被覆を表すcenter-edge(CE)角、中間位における臼蓋中心と大腿骨頭中心間の距離(3D-migration)、及び45度屈曲位・15度伸展位・Patrick肢位における股関節不安定性、すなわち中間位と各肢位での大腿骨頭中心の相対移動量・ベクトル量(3D-translation)を解析した。股関節不安定性は臼蓋被覆度と相関していた。Patrick肢位ではロコモティブシンドロームで最も3D-translationが少なかったが、45度屈曲位ではロコモティブシンドロームで3D-translationが最も大きかった。ロコモティブシンドロームを呈する60歳以上の女性では歩行などの日常生活動作における股関節不安定性が示唆された。


高次脳機能が身体機能に及ぼす影響に関する研究・調査
−高齢者の新しい転倒予防法の開発のために−
研究代表者神戸大学保健学研究科 土井 剛彦

共同研究者
神戸学院大学 助教 浅井 剛
東広島整形外科クリニック(申請時:神戸大学保健学研究科) 平田 総一郎
神戸大学保健学研究科 安藤 啓司
藤田整形外科(申請時:神戸大学保健学研究科) 小松 稔

■要旨
高齢者の歩行において、遂行機能を中心とした認知機能が関連している事が明らかになりつつある。しかし、それらの検討は、同時課題(dual task)を用いた実験的かつ間接的手法によるものがほとんどで、直接的に歩行と脳機能を検討したものではない。そこで本研究は、携帯型の近赤外分光装置を用いて歩行時の脳活動を測定し、dual task歩行が前頭前野の脳活動と関連しているか否かを検討することを目的とする。高齢者18名(女性8名)を対象に行った。歩行条件は通常歩行とdual task歩行の2条件とし、前頭前野における歩行時の酸化ヘモグロビン濃度(oxy-Hb)を計測した。Dual task歩行条件では、語想起課題を認知課題として用いた。条件間の比較を行ったところ、dual taskによる条件因子がoxy-Hbの条件間変化に有意に関連性を示した(p < 0.001)。本研究より、dual task歩行が前頭前野の脳活動を促進させる事が示唆され、dual task歩行を取り入れた介入により前頭前野の機能向上や遂行機能向上が効果的にみられる可能性があると考えられる。



高齢化社会における老人性難聴の治療方法の確立に向けて

研究代表者 京都大学大学院医学研究科 耳鼻咽喉科・頭頸部外科 関谷 徹治
■要旨
加齢と共に、高齢者は難聴を経験するようになる。高齢者が快適かつ円滑な日常生活を営むためには、老人性難聴に対する治療方法の確立が求められる。聴神経は音刺激を末梢から中枢への伝える上で重要な役割を果たしているが、老人性難聴では聴神経変性が見られる。この事から、本研究では細胞移植による聴神経再生に向けて基礎的実験を実施した。難聴における聴神経の状態を再現するために、ラット聴神経中枢部分に機械的圧迫損傷を加えた。その後に変性した聴神経に細胞移植をおこなった。その結果、多くの細胞は移植8週間後までにcell debrisに変化していた。同時に聴神経内には、glial scarが広範囲に発生していた。glial scarの神経細胞に対する生着抑制作用によって、移植細胞死がもたらされた可能性があった。難聴を含む神経変性疾患に対する細胞移植治療を確立するためには、glial scarの克服が必須であることが示された。

C.分野横断的課題関係

(1)2010年度1年助成
ホームホスピス「愛逢の家」の効果に関する調査研究

研究代表者大阪府立大学看護学部 岡本 双美子

共同研究者
NPO法人愛逢・理事 兼行 栄子

■要旨
本研究では、ホームホスピス「愛逢の家」の入所者と家族の生活の質(QOL)の変化を明らかにすることを目的とした。方法は、質的記述的研究法とし、半構成的質問紙による面接調査とした。
入所者の生活の質は、<入所前にがん性疼痛や食欲不振があった>ことや<入院中は気力の低下や、スタッフの対応に不満があった>が、入所後は<病状が進行しても、希望に沿った食事やケアが提供された>ことや<食事について満足していた>、<病状が安定し、生きる気力や希望が出てきた>、<環境がよく、本人も家族もくつろげる空間だった>、<私物に囲まれ、自分らしく生活できた>、<愛逢の家に満足し、穏やかに最期を迎えた>と変化していた。また、家族は<家族としてサポートするのは負担や迷いがあった>が、入所後には<介護や面会による身体的負担はなかった>ことと<安心して預けることができる環境だった>、<本人と家族へのスタッフの心遣いや食事の配慮が嬉しかった>、<納得のいく看取りができた>に変化していた。入所者と家族ともに入所により生活の質が向上したことが示唆された。

(2)2010年度2年助成
介護労働者のメンタルヘルスに及ぼすリスク要因と予防的要因に関する研究

研究代表者奈良県立医科大学地域健康医学教室 冨岡 公子

共同研究者
中部学院大学人間福祉学部 講師 新井 康友
神戸大学大学院保健学研究科 助教 上杉 裕子
大阪教育大学大学院健康生活科大学院生 花家 薫

■要旨
介護労働者640名を対象として、理論的なモデルに基づいて職業性ストレスや労働環境を検討し、メンタルヘルスの関連要因を多重ロジスティック回帰分析によって解析した結果、うつ症状ありと有意な関連を示した要因は、職業性ストレス(仕事の要求度−コントロール、および努力−報酬不均衡)、家族・友人の支援が低いこと、神経症傾向あり、そしてストレス対処能力が低いであった。ワーク・エンゲイジメントを低める要因は、職業性ストレス(努力−報酬不均衡および組織の公正性)、そしてストレス対処能力が低いであった。仕事への過剰適応状態は、うつ症状に対してはリスク要因であったが、ワーク・エンゲイジメントに対しては高める(予防的)要因であった。
聞き取り調査によって、介護労働者の精神的負担の要因として、職場の人間関係、適切な支援や評価が得られないことが挙げられた。
以上から介護労働者のメンタルヘルスに及ぼすリスク要因は努力−報酬不均衡な職業性ストレスであり、予防的要因は職場の公正性、家族・友人の支援、およびストレス対処能力である。

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