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公益財団法人大阪ガスグループ福祉財団

助成事業調査・研究助成の過去助成状況


※記載年度は報告を行った年度です

2015年度「研究助成報告書」

Ⅰ.一般部門

A.福祉の向上関係
(1)2013年度1年助成
高齢者における抗精神病薬の院外処方実態に関する疫学研究
−調剤レセプトのビッグデータを活用して−
研究代表者京都大学大学院医学研究科 川上 浩司

共同研究者
京都大学大学院医学研究科 田中 司朗
京都大学大学院医学研究科 西山 知佳
京都大学大学院医学研究科 中根 早百合

■要旨
背景:ガイドラインでは抗精神病薬の単剤使用を推奨しているものの、日本では多剤大量投与が社会問題となっている。国は高齢精神疾患患者の地域医療への移行を進めているが、外来での抗精神病薬の処方実態は判っていない。
目的:地域で生活する高齢者に対する抗精神病薬の処方実態の現状を、大規模な調剤情報を用いて明らかにする。
方法:2006年から2012年に抗精神病薬を初回処方された65歳以上の外来患者を対象に記述疫学研究を実施した。抗精神病薬及び併用向精神薬の処方パターン及び処方量を評価した。
結果:51,459名が高齢患者であった。第二世代薬の単剤処方は2006年の64%から2012年には82%へ増加した一方、第一世代薬の単剤処方は29%から12%へ減少した。多剤処方は7%から6%へと微減であった。平均処方量は1.17から1.07 mg/dayへ減少した。
結論:外来高齢患者では多剤大量投与ではなかったことを明らかにした。


外国籍住民の集住地域における社会福祉サービスの
認知状況等に関する調査研究
−在日コリアン高齢者と日本人高齢者の比較を通して
研究代表者関西学院大学人間福祉学部 人間福祉実習助手 木下 麗子
■要旨
本研究の目的は外国籍住民の集住地域において、在日コリアン高齢者と日本人高齢者の社会福祉サービスの認知状況等を比較し、地域特性に応じた実践課題を明らかにすることである。
調査対象者は大阪市生野区A地域に在住する在日コリアン高齢者126名、日本人高齢者104名であり、分析の結果、以下が明らかになった。
1)「地域活動の参加度」「社会福祉サービスの認知状況」は、在日コリアン高齢者より日本人高齢者の方が全体的に高かった。
2)在日コリアン高齢者の「介護保険サービスの情報満足度」は「地域包括支援センターの認知度」「地域の集い場づくりの必要性」と関連していた。また「介護保険制度の利用不安」は「情報の直接的説明の必要性」と関連していた。
調査結果は、先行研究で指摘されている在日コリアン高齢者のサービス利用へのアクセス問題にも重なるものである。
今後の実践課題への具体的な取組みとしては、地域住民の文化的背景を活かした集い場づくりや集い場を活用した福祉アクセシビリティ向上への働きかけがあげられる。


(2)2012年度2年助成

認知症高齢者の一人暮らしを支えるケアコーディネーション
研究代表者大阪府立大学 地域保健学域 看護学類 准教授 松下 由美子
■要旨
本研究の目的は、一人暮らし認知症高齢者にどのようなケアサービスが必要なのか?また、ケアサービスを調整する際どのような困難があるのか?ケアマネジャーの語りから示すことである。
データは、一人暮らし認知症高齢者に必要なケアサービス、及びケアサービスを調整する上で難しかった点についてケアマネジャー17名に語ってもらい、語られた内容の類似性、相違性を比較して統合した。
その結果、一人暮らし認知症高齢者に必要なケアサービスは、主に通所介護サービスおよび訪問介護サービスであった。また、ケアコーディネーションを図るうえでの困難は「一人暮らし認知症高齢者やその家族からの拒否」「緊急時に備えた有効策が見いだせない」ことであった。
これらの結果から、ケアマネジャーは一人暮らし認知症高齢者を「なるべく一人っきりの時間が長くなってしまわない」ことを意図してケアコーディネーションを行っていることが示された。


B.健康の維持・増進関係
(1)2013年度1年助成
ロコモティブシンドローム予防のための
運動器の機能向上に関する包括的大規模研究
研究代表者京都大学大学院医学研究科 人間健康科学系専攻 市橋 則明

共同研究者
京都大学大学院医学研究科 人間健康科学系専攻 坪山 直生
京都大学大学院医学研究科 人間健康科学系専攻 池添 冬芽

■要旨
本研究は地域在住高齢者のロコモティブシンドローム(ロコモ)と運動機能、姿勢・動作能力との関連性について明らかにすることを目的とした。
対象は地域在住高齢者279名(男性118名、女性161名、年齢71.0歳)とした。ロコモは質問紙(ロコモ25)を用いて調査した。運動機能について、下肢筋力は股屈曲・伸展・外転、膝伸展、足趾屈曲筋力、バランス機能は安静時重心動揺、片脚立位保持時間、姿勢アライメントは立位の胸椎・腰椎後彎角度、動作能力は通常・最大歩行速度、5回立ち座り時間、Timed Up & Go、30秒段差昇降回数を測定した。ロコモ25を目的変数、ロコモ25と有意な相関がみられた項目および年齢・性別を説明変数とした重回帰分析を行った。
重回帰分析の結果、ロコモ25に関連する因子として抽出されたのは重心動揺、片脚立位保持、腰椎後彎角度、段差昇降、性別であり、重心動揺、腰椎後弯が大きいこと、片脚保持時間、段差昇降回数が少ないこと、女性であることがロコモのリスクを高める因子であった。
本研究の結果、ロコモには下肢筋力よりもバランス機能が関連し、姿勢・動作能力のなかでは腰椎アライメントや段差昇降能力が関連していることが示唆された。



人工膝関節置換術後患者における歩行機能改善と身体活動量の関連
研究代表者 滋賀医科大学医学部附属病院リハビリテーション部 理学療法士 谷口 匡史

共同研究者
滋賀医科大学医学部附属病院リハビリテーション部 理学療法士 前川 昭次
滋賀医科大学医学部附属病院リハビリテーション科 医師 川崎 拓

■要旨
背景:本研究の目的は、人工膝関節置換術(TKA)後患者における歩行機能の改善に身体活動量が影響するかを検証すること、また、その身体活動量に影響を及ぼす因子について明らかにすることである。
方法:変形性膝関節症を原因疾患として初回TKAを施行した患者81名を解析対象とした。術前および術後6か月後における身体機能(歩行機能、疼痛、筋力、可動域、立ち上がり時間、荷重量)や生活空間の広がり、自己効力感、転倒経験を調査した。また、術後6か月間の身体活動量を計測した。術後歩行機能の改善や身体活動量に影響を及ぼす因子について重回帰分析を用いて検討した。
結果:術後歩行機能の改善には、術前歩行機能、身体活動量、立ち上がり時間の改善が影響していた。また、身体活動量には、歩行機能に加え、生活空間の広がりや自己効力感が影響していた。
結論:術後歩行機能の改善には身体活動量が寄与し、その向上には身体的・心理的要因が関連することが明らかとなった。



高齢者に残存する素早い反応動作を活かすための運動制御方略の解明
研究代表者大阪大学大学院医学系研究科 門田 浩二

共同研究者
大阪大学大学院医学系研究科 木村 大輔
大阪大学大学院医学系研究科 平松 佑一
大阪大学大学院医学系研究科 那須 大毅
大阪大学大学院医学系研究科 木下 博

■要旨
一旦実行した動作を、環境の変化に応じて修正する能力は,実環境下で安定した運動成果を生み出すために極めて重要である。一般的にこの修正能力は加齢に伴い低下するとされているが、近年の到達運動を対象とした研究では、動作中の反射的な修正動作が発現するまでの時間には加齢遅延がほとんど認められないことが明らかとなった。本研究ではこの加齢耐性の高い反射的な修正動作の正確性(空間的精度)を詳細に分析し、この修正動作が高齢者の正確な運動の生成にどの程度貢献しているかを検討した。その結果、若年者と高齢者の空間的精度には大きな差はなかった。他方、最終的な到達位置のばらつき(つまり到達運動の精度)には、従来研究通り加齢による増大が認められた。さらに若年者群では反射的な修正動作と最終到達位置の精度に有意な関係性が認められた一方で、高齢者群では認められなかった。つまり、反射的な修正動作は高齢者においても保持されている一方で、その後の随意的な運動制御が加齢により大きく低下する可能性がある。


高齢者向け施設における非医療職者と在宅医療職者間の心をつなぐ
在宅医療・介護情報共有システムの構築
研究代表者京都大学大学院医学研究科人間健康科学系専攻
教授 野本愼一、内海桃絵、田中 綾美

共同研究者京都高度技術研究所 澤田 砂織

■要旨
医療職の配置義務のない高齢者向けの施設では、療養者の日々の健康情報が在宅医療職種間で共有されていないため疾病による異常の早期発見が遅れ、医師の訪問により初めて入院加療が必要と判断される場合や、また逆に軽い症状でもすぐに救急車が要請される場合がある。
著者らが開発してきた在宅医療情報共有システムである「電子連絡ノート」をもとに、非医療職職員でも療養者の健康情報を日々発信でき、それを在宅医療チームといつでもどこでも共有できるシステムを構築した。一人の医師が関係する枚方市の5高齢者施設で実証実験を行った。
使用後調査で、施設により導入への積極性には差がみられるものの、本システムは些細なことを連絡する手段として、また医療職・介護職間の情報共有システムとして有用と評価された。
このようなシステムの必要度が在宅医療職と施設職員の間で一致すれば、本システムは在宅医療チームと施設職員との心をつなぐ情報共有システムとして有用であると考える。


糖代謝異常を有する高齢心不全患者に対する
低強度運動の血糖日内変動への影響
研究代表者京都大学大学院 医学研究科 趙 崇来

共同研究者
京都大学大学院 医学研究科  任 和子
京都大学医学部附属病院 循環器内科 小笹 寧子

■要旨
【目的】糖代謝異常を有する高齢心不全患者においても安全に実施可能な低強度運動が、食後高血糖などの血糖日内変動の糖代謝改善に有効かを検討する。
【方法】2型糖尿病orインスリン抵抗性を有する65歳以上の心不全患者8例をrandomized crossoverにて介入した。低強度運動はchair exercise(1.5〜2.0METs)で構成し、血糖評価項目は持続血糖測定器(Continuous Glucose Monitoring: CGM)にて測定した。
【結果】24時間平均血糖値control vs exercise(148±14 vs 149±14mg/dl; p=0.7)、180mg/dl超過時間(5h38min±2h38min vs 6h9min±2h36min; p=0.37)、MAGE(36.5±6.2 vs 35.4±7.5mg/dl; p=0.71)、各食後3時間AUC朝(71.8±14.7 vs 84.7±15.7 mg/dl・3h 102; p=0.29)、昼(37.0±12.1 vs 25.9±7 mg/dl・3h 102; p=0.52)、夕(65.1±17.4 vs 61.5±15.7 mg/dl・3h 102; p=0.71)といずれも低強度運動による有意なアウトカム改善は認めなかった。
【結論】本研究では、単回の低強度運動による血糖日内変動改善効果は示せなかった。今後、レジスタンス運動を組み合わせるなど内容、頻度、タイミングの点で再検討が必要である。



足底部への継続的温熱刺激が立位時の姿勢制御に与える影響の検討
研究代表者神戸学院大学総合リハビリテーション学部 助教 浅井 剛

共同研究者
神戸大学 安藤 啓司
神戸学院大学 小嶋 功
伊丹恒生病院 久保 宏紀

■要旨
足底からの感覚情報は立位時に唯一の接点から得られる情報であり、安定した姿勢制御において非常に重要であるが、外的環境に接することにより熱を奪われやすい。足底温度が低下すると静止バランス機能の低下が生じることはすでに報告されている。しかしながら温熱刺激を与えることによる静止立位バランスへの影響を検討した研究はない。本研究の目的は足底への温熱刺激が静止立位バランスに与える影響を検討することとした。対象は下肢疾患の既往のない健常若年成人11名であった。測定中に重心動揺計に静止することができなかった2名を除いた9名を分析対象とした(男性3名、女性6名、年齢20.3±0.5歳)。足底温度がそれぞれ32℃、36℃、40℃における静止立位バランス指標に対して反復測定一元配置分散分析を用いて条件間の違いを検討した。足底温度と静止立位バランス指標との間に有意な関連がみられた。対象者数が少ないため一般化はできないが、感覚低下の生じない温度における足底温度と静止立位バランスに関連がみられたことは、足底温度が静止立位バランスに関連する要因の一つである可能性を示したと思われる。


高齢者のメンタルヘルス、主に睡眠障害対策
―生活習慣改善の提案から薬理学的観点まで
研究代表者神戸大学大学院理学研究科 林 昌彦

共同研究者
神戸大学大学院理学研究科 松原 亮介
神戸大学大学院理学研究科 道上 恭佑

■要旨
日本は現在これまでに例を見ない高齢化社会を迎えている。高齢者ができるかぎり介護を必要としないで生活の質の確保は今後ますます重要な課題となる。私たち人間にとって「睡眠」は極めて重要な生活の一部である。質の良い睡眠がとれないと、身体や脳の疲れが取れないだけでなく、うつ病などの精神疾患にもつながり、最悪の場合自殺にまで至るケースもある。さらに、睡眠は、心身の疲れをとるだけでなく、記憶の固定・消去などにも関与しており高齢者にとっては痴呆との関連も問題となってくる。本研究では以下の二点から調査・研究を行った。
① 最近、メラトニンの分泌が夜の睡眠に影響を与えていることが明らかとなっている。さらに、夜、メラトニンを多く分泌するには日中日光を浴びることが必要なことも明らかとなっている。そこで、一つ目の目的は、高齢者の睡眠障害対策として、自然な睡眠がとれるような生活習慣の普及・啓蒙に努めることである。
② もう一つは化学者としての立場から従来のベンゾジアゼピンの「鎮静型」ではなく、メラトニンを基盤とする「自然な睡眠」に導く睡眠改善薬の開発に着手することである。


C.分野横断的課題関係
(1)2013年度1年助成
高齢者の住み替えの住まいにおける終末期居住を支援する
関係諸機関連携構築のための環境指針づくり
―近畿2府4県内のサービス付き高齢者向け住宅の事例から―
研究代表者高齢者住宅研究所 竹内 みちる

共同研究者
高齢者住宅研究所 井上 登紀子
高齢者住宅研究所 志垣 智子
高齢者住宅研究所 絹川 麻理

■要旨
本研究では、地域包括ケア推進下急増しているサービス付き高齢者向け住宅(以下、サ高住)近畿2府4県内92件へのアンケート調査(回答数55件)とアンケート調査で「看取り実績3例以上」と答えた12住宅への訪問調査・電話調査(22名分の看取り者データを取得)を通じて、終末期居住を支援する関係諸機関の連携をシステム化し、終末期支援のための環境指針を構築した。①サ高住、居宅介護支援、訪問介護(又は定期巡回・随時対応型訪問介護看護)、訪問診療実施の医療機関は全22名の者が使用しており、終末期支援活動実施者の中でも基幹的な役割を果たすと考えられる、②22名の逝去時の要介護度は平均4.28であり24時間365日対応の短時間の介護・夜間の支援をどのように行うかが重要である、③今後の方針(サ高住での看取りをするのか、緊急搬送はするのか、医療行為をどのように行うのか等)を本人・家族と終末期支援活動実施者がいかに相談し決定していくかが重要であることを指摘した。


地域高齢者に対する事前指示書作成に関する
視聴覚教材の開発と効果評価
研究代表者佛教大学 保健医療技術学部 看護学科 濱吉 美穂

共同研究者
佛教大学保健医療技術学部看護学科 後藤 小夜子
泉大津市社会福祉協議会 地域包括支援センター 曽我 智子
泉大津市社会福祉協議会 在宅支援室 村陰 嘉高

■要旨
地域高齢者に対する事前指示書作成啓発に関する視聴覚教材の開発と効果評価を目的とし、大阪府下A市の高齢者大学受講者77名に対し開発した視聴覚教材視聴前後の認識変化を自記式質問紙調査にて評価・分析した。その結果、視聴後は事前指示書作成意思の有りが52名(68.4%)、無しが24名(31.6%)と有意に作成意思有り者が増加した。(Odds ratio=1.95, 95% CI=1.00-3.79, p=0.04)。 事前指示書知識度尺度・態度尺度に関するDVD視聴前後の点数変化では、知識度尺度の視聴前平均点数は5.34(SD=2.3)、視聴後平均点数は5.84(SD=2.1)と有意に増加していた(p=0.008)。視聴前の態度尺度平均点数は6.88(SD=3.61)、視聴後は7.74(SD=3.5)と有意に増加した(p=0.006)。
以上の結果より、開発した事前指示書作成に関する視聴覚教材視聴による、作成意思、事前指示書の知識度、前向きな態度の向上効果が示唆された。


在宅介護スコアの再開発
−地域高齢者リハビリテーションへの有効活用−
研究代表者四條畷学園大学リハビリテーション学部 講師 松木 明好

共同研究者
四條畷学園大学リハビリテーション学部 教授 長野 聖
四條畷学園大学リハビリテーション学部 助教 田丸 佳希
ボバース記念病院 理学療法士 吉岡 奈美
馬場記念病院 理学療法士 谷 恵介
阪奈中央病院 理学療法士 澳 昂佑

■要旨
本研究の目的は、①1990年代初頭に開発された在宅介護スコア(Home care score:HCS)を用いた在宅介護可否予測におけるカットオフ値、予測精度が変化していないか、②FIMを予測のための説明変数とするより精度が高いか、③回復期リハビリテーション(リハ)介入によってHCSは向上するか、④入院時HCSを用いて精度よく退院時の在宅介護の可否を予測できるかを検討することであった。その結果、HCS開発後に介護保険制度が導入され、核家族化、老老介護比率の向上など、在宅介護の状況が変化しているにも関わらず、カットオフ値、予測精度は高いままであり、FIMを用いた場合より予測精度は高いことが分かった。また、回復期リハ介入によりHCS総合点は向上するが、介護提供者関連項目は向上しないこと、入院時HCSで退院時の在宅介護の可否を高精度に予測可能であるが、退院時HCSを用いた方が予測精度が高いことが分かった。以上より、FIMだけでは評価できない在宅介護力を評価し、回復期リハ病院入院時から高い精度で在宅介護の可否を予測できるHCSは、地域包括ケアを推進する上でも有用なスコアであると考えられた。



家族性アルツハイマー病の医療環境の改善に関する調査研究
研究代表者大阪市立大学医学部 森 啓

共同研究者
大阪市立大学医学部 嶋田 裕之
大阪市立弘済院附属病院 中西 亜紀

■要旨
全国の認知症の人と家族の会および関連組織と認知症医療者からのアンケートを基に、家族性認知症の患者、家族の医療環境の改善を目的に実態を分析した。その結果、正確な診断という医療の課題以外に、医療費介護保険サービス、未成年の子供の教育費、住宅ローン等の経済的な問題が課題となっていることが判明した。より充実した情報発信や病気の進行を止める根治薬への期待が大きく、新薬の迅速な開発と日本への速やかな導入が望まれている。


(1)2012年度2年助成
重度要介護高齢者に対するポジショニングケアの効果
−利用者と支援者の観点からの実践的研究−
研究代表者関西福祉科学大学 保健医療学部 リハビリテーション学科 中俣 恵美

共同研究者
関西福祉科学大学 保健医療学部 リハビリテーション学科 岡本 加奈子
関西福祉科学大学 保健医療学部 リハビリテーション学科 横井 賀津志

■要旨
高齢化や認知症高齢者の増加に伴い、施設や在宅における要介護高齢者の重度化が目立つ。本研究では重度化への課題として終末期において生活の大半を占める静的姿勢に着目した。今回の研究では、支援者に対しポジショニングに関するアンケート調査を行い、現状と課題の把握をおこなった。また筋硬度や自律神経活動等の評価を導入することで、介入効果の客観的評価指標を検討することも課題とした。
研究結果より、対象者のニーズに即した有効なポジショニングケアの継続的・安定的実践には、課題があることが示唆された。これはチームとしての技術力・知識に差があることが原因と考えられた。また心拍ゆらぎ計による測定結果よりポジショニング介入により副交感神経の活動が優位な値を示した。適切なポジショニングはリラクゼーション効果を得るための有効な手段であり、その指標として副交感神経活動量、筋硬度を使用できる可能性が示唆された。
※記載年度は報告を行った年度です

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