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公益財団法人大阪ガスグループ福祉財団

助成事業調査・研究助成の過去助成状況


※記載年度は報告を行った年度です

2020年度「研究助成報告書」

Ⅰ.一般部門

A.福祉の向上関係
(1)2018年度1年助成
高齢者の社会参加を促す演劇ワークショッププログラムの開発と
効果測定およびマニュアル化
研究代表者京都大学経営管理大学院 研究員 蓮 行

共同研究者
大阪大学大学院 人間科学研究科 藤川 信夫
名古屋大学大学院 医学系研究科 岡崎 研太郎
国連大学 堀 啓子
グループホームむつみ庵/浄土宗應典院 沖田 都

■要旨
本研究では、京都府内のデイサービスセンターを利用する高齢者を対象とした演劇ワークショップを普段のレクリエーションとして導入することによる効果を参与観察とインタビュー調査により明らかにした。ビデオ撮影による映像資料、講師からのフィードバックを元に行ったエスノメトリー法による分析と、ワークショップ参加者と施設職員へのインタビューを元に行った修正版グラウンデッド・セオリー・アプローチによる分析によって参加高齢者の意識変容・態度変容を把握した。
演劇ワークショップを体験することで、参加高齢者のWell-being感情が向上することが明らかになった。また、施設職員へのインタビューから普段の利用者の様子とは違う一面が見られるなど、職員の職場体験の向上にも寄与していることが示唆された。


(2)2017年度2年助成
難聴者の社会リハビリテーションに関する研究
研究代表者京都府立大学大学院 柴田 浩志

共同研究者
京都府立大学教授 上掛 利博
京都府難聴者協会 会長 滝野 千里
京都府難聴者協会 前会長 山口 武彦

■要旨
本調査研究は、高齢者・難聴者のリハビリテーションを充実するため、①支援に関わる団体・事業所の現状と課題の分析、②先駆的な支援内容の収集と分析、③高齢者福祉、障害者福祉における連携や事業体制のあり方に関する検討と提言、の3点を目的に実施した。目的を達成するため、聴覚障害の当事者団体や施設を対象に「難聴者を対象とした支援に関するアンケート調査」を実施し、159の施設・団体から回答を得て、分析を行った。そして、先駆的な支援を行っている施設・団体を5か所抽出し訪問調査を行った。これらの調査結果から、①身体障害者手帳に該当しない人も含めて聞こえに不自由を感じている人、全てを対象に「聞こえの相談」を市町村レベルで開催すること、②希望者を対象に、手話・読話等のコミュニケーション手段の習得、補聴機器の学習、仲間との交流などのプログラムを県レベルで実施すること等を提言した。


B.健康の維持・増進関係
(1)2018年度1年助成
高齢者骨粗鬆症患者におけるサルコペニアの有病率とその治療法の確立
―筋・骨連関の解明―
研究代表者
国立病院機構京都医療センター 臨床研究センター 臨床内分泌代謝研究室長 日下部 徹

共同研究者
国立病院機構京都医療センター 臨床研究センター 浅原 哲子

■要旨
筋肉と骨は、相互に連関している(筋・骨連関)。本研究では、国立病院機構京都医療センターの骨粗鬆症・サルコペニア外来に通院している未治療骨粗鬆症患者109名(男性22名、女性87名)を対象に、サルコペニア有病率とその臨床的特徴、さらに骨粗鬆症に対する治療介入が骨格筋に及ぼす影響を検討した。対象者におけるサルコペニア有病率は、男性1例(4.5%)、女性17例(19.5%)であり、プレサルコペニア(骨格筋量減少のみ)は、男性8例(36.3%)、女性25例(28.7%)に認められた。これらは、地域在住高齢者で報告されているよりも高率であった。現在、骨粗鬆症患者におけるサルコペニアの臨床的特徴を解析中である。本研究により、骨粗鬆症患者では、サルコペニアを合併しやすいことが示された。また、若干例での解析ではあるが、1年間の骨粗鬆症治療介入により、骨密度の増加とともに骨格筋量の増加する症例があった。引き続きの検討が必要である。


ロコチェックは高齢者の転倒を予期できる
スクリーニングツールになりうるか?
研究代表者奈良県立医科大学 整形外科 講師 重松 英樹

共同研究者
わだ整形外科クリニック 和田 誠
宮田医院 宮田 重樹
木佐貫整形外科 木佐貫 修
たつみ整形外科形成外科クリニック 辰巳 英章
西森整形外科医院 西森 清之
奈良県立医科大学整形外科 田中 誠人
奈良県立医科大学整形外科 川崎 佐智子
奈良県立医科大学整形外科 須賀 佑磨
奈良県立医科大学整形外科 山本 雄介
奈良県立医科大学整形外科 田中 康仁

■要旨
ロコモティブシンドローム(ロコモ)は下肢の運動機能が低下した状態を指す。ロコチェックは7項目から構成され、ロコモに該当するかどうか簡易に判定できる。高齢者の転倒は骨折につながり、骨折をきっかけに介護が必要になることがある。超高齢社会の日本において転倒を防止することは健康寿命の延伸につながり、将来的な要介護の高齢者を減らすことができるかもしれない。本研究の目的は7項目からなるロコチェックの評価が1年以内に少なくとも1回転倒する可能性が高い対象者を予期できるかどうかを前向きに検討することである。


高齢者転倒リスクを評価するための歩行変動性の量的・質的評価
研究代表者
京都大学大学院 医学研究科 人間健康科学系専攻 研究員 山縣 桃子

共同研究者
京都大学大学院 医学研究科 人間健康科学系専攻 建内 宏重

■要旨
歩行時に各セグメントでみられる変動は、身体重心(COM)の安定性に寄与する“良い変動”と安定性を害するような“悪い変動”とに区分される。本研究では、COMを安定させるためのセグメント変動と転倒リスクとの関連を調査した。過去1年間の転倒歴を聴取し、転倒群12名(平均77.4 ± 2.6歳)、非転倒群16名(平均75.5 ± 5.5歳)に分類した。6m歩行路を快適スピードで20回歩行し、その際の運動学データから単脚期の左右・鉛直方向の良い変動(VUCM)と悪い変動(VORT)をそれぞれ算出した。単脚期は前期・中期・後期に区分し、それぞれの変数に対して2要因(群間・時期)分割プロット分散分析を行った。左右方向については群間の差はなかったが、鉛直方向のVORTは転倒群で有意に高い値となり、過去に転倒歴のある高齢者は歩行中に鉛直方向のCOMを不安定にするようなセグメント変動が大きいことが明らかになった。


高齢者身体疾患患者に認められる認知機能障害の把握のための
アセスメントツールの開発
研究代表者
京都大学大学院医学研究科人間健康科学系専攻 助教 小川 真寛

共同研究者
京都大学大学院 医学研究科 人間健康科学系専攻 准教授 谷向 仁
京都大学大学院 医学研究科 人間健康科学系専攻 大学院生 小橋 美月
京都大学大学院 医学研究科 人間健康科学系専攻 大学院生 内海 絢女

■要旨
近年、加齢に伴って生じやすい慢性閉塞性肺疾患(COPD)、慢性心不全、がん等の身体的疾患に続発する認知機能障害に関する報告が増えており、前頭葉機能を中心とした認知障害を示すとされている。本研究は高齢COPDを対象にタッチパネル式PCを用いて、特有の認知機能障害の評価が可能かどうかの初期的検証を目的とした。
高齢COPD患者29名(平均年齢76.6±5.9歳)及び健常高齢者62名(平均年齢76.1±6.3歳)を対象に、タッチパネル式PCを用いて認知機能を評価し比較した。さらに2群間の認知機能には交互作用が認められ、2群の認知機能の特徴の違いが示された。群間比較の結果、ワーキングメモリ、計画力、注意力がCOPD患者において有意に低かった。本研究の結果から、高齢COPD患者は健常高齢者に比べて前頭葉に関連する機能が低下する傾向が認められた。この結果から簡便に施行可能なタッチパネル式PCはCOPD患者等の認知機能スクリーニング検査としての活用可能性が示唆された。


地域在住脳卒中患者に対する多職種介入による遠隔診療を用いた
再発予防プログラムの効果検証
研究代表者
神戸大学大学院 保健学研究科 保健学研究員 金居 督之

共同研究者
神戸大学大学院 保健学研究科 井澤 和大
伊丹恒生脳神経外科病院 島田 真一

■要旨
【目的】
本研究の目的は、地域在住脳卒中患者に対する多職種介入による遠隔診療を用いた再発予防プログラムの効果について検証することである。
【方法】
本研究の対象は、歩行が自立している地域在住脳卒中患者であった。対象者は、月に1回の頻度で、看護師、理学療法士によるメールや電話を利用した遠隔診療を受けた。指導内容は、生活習慣是正に向けた指導、教材資料の提示などであった。プログラム実施前後の血圧、生活習慣因子、身体機能、脳卒中再発リスクなどのアウトカムを比較した。
【結果】
最終解析対象は8名であった(60.5歳、男性8名)。生活習慣因子の内、肥満と喫煙は、指導後に保有率が低下していた。また、血圧、身体機能については、指導前後で数値の変動は少なかった。一方、身体活動量は、指導後に増加する傾向にみられた。脳卒中再発リスクは、指導後に微減した(10.6%→9.0%)。
【結論】
地域在住脳卒中患者に対する多職種介入による遠隔診療を用いた再発予防プログラムは生活習慣因子の是正に寄与し、一定の再発予防効果が得られる可能性が示唆された。


(2)2017年度2年助成
脳卒中患者の廃用性筋萎縮を防ぐには
どれだけの身体活動量が必要か
研究代表者関西電力医学研究所 松本 恵実

共同研究者
関西電力医学研究所 惠飛須 俊彦
関西電力医学研究所 濱野 利明
関西電力病院 脳神経外科 宮原 永治
関西電力病院 リハビリテーション科 垣田 真里
関西電力医学研究所 山本 洋司
関西電力医学研究所 真壁 昇

■要旨
本研究は、発症後早期の脳卒中患者において廃用性筋萎縮を予防するために必要な身体活動量を明らかにすることを目的に立案・実施した。
対象は、急性期病棟に入院した脳卒中患者20名。採用基準は、初発の脳卒中で多発性でないこと、一側大脳半球の病変であることとし、再発や増悪がある者、安静が必要な者は除外した。三軸加速度計で24時間の身体活動量を、超音波画像診断装置で大腿直筋と外側広筋の筋厚を測定した。
発症後1週間経過時の1日の臥床時間は877.1±266.7分、立位・歩行は125.4±122.7分であり、身体活動量は低値であった。また、発症後1週間経過時に筋厚の減少を認める「萎縮あり群」では1日の立位・歩行が78±75分であったが、筋厚の減少を認めない「筋萎縮なし群」の立位・歩行は183±148分であり、「筋萎縮あり群」で立位・歩行時間が有意に短かった。このことから1日の立位・歩行が78±75分では、廃用性筋萎縮を予防するに不足していることが示唆された。


地域高齢者の口腔機能と低栄養および認知機能障害に
関する縦断的研究
研究代表者兵庫教育大学 人間発達教育専攻 岡本 希
■要旨
【緒言】
本研究の目的は、地域在住高齢者を対象に歯の本数(口腔機能の指標)と血清アルブミン(低栄養の指標)を用いて、認知機能と口腔機能と低栄養との関連について検証することであった。
【方法】
2012年をベースラインとして地域在住の高齢者を対象にした疫学調査を実施した。2012年−2017年の5年間の縦断研究の対象者675名と凍結保存血液の歯周病原細菌血清抗体価測定の対象者124名をデータ解析の対象者とした。
【結果】
5年間の縦断研究において、MMSE23点以下と歯の本数との間に有意な関連はみられなかった。MMSE24点以上の78名とMMSE23点以下の46名の横断研究では、MMSE24点以上群の歯の本数の平均値(標準偏差)は18.7(10.2)本で、MMSE23点以下群の13.9(10.0)本に比べ有意に多かった。この横断研究で認知機能検査MMSEと有意な相関がみられたのは歯の本数であった(Pearsonの相関係数0.236、P<0.01)。歯の本数と有意な相関がみられたものは、年齢、MMSE、高感度CRP、血清アルブミンであった。
【結論】
MMSE23点以下と歯の本数は関連があると考える。歯周病の進行の結果、歯の本数が少なくなり、多数歯欠損と栄養摂取不足が認知機能低下に関与していることが考えられる。


地域在住高齢者におけるバランスパッドを用いた立位足底知覚
トレーニングによる体性感覚および頭頂連合野の活性化の
立位姿勢安定性への寄与
研究代表者滋賀医科大学大学院 医学系研究科博士課程(大学院生) 松野 悟之

共同研究者
国立精神・神経医療研究センター精神保健研究所 睡眠・覚醒障害研究部 室長 吉池 卓也
滋賀医科大学 精神医学講座 講師 吉村 篤
滋賀医科大学附属病院 腫瘍センター 特任講師 森田 幸代
上野病院 精神科 診療部長 藤井 勇佑
滋賀医科大学 精神医学講座 教授 尾関 祐二
昭和大学 生理学講座 生体調節機能学部門 講師 本間 元康
国立精神・神経医療研究センター精神保健研究所 睡眠・覚醒障害研究部 部長 栗山 健一

■要旨
ヒトの足底体性感覚機能の強化を目的とした立位足底知覚トレーニング(standing plantar perception training: 以下SPPT)により、立位姿勢制御能力の向上が認められているが、これに関わるSPPT施行中の脳活動は明らかにされていない。本研究は、バランスパッドを用いたSPPT施行中の脳活動を計測し、SPPTによる立位姿勢制御改善効果に関連する脳活動を検討することを主な目的とした。対象は地域在住高齢者32名とし、立位バランス能力は、SPPT前後で重心動揺計を用いて測定した。SPPT施行中の脳活動を評価するために、近赤外分光装置を使用した。
SPPTにより高齢者の立位姿勢制御能力が有意に改善した。立位バランス能力向上に独立して関連する要因として、右頭頂連合野の活性化が認められた。これらの結果から、SPPT施行中の右頭頂連合野の活性化が高齢者の立位姿勢制御能力の改善に重要な役割を果たす可能性が示唆された。


C.分野横断的課題関係
(1)2018年度1年助成
地域包括支援センターにおける支援困難事例に早期発見・介入
するためのアセスメント方法の開発
研究代表者大阪市立大学大学院 看護学研究科 在宅看護学領域・教授 河野 あゆみ

共同研究者
国立保健医療科学院 上席主任研究官 吉岡 京子

■要旨
本研究の目的は、地域包括支援センターにおける支援困難事例を早期に発見・介入するためのアセスメント方法を開発することである。2019年10月に、近畿圏内の936箇所の地域包括支援センターのセンター長を対象とした無記名自記式郵送調査を行った。調査項目は①回答者の属性、②支援困難事例と支援容易事例の属性、③具体的な支援内容、④アセスメント項目である。アセスメント項目は分布を確認後、支援困難か否かを従属変数とするロジスティック回帰分析を行った。なお、調整変数として通算経験年数を同時に投入した。
232人から回答を得た(有効回答率24.8%)。支援困難と有意に関連していたアセスメント項目は、「本人が支援・サービス利用を拒否している」、「キーパーソンとなる家族がいない」、「家族間で意見が食い違い、調整が難しい」、「既存の制度・サービスでは本人の課題に対応できない」の4項目であった。
本結果から、支援困難事例への支援を行う際には、本人と家族に関する課題および支援者側の課題をバランスよくアセスメントする必要性が示唆された。


D.福祉現場の創意工夫関係
(1)2017年度2年助成
介護老人福祉施設利用者とその関係者の
言動が介護労働者個人に与える影響
研究代表者立命館大学 先端総合学術研究科 一貫制博士課程 久乗 エミ
■要旨
【目的】
介護老人福祉施設利用者とその関係者の言動が、介護労働者個人へ与える影響を明らかにする。
【方法】
近畿圏にある介護老人福祉施設から10施設を無作為し、所属する介護労働者を対象に、質問紙調査を郵送法にて実施した。
【結果】
分析対象者は61名(回収率12.4%)であった。介護労働者の65.4%がハラスメントを受け、その反応として【常態化】【諦め】【期待】【回避】があった。さらに介護労働者の23.5%は、利用者から虐待を受けていた。
【考察】
感情労働を提供する介護労働者が、ハラスメントを個人の問題として捉えてやすいことが推察される。
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