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助成事業調査・研究助成の過去助成状況


※記載年度は報告を行った年度です

2016年度「研究助成報告書」

Ⅰ.一般部門

A.福祉の向上関係
(1)2014年度1年助成
介護予防訪問介護・通所介護の
地域支援事業への移行課題と対策の方向性
研究代表者桃山学院大学 社会学部 社会福祉学科 准教授 梅谷 進康

共同研究者
神戸医療福祉大学 社会福祉学部 石井 恒生
日本介護福祉学会 評議員 梅谷 正子
静岡福祉大学 社会福祉学部 渡辺 央

■要旨
研究目的は、介護予防訪問介護および介護予防通所介護の地域支援事業への移行課題と、その円滑な移行のための対策の方向性を明らかにすることであった。
調査対象は、近畿地方にある地域包括支援センター(全数調査819か所)に勤務する保健師、社会福祉士、主任介護支援専門員(合計2,457人)であった。
データ収集は、質問紙調査を行った(有効回答率31.2%)。収集したデータは統計分析と質的分析を行った。
結果として、次の示唆が得られた。(1)地域包括支援センターの多くの専門職は、移行課題があると考えていた。(2)対策の方向性としては、①保険者による移行のためのリーダーシップの発揮、②インフォーマルとフォーマルな支援の質量の確保と双方のネットワークづくり、③多様な社会資源を活用する適切な介護予防ケアマネジメントの実施とそれが可能となる体制の整備、④地域ケア会議の「地域課題の解決」に係る機能向上のための保険者と地域包括支援センターの協働が求められることであった。



介護予防のための住民互助活動の類型化と展開方法に関する研究
研究代表者大阪経済大学人間科学部 教授 髙井 逸史

共同研究者
関西大学人間健康学部 教授 黒田 研二
関西大学大学院 人間健康研究科 高木 さひろ

■要旨
一定の地域で住民の互助活動を体系的に把握し、介護予防への寄与という観点から類型化し、地域で介護予防をより効果的に進めるため互助活動をいかに展開していくか、という課題を検証することを目的とした。堺市内で最も高齢化が進んでいる南区を対象に19小学校区の校区福祉委員会活動内容を把握するアンケート調査、ならびインタビュー調査、さらに南区内NPO法人に対しインタビューを実施した。調査期間は平成27年9月9日から12月29日であった。以下の結果を得た。
類型化として校区福祉委員会活動では“訪問型活動”と“通い型活動”に分類することができ、NPO法人では“通い型活動”に分類することができた。
住民互助活動の展開方法として、
  • 1) 特定の住民ボランティアだけでなく近隣住民をはじめ、近隣商店、地域包括支援センターなど多様なネットワークの関わりが重要となる
  • 2) 介護予防教室では保健師などの専門家の介入が不可欠であり、今後は理学療法士など運動の専門家による指導を希望している
  • 3) 新たな担い手を育成し支援するには、同じ志を持ったメンバーが構成員であることが求められる
  • 4) 運営資金として社会福祉協議会からの補助金や参加費、近隣商店の協賛が求められる


介護補助用具を用いた安全な移乗介助技術に対する
教育プログラムの効果の検証
-習得プロセスの解明の検討-
研究代表者滋慶医療科学大学院大学 医療管理学研究科 研究生 岸村 厚志

共同研究者
滋慶医療科学大学院大学 医療管理学研究科 准教授 飛田 伊都子
滋慶医療科学大学院大学 医療管理学研究科 教授 米延 策雄
大阪市立大学 名誉教授 伊藤 正人

■要旨
本研究は、介護補助用具を用いた安全な移乗介助技術の習得を目指した教育プログラムの有効性を検証することを目的とした。教育プログラムは、スライディングボードを用いたベッドから車椅子と車椅子からベッドの2場面における移乗介助技術に焦点を当て、応用行動分析学を基軸とした内容であり4期で構成する。具体的には、①言語的教示とモデル教示を含む動画による教示(6週間)、②習得状況のフィードバックと言語的賞賛(4週間)、③習得難易度の高い移乗工程の動画をスロー再生する追加教示(4週間)、④フォローアップ(2週間)の4期とした。教育プログラムを提示した介入群と①の言語的教示とモデル教示を含む動画による教示のみを提示した対照群の移乗介助技術の習得率と比較した。その結果、移乗介助技術の習得率は、2場面の平均値における最高値は介入群では97.8%、対照群では69.7%であった。これらの結果から応用行動分析学を適応した教育プログラムは移乗介助技術の習得に有効であることが示された。


介護老人保健施設利用者の在宅復帰を促す要因について
〜家族の面会頻度との関連について〜
研究代表者
大阪河﨑リハビリテーション大学 リハビリテーション学部 リハビリテーション学科
作業療法学専攻 講師 嶋野 広一

共同研究者
神戸大学大学院保健学研究科 長尾 徹
市立吹田市民病院 花房謙一
西記念ポートアイランドリハビリテーション病院 福澤 優

■要旨
介護老人保健施設(以下、老健)入所者の在宅復帰に際し、家族が「老健入所者の在宅復帰を希望しない」ことや、入所者が「家に帰ると家族に迷惑が掛かる」という意見があり、介護保険の基本理念である「在宅継続」「利用者本位」から解離する事例が存在する。一方、家族が頻繁に老健入所者の面会に訪れている場合は自宅退所している印象があった。
本研究は老健入所者の身体・認知機能、入所期間、家族の面会状況を調査し、自宅へ退所した群と医療機関へ退所した群を比較することで、家族との関係性が自宅退所に影響するかどうかを推察することにあった。
老健を退所した139名(85.0±7.4歳)の要介護度、自立度、認知度、入所期間、入所後と退所前2週間の面会頻度をカルテ等から得て、群間比較した。その結果、自宅群(47名)の要介護度、認知度は医療群(92名)よりも低く(p<0.01)、自立度は高かった(p<0.01)。そして入所後2週間の面会頻度は自宅群の方が多かった(p<0.05)。これらのことから、日常生活動作能力や精神機能維持のみならず、入所者の家族に面会を促すことができるような働きかけが、自宅退所を促進する可能性があると考えられた。


音楽を用いたグループ・エクササイズがシニア世代の
コミュニケーション・ネットワークに及ぼす効果
研究代表者 神戸大学大学院人間発達環境学研究科 岡田 修一

共同研究者
神戸大学大学院人間発達環境学研究科 増本 康平
神戸大学大学院人間発達環境学研究科 原田 和弘
神戸大学大学院人間発達環境学研究科 近藤 徳彦
神戸大学大学院人間発達環境学研究科 長ヶ原 誠
神戸大学大学院人間発達環境学研究科 片桐 恵子
京都学園大学健康医療学部 平川 和文

■要旨
本研究は,同一地域にくらす高齢者に対して,音楽を用いたグループエクササイズ(以降,運動教室)を実施し,以下の3点を明らかにすることを目的とした。1) 参加者間のコミュニケーション(対面交流)をデータ化し,交流がどのように形成され変化していくのかを定量的に把握する,2) 対面交流データと身体機能,認知機能,性格特性といった心理変数との関連を検討することで,高齢期のコミュニケーション行動に影響する要因を明らかにする,3) 同じコミュニティで生活する参加者間で交流をもつことが,参加者の地域活動や住民交流の関心に影響するのかを検討する。60歳以上の高齢者24名を対象とし,3セッションで構成される運動教室を実施した。各セッション開始前10分間の参加者間対面交流をビデオカメラの映像からデータ化し対面交流データとして用いた。ネットワーク分析により,対面交流の状態や変化を把握することができた。また,対面交流の程度には,協調性といった性格特性が関連していること,同じ地域で生活する住民間の交流を持つことが,地域活動と住民交流に対する関心を高めることが示された。最後に,交流が多いキーパーソンや交流の少ない孤立した参加者の同定といった対面交流データの応用可能性について議論した。


(2)2013年度2年助成

認知症高齢者の独居生活の限界に関する研究
研究代表者関西国際大学保健医療学部 久保田 真美

共同研究者兵庫医療大学看護学部 堀口 和子

■要旨
本研究の目的は、認知症高齢者の独居生活継続が不可能になる個人・別居家族・地域社会要因を抽出し(研究I)、認知症高齢者の独居生活の限界閾値を検討すること(研究II)である。研究Iでは、9名の介護支援専門員を対象に半構造化面接を実施し、認知症者の独居生活継続が不可能になる要因を抽出した。研究IIでは、その要因に基づいて質問紙調査票を作成し、介護支援専門員を対象に認知症高齢者と非認知症高齢者の限界要因を比較検討した。研究Iの結果、【生命の安全確保の危機】【不可解な行動に対する近隣の敬遠】から、認知症者本人の意思ではなく【サービス提供者や家族の疲弊とあきらめ】によって独居生活継続が困難になっていた。研究IIの結果、認知症者の要介護度、認知症の行動・心理症状・健康管理の状態、別居家族の金銭管理と専門職への連絡、地域住民の存在、サービス利用状況などの要因によって認知症高齢者の独居生活継続が規定されていた。


高齢者虐待防止についての教育的視点からの課題提言
〜介護福祉士養成カリキュラムにおける
「高齢者虐待防止マネジメント」の新科目開発に関する研究〜
研究代表者大阪城南女子短期大学 人間福祉学科学科長 教授 前田 崇博

共同研究者
大阪城南女子短期大学 多田 鈴子
大阪城南女子短期大学 瀬 志保
大阪城南女子短期大学 長橋 幸恵

■要旨
高齢者虐待防止のための教育方法論の実践研究であり、虐待防止関連のプログラムとテキストの作成を最終課題と設定した社会科学系の開発型の研究でもある。
1年目は、頻発する虐待行為の意識調査分析を各種学校の学生を通して実施し、比較検討した。また、本学卒業生で高齢者施設で勤務する者を対象に意識調査を実施した。
そして、様々な教育実践を試行しながら、ケーススタデイを中心とした質的調査も同時並行で進捗させた。
そして2年目に、本研究の最大の成果物である『虐待防止教育ハンドブック』を作成することができた。また本学の介護福祉士養成カリュラムの中で『介護福祉特論』という虐待に関連する科目を開発もした。
『教育による虐待防止』という提言・課題検証を実証できたと考えている。


地域社会での循環型福祉のモデル事業の調査・研究
〜長岡京市での「生活援助支援員」(ボランティア)の高度化と組織化による
モチベーション向上策と行政・介護施設との一体化の仕組みづくり〜
研究代表者立命館大学大学院経営管理研究科 三好 秀和

共同研究者立命館大学医療経営研究センター 澤田 泰子

■要旨
高齢者が主体となって相互扶助の理念のもと、安心して住みよい地域づくりを行うための方法として、介護施設での生活援助支援員(ボランティア)の高度化・有償化を提言する。ボランティア活動は高齢者にとって社会参加や自己実現の方法であり地域社会の活性化に寄与する活動である。また、介護施設は単に介護をおこなう場所ではなく高齢社会の地域拠点として支え合いの実践の場であり地域住民が介護への理解を深める拠点とすべきである。しかし現在は介護施設経営者のニーズと介護施設ボランティア活動の間にはミスマッチが存在する。介護施設で働くボランティアに高い志があったとしても無資格であるため業務が限定されること、さらには、ボランティア活動に継続性、組織性が脆弱なため介護経営に資するまでの労働力とはなりえない。この問題を解消すれば地域高齢者を支える介護施設となり、介護施設を中心に介護知識が住民に普及することで高齢者の老後の不安の一部は解消される。行政はボランティア団体を支援し高齢者の社会参加のすそ野を広げ、生活援助支援員の高度化・有償化に取り組むことが必要である。


B.健康の維持・増進関係
(1)2014年度1年助成
在宅復帰後の訪問リハビリテーションが高齢者の生活機能と
家族の介護負担に与える影響
−多施設共同研究−
研究代表者訪問看護リハビリステーションフィットケア 理学療法士 石垣 智也

共同研究者
東生駒病院 リハビリテーション科 竹村 真樹
訪問看護ステーションきづ川はろー 岸田 和也
吉栄会病院 リハビリテーション科 辰巳 博俊
南大阪病院 リハビリテーション科 山野 宏章
畿央大学 健康科学部 理学療法学科 松本 大輔

■要旨
回復期リハビリテーション病棟(回復期リハ)退院から継続して訪問リハビリテーション(訪問リハ)を利用する者を対象とした縦断的な多施設共同調査を行い、対象者教育などのリハ内容の差異が、心的要因や生活機能改善に及ぼす影響と、その諸要因間の相互関連性について検討を行った(n=41)。結果、日常生活活動(ADL)と応用的日常生活活動(応用的ADL)は調査前後で有意に改善した(p <0.01)。パス解析による相互関連性では、応用的ADLの改善に運動器疾患と訪問リハ開始時のADLが影響し、さらに応用的ADLの改善はADLの改善に影響した。また、認知障害の程度に影響を受けるものの、療法士が行う対象者教育がリハへの参加意欲の高さに作用し、ADLや応用的ADLの改善に影響することを明らかにした。生活機能の改善を得るためには、療法士が提供する機能や動作能力に対する直接的なリハだけでなく、対象者の能動的なリハ参加を促すことも重要であり、効果的な訪問リハの提供に繋がる知見を見出すことができた。


独居認知症高齢者の睡眠状況改善に向けた
ナイトケア実施の効果に関する研究
研究代表者京都女子大学 家政学部 中村 亜紀

共同研究者京都保健会 総合ケアステーション太秦安井 大倉 雅子

■要旨
在宅認知症高齢者には、深夜覚醒・離床など夜間睡眠の不良が多くみられ、夜間睡眠に影響を及ぼす因子として就寝環境の不良と就寝時刻の移動が挙げられた。認知症高齢者10人を対象に就寝準備・就寝場所への誘導を含むナイトケアを14日間行い睡眠改善を試みた。睡眠はマット型睡眠計を使用し21時〜6時までの測定を行った。就寝環境は長年の習慣によるものであり、また夜間排泄の問題に起因するものであり、就寝環境を改善させることは困難であった。しかし、ヘルパーによる就寝の促しは就寝時刻の移動を改善し、適正な時刻に入眠を開始させた。就寝時刻の前進があり、深夜覚醒し夜間活動を行う、昼夜逆転型に就寝の促しは有効であり、睡眠状況を改善させることが示唆された。時間の認知が適切であり、就寝時刻の移動がなく、日中活動を行うケースにおいては、毎夜の他者の訪問は精神的な負担感をもたらし、むしろ良好な睡眠を阻害する可能性が考えられた。


自立高齢者における嚥下障害・肺炎の新規発症と
咬合力との関連についての疫学研究
研究代表者奈良県立医科大学 医学部医学科 地域健康医学教室 岡本 希
■要旨
残存歯が減少すると、咀嚼能力が低下する。嚥下しやすい食塊の形成が困難になると、不顕性誤嚥が生じやすく、肺炎のリスクが上昇する可能性がある。この仮説を検証するために、地域在住の自立高齢者1723名を対象に3年間の前向きコホート研究を実施した。本研究の目的は、歯の本数と、嚥下障害および肺炎罹患との関連を検討することであった。3年後に嚥下障害ありと判定された者は238名(13.8%)であった。歯25−32本群に比べ、17−24本群および9−16本群では嚥下障害の割合が有意に高かったが、0−8本群との間に有意差はみられなかった。3年間で肺炎に罹患した者は54名(3.1%)であった。歯の本数と肺炎罹患との間に有意な関連はなかった。歯の本数と嚥下障害および肺炎罹患との間に有意な関連がみられなかった理由として、3年の追跡期間が短かった可能性がある。今後の研究として、より長期の追跡が必要と考える。



高齢者にも安全に行える「超スロー歩行トレーニング」の開発
研究代表者京都橘大学健康科学部理学療法学科 教授 村田 伸

共同研究者
京都橘大学健康科学部理学療法学科 准教授 甲斐 義浩
京都橘大学健康科学部理学療法学科 助教 安彦 鉄平
京都橘大学健康科学部理学療法学科 助手 岩瀬 弘明

■要旨
努力して出来るだけゆっくり歩く超スロー歩行は、通常歩行と比べて歩行速度、立脚時間、両脚支持時間、遊脚時間は有意に延長し、歩幅、ストライド長、ケイデンスは有意に減少した。また、超スロー歩行中の大腿直筋、大腿二頭筋、前脛骨筋、腓腹筋の活動が有意に増加した。さらに多変量解析の結果、高齢者の超スロー歩行時間に影響を及ぼす因子として抽出されたのは、男女ともに5m最速歩行時間、開眼片足立ち保持時間、30秒椅子立ち上がり回数であり、男性ではその3項目に加えて認知機能得点が抽出された。これらの知見から、超スロー歩行は、トレーニングとして活用することで、高齢者の下肢筋力や立位バランスを高め、さらには認知機能を高める可能性が示された。また、超スロー歩行トレーニングは、特殊な機器やスペースを必要とせず、簡便に行えることから、高齢者の介護予防対策としての活用が期待される。
キーワード:超スロー歩行、下肢筋力、立位バランス



高齢脳卒中患者におけるサルコペニアと身体活動量に関する研究
研究代表者甲南女子大学 助教 野添 匡史

共同研究者
甲南女子大学 教授 間瀬 教史
甲南女子大学 講師 高嶋 幸恵
伊丹恒生脳神経外科病院 理学療法士 金居 督之
伊丹恒生脳神経外科病院 理学療法士 久保 宏紀
伊丹恒生脳神経外科病院 理学療法士 北村 友花

■要旨
本研究の目的は、亜急性期脳卒中患者における大腿四頭筋筋厚と身体活動量との関係について、高齢患者と壮年患者で比較・検討することである。回復期リハビリテーション病棟入院中の脳卒中患者30例に対し、活動量計を用いて歩数を、超音波画像診断装置を用いて大腿四頭筋筋厚を測定した。得られた結果を、壮年者群と高齢者群に分けて比較し、各指標との関係性について検討した。その結果、壮年者群と高齢者群で大腿四頭筋筋厚、身体活動量に有意な差はなかった。大腿四頭筋筋厚と各指標との関係について、壮年者群においては大腿四頭筋筋厚は麻痺側、非麻痺側ともに身体活動量や身体機能、神経症状と相関が認められた。一方、高齢者群では身体活動量とは相関は認められず、麻痺側についてはBMIと、非麻痺側については身体機能とのみ有意な相関が認められた。本研究結果より、脳卒中患者における大腿四頭筋筋厚は、壮年患者と高齢患者で影響を受ける因子が異なる可能性が示唆された。



静脈血栓塞栓症予防に対する新たな理学的手法の開発
研究代表者兵庫医療大学リハビリテーション学部 講師 宮本 俊朗

共同研究者
兵庫医療大学 リハビリテーション学部 関山 貴士
兵庫医療大学 リハビリテーション学部 柳本 秀耶
都大学大学院 人間・環境学研究科 教授 森谷 敏夫

■要旨
本研究の目的は、下腿に対する骨格筋電気刺激が組織の血流速度を増加させることが可能かどうかを明らかとし、骨格筋電気刺激の深部静脈血栓症予防の可能性を検証することである。対象は、健常成人男性10名(21.2±2.5歳、BMI;20.5±2.4)とした。すべての対象者は安静、10分間の足関節底・背屈運動、10分間の骨格筋電気刺激の3施行をランダムに実施した。プロトコル中、呼気ガス分析器、心電図を測定し、筋赤外線分光法による下腿組織の酸素動態を計測した。骨格筋電気刺激中において、安静時、足関節運動と比較して有意に酸素摂取量、心拍数が上昇した(p<0.05)。また、骨格筋電気刺激終了直後における総ヘモグロビン増加率は有意に高値を示した(p<0.05)。本研究結果より、骨格筋電気刺激は下腿組織の血流速度を有意に上昇させ、深部静脈血栓塞栓症を予防する可能性が示唆された。



発症後早期の脳卒中患者における身体不活動とその要因
研究代表者関西電力病院リハビリテーション部 理学療法士 松本 恵実

共同研究者
兵庫医療大学リハビリテーション学部 森 明子
関西電力病院脳神経外科 宮原 永治
関西電力病院神経内科 濱野 利明
関西電力病院リハビリテーション科 惠飛須 俊彦

■要旨
本研究は、早期脳卒中患者の身体不活動とその要因を明らかにすることを目的として実施した。
対象は、急性期病棟に入院した脳卒中患者12名である。採用基準は、初発の脳卒中で多発性でないこと、一側大脳半球の病変であることとし、再発や増悪がある者や、安静が必要な者は除外した。三軸加速度計(A-MES™;activity monitoring and evaluation system, Solid Brains)を用いて24時間の臥床総時間と、発症からの日数、リハビリテーション実施単位数、SIAS(Stroke Impairment Assessment Set)、FIM (Functional Independence Measure)を評価した。1日の臥床総時間は721.9±112.5分(1日の約50%)であった。FIM移乗の監視群は介助群や自立群に比べて臥床総時間が長かった。運動項目では中等度群が軽症群に比べ臥床総時間が長かったが、重症群と軽症群では差がなかった。
早期脳卒中患者は、FIMの改善のみでは臥床総時間が減少しないことが明らかとなった。移乗の監視群や運動項目の中等度群では、より積極的に臥床総時間の短縮を図ることが重要であると示唆された。


(2)2013年度2年助成
高齢者の健康を高める、実践知の集約
−健康長寿達成者の生活から健康長寿の方略を学ぶ−
研究代表者大阪大学人間科学研究科 権藤 恭之

共同研究者
大阪大学人間科学研究科 安元 佐織
大阪大学人間科学研究科 中川 威
大阪大学歯学研究科 池邊 一典
大阪大学医学系研究科 神出 計

研究協力者
大阪大学人間科学研究科 小園 麻里菜
■要旨
高齢期の健康長寿にかかわる要因はこれまでも多く報告されている。喫煙行動や食習慣、定期的な運動などはその代表的な例である。一方で、これらのエビデンスを自らの生活習慣に取り入れ、生活習慣を健康的なものに改善することが出来る人は少ない。それは、これまでの介入が食事制限のように、ネガティブアウトカム(病気)を低減させるための行動を抑制するアプローチだったからではないだろうか。今後ますます増加する高齢者の健康維持を考えると、より実現性の高い介入法が求められるだろう。そこでポジティブアウトカム(健康長寿)を目標とし、健康行動を促進するアプローチが必要になると考える。そこで、本研究では、実際に収集した百寿者の行動の特徴や心理的な状態に関する知見を利用して、健康行動を促進する啓発資料を作成することを試みた。実査では大規模調査で行動特徴を抽出し、詳細なインタビュー調査によって心理的状態を探索し要約した。これらの結果に基づき、一般向けのパンフレットを2つ作成した。


高齢者の生活機能低下を引き起こす
形態的・機能的サルコペニア因子の解明
研究代表者神戸学院大学総合リハビリテーション学部 助教 福元 喜啓
■要旨
サルコペニア(加齢による筋量減少,筋力・運動能力の低下)は,高齢者の転倒や総死亡リスクの要因のひとつとして注目されている。本研究では,サルコペニアの形態的因子(筋厚,筋内非収縮組織量)および機能的因子(筋力,筋力発揮速度,筋力発揮安定性)を測定し,研究1では運動能力との関連を調べ,研究2では1年後の生活機能低下に及ぼす影響を調べた。研究1では,地域在住高齢者120名を対象とした。結果,5回立ち坐りテスト(5CS)には,筋厚,筋力,筋力発揮速度が関連していたが,Timed Up and Go test(TUG)と歩行速度に関連していたのは筋力のみであった。研究2では,高齢者27名を対象とし,1年間の老研式活動能力指標の低下と転倒の有無により,生活機能低下群と維持群に群分けした。結果,生活機能低下には,5CSとTUGが影響していたが,サルコペニア因子はどの指標も関連していなかった。このことから,サルコペニア指標は部分的に運動能力に関連する因子となるものの,生活機能低下を予測するためには,サルコペニア指標よりも運動能力のほうが精度が高い可能性が示された。



高齢者の運動介入による骨代謝改善効果とmyostatinの役割
研究代表者大阪市立大学大学院医学研究科 運動環境生理学 横山 久代

共同研究者
大阪市立大学大学院医学研究科 運動環境生理学 岡﨑和伸
大阪市立大学大学院医学研究科 運動環境生理学 今井大喜
大阪市立大学大学院医学研究科 運動環境生理学 鈴木明菜
大阪市立大学大学院医学研究科 運動環境生理学 竹田良祐
大阪市立大学大学院医学研究科 運動環境生理学 山科吉弘
大阪市立大学大学院医学研究科 運動環境生理学 Nooshin Naghavi
大阪市立大学大学院医学研究科 運動環境生理学 宮側敏明

■要旨
身体活動レベルの低い高齢者において、運動療法が血中Myostatin(Mst)濃度に及ぼす影響と、筋量・筋力、骨代謝の変化との関連について検討した。運動群の対象13名(男性2名、女性11名、72.2±4.3(SD)歳)に対し、1回1時間、週1回の運動プログラムを12週間にわたり実施した。非運動群の対象7名(男性2名、女性5名、70.6±3.8歳)については平素と身体活動量を変化させずに観察した。運動群で介入後に骨吸収が抑制されたが、骨塩量は両群で変化しなかった。血清Mst濃度は運動群においてのみ介入後増加した(前:41.9±16.4 ng/ml、後:45.5±17.0 ng/ml、p = 0.016)が、介入×群の交互作用を認めなかった。最大一歩幅は運動群でのみ改善し、下肢筋量、筋力は両群で変化を認めなかった。短期間の運動療法は高齢者の骨吸収を抑制したが、Mstの関与は明らかではなかった。


C.分野横断的課題関係
(1)2014年度1年助成
終末期がん患者とその家族への在宅療養における支援内容とその評価
〜最期を病院で看取った遺族のインタビューから〜
研究代表者大阪府立大学大学院看護学研究科 准教授 岡本 双美子

共同研究者
近畿大学医学部附属病院 在宅看護専門看護師 河野 政子
大阪労災病院 緩和ケア認定看護師 松延 さゆり
ベルランド総合病院 緩和ケア認定看護師 石川 奈名
ロイヤル訪問看護ステーション 管理者  上原 美智代
和泉市立病院 看護部長 川口 いずみ
大坪医院 看護師 大坪 よし子
梅田クリニック 院長 梅田 信一郎

■要旨
本研究の目的は、終末期を在宅で過ごし、最期を病院で迎えた終末期がん患者とその家族が在宅療養時に受けた支援内容とその評価を明らかにすることである。研究方法は、質的記述的研究法とし、半構成的質問紙による面接調査とした。研究協力者は、在宅で終末期を過ごし、最期を病院で迎えた終末期がん患者の家族10名であった。
在宅療養における支援内容とその評価として抽出されたカテゴリーは【定期的な訪問とアドバイスが良かった】と【在宅の専門家による24時間体制で安心だった】、【在宅介護への支援が助かった】、【在宅看取り以外の選択肢をもつことができた】、そして、【不十分なケアに戸惑った】の5カテゴリーであった。病院で最期を迎えた終末期がん患者の在宅療養期間が短く、家族の身体的な負担が見られなかったこと、支援内容が意思決定支援にまで至らず情報提供に留まっていたことから、在宅療養早期から患者の希望や気持ちについて患者と家族で確認したり話し合うことができるよう支援していくことが重要であることが示された。


D.福祉現場の創意工夫関係
(1)2014年度1年助成

介護認定審査会における緊急ケースの把握と市町村の責任意識
研究代表者大阪人間科学大学 人間科学部社会福祉学科 准教授 秦 康宏
■要旨
平成11年から介護認定審査会は開始されている。審査事例の中には、緊急性が高いと思われる事例が、一定の割合で存在する。高齢者福祉の立場では、審査・判定のプロセスだけでなく、今、実際に緊急の支援を必要としている人が把握されているかどうかが大切である。全国1,896市町村および区を対象として、郵送調査を行った。有効回答数550 回収率32%。
結果として、以下のことが明らかになった。1) 緊急性の高いケースがある場合、市町村介護認定審査会事務局は地域包括支援センターや居宅介護支援事業所につながっているかどうかを確認するという連携意識があり、実際に行っていた。2) 介護認定審査会は、緊急ケースを把握するような機関ではないという意見があった。3) 既にサポート体制が整っており、ハイリスク事例は、申請や訪問調査の段階から一貫的に把握されるシステムが機能している市町村が複数あった。結論として、①緊急性・援助性の高い事例に対する高齢者福祉トレアージの実施②緊急性の高い事例に対する介護保険事務局から高齢者福祉行政や地域包括支援センターまたは居宅介護支援事業所への連絡義務化③緊急性の高い事例に対する要介護認定の迅速化を提言する。



標準化された機能訓練により誤嚥性肺炎の減少を目指す実践研究
研究代表者奈良県立医科大学医学部 健康政策医学講座 講師 野田 龍也

共同研究者
奈良県立医科大学 今村 知明
畿央大学 高取 克彦

■要旨
我が国の死因の第三位を肺炎が占め、その多くが誤嚥性肺炎であることから、誤嚥性肺炎の予防は喫緊の課題である。本研究では、施設入所のハイリスク高齢者を対象に、奈良県健康長寿共同事業において開発された誤嚥予防体操を実施することにより、誤嚥性肺炎の罹患に関連すると思われる口腔・身体指標の変化を測定した。82名(介入群と対照群:各41名)を対象とした介入研究により、Timed Up and Goテストについて統計学的に有意な改善を認め、握力、筋肉量において一定の改善を認めたが、口唇閉鎖圧、パタカラテスト、反復唾液嚥下テスト、改訂水飲みテストについては改善を認めず、咳嗽力については統計学的に有意な悪化を認めた。測定上の誤差が強く推認される結果であり、また、本結果を健常高齢者に当てはめることはできないが、ハイリスク高齢者に対する誤嚥予防体操の実施には改善の余地があることが示唆された。
※記載年度は報告を行った年度です

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