
助成事業調査・研究助成の過去助成状況
2010年度「研究助成報告書」
I.一般部門
A.福祉の向上関係
(1)H20年度1年助成
在日コリアン高齢者の暮らしの特性と意義に関する研究
−ヒト・コト・モノを活用した「日本型」高齢者福祉環境の構築に向けた研究−

大阪市立大学 都市研究プラザ 黒木宏一

大阪市立大学 工学研究科 横山俊祐
■要旨
本研究は、様々な地域資源やコミュニティが顕在している大阪市生野区における在日コリアン高齢者の地域生活やそれらを支える福祉サービスに焦点をあて、より高齢者が主体的・自律的に生活している実態と、その要因を明らかにし、今後の高齢者福祉の方向性を検討することを目的とする。以下に、本研究の成果をまとめる。
(1) 在日コリアン高齢者は、近居の家族の密接な支援の元に、自立した暮らしを実現させている。
(2) 地域生活は、地域に散在する公園や銭湯、スーパー、喫茶店、病院といった地域資源を主体的に活用するとともに、地域資源の利用することによって多様な質・内容のコミュニティを形成し、高齢者相互の支援を生み出している。
(3) 地域資源や、利用高齢者の居住地に近接する形でデイサービスが立地している場合、利用高齢者の自律した暮らしを促進させる作用をもたらす。
(4) デイサービスにおける空間の作られ方や活動提供のあり方によって、高齢者の過ごし方に大きな影響を与えている。
「限界集落」居住高齢者のケア・ニーズと支援方策に関する調査研究

甲南女子大学看護リハビリテーション学部 松浦尊麿

甲南女子大学看護リハビリテーション学部 上村聡子
甲南女子大学看護リハビリテーション学部 藤永新子
甲南女子大学看護リハビリテーション学部 間瀬教史
甲南女子大学看護リハビリテーション学部 鈴木順一
甲南女子大学看護リハビリテーション学部 高嶋幸恵
甲南女子大学看護リハビリテーション学部 永田昌美
甲南女子大学看護リハビリテーション学部 松谷綾子
■要旨
目的:本研究は、高齢者が人口の半数を超え、集落機能が低下しつつある地域に居住する高齢者のケア・ニーズを探る目的で行った。
方法:瀬戸内海の小島にあるO集落に居住する65歳以上の高齢者を対象とした聞き取り調査を行い、前年度の健康・生活調査結果との関連をみた。また、兵庫県下の地域包括支援センタ−を対象としたアンケート調査を行い、限界集落を圏域に有する地域包括支援センターからみた当該地域居住高齢者の医療・介護サービス受給状況やその問題点などを探った。
結果:(1) O地区高齢者の調査の結果は、前年度に測定した身体機能のうち階段昇降や歩行機能が低い高齢者に1年間での健康感の悪化がみられ、前年度に抑うつ傾向がみられた高齢者に1年後の自覚的健康感の悪化や新たな入院経験などがみられた。また、「つらいこと」の数に関連する因子として「農業に従事している」「必要な時に食事を用意してくれる人がいない」「健康感の悪化」「1年間の新たな通院経験」「会話の聞こえる状態の悪化」がみられた。
(2) 兵庫県下の地域包括支援センタ−を対象とした調査からは、「限界集落」に居住する高齢者は、訪問系のサービスの利用が困難な状況にあること、介護関連情報の提供が乏しい状況にあることが窺われた。また、高齢化により当該地域内での共助力が著しく低下していることを危惧する意見が寄せられた。
結論:「限界集落」居住高齢者に対しては、様々な情報の提供、ニーズの早期的把握、訪問系のサービスの提供などが確実に行われるような制度的誘導や在宅療養が可能な僻地医療体制の充実が必要である。
特別養護老人ホームの介護職員が必要とするスーパービジョンに関する研究

京都ノートルダム女子大学生活福祉文化学部生活福祉文化学科 三好明夫

中部学院大学人間福祉学部健康福祉学科 濱島淑恵
京都女子大学家政学部生活福祉学科 岡崎利治
芦屋女子短期大学文化福祉学科 村田道彦
岡崎女子短期大学人間福祉学科 仲田勝美
■要旨
本研究の目的は、特別養護老人ホーム(以下施設と称する)における介護サービスの質を確保するために介護職員のスーパービジョン(以下SVと称する)の在り方を検討することである。研究方法は、大阪府の施設に勤務する主任クラスおよび勤務経験3年未満の介護職を対象にアンケート調査を実施し、107施設より協力を得られ、671名(回収率88.3%)から回答を得た。分析の結果、介護職員は、SVの必要性や重要性を高く認識していることが明らかになった。特に、「専門的な知識、技術の向上」「心の支えとなる」「悩み事や困りごとが解決する」で高い傾向が現れた。また、スーパーバイザーとスーパーバイジー両方の経験がある者は、「管理機能」より「教育・支持機能」に関するSVを行う傾向が示された。今後は、SVの定着が必須であり、そのためには実施の方法、内容に一定の基準となる指標が求められるといえよう。
老人福祉施設での感染拡大防止を目的としたノロウイルス迅速簡便診断法の導入

大阪府立公衆衛生研究所感染症部・主任研究員 山崎謙治

大阪府立公衆衛生研究所感染症部 中田恵子
■要旨
感染性胃腸炎の発生現場でノロウイルス迅速診断を行い、感染の二次拡大を防止するという目標に向け、大阪府4保健所においてイムノクロマトグラフィー(IC)キットを用いたノロウイルスの検出を行い、Reverse-transcription loop-mediated isothermal amplification (RT-LAMP) 法と比較することによりICキットの評価を行った。対象として2009年12月から2010年2月の期間に採取された感染性胃腸炎集団発生の患者糞便を用い、以下の結果を得た。
1) RT-LAMP 法でノロウイルスが陽性であった全84事例中68事例(81%)がIC法で陽性となった。
2) 糞便260検体中205検体がRT-LAMP法で陽性となり、127検体がIC法で陽性となった。4保健所でのRT-LAMP法とIC法との陽性一致率は43.8〜82.5%(平均60.0%)、陰性一致率は66.7〜100%(平均92.7%)、全体一致率は50.6〜80.4%(平均66.9%)の範囲であった。
3) ウイルスの遺伝子型の大部分がgenogroup (G) II/2またはG II/4であった。
B.健康の維持・増進関係
(1)H20年度1年助成
地域在住高齢者の家庭内孤立による孤独感の実態と
日常生活への影響に関する研究

奈良県立医科大学 岩本淳子

関西学院大学 坂口幸弘
奈良県立医科大学 岡本希
奈良県立医科大学 富岡公子
堺市こころの健康センター 森川将行
奈良県立医科大学 筏義人
奈良県立医科大学 車谷典男
■要旨
本研究の目的は、家族と同居する高齢者の孤独感に焦点を当て、孤独感が日常生活の質(QOL)に及ぼす影響、および孤独感を規定する因子について明らかにすることである。調査対象は、独歩可能な65歳以上の高齢者であり、875名からの回答を分析対象とした。結果として、家族形態と孤独感との関連については、男女ともに認められなかった。抑うつや主観的QOLを含む多くの指標において、家族同居高齢者で孤独感が高い人の水準が最も低く、次いで独居高齢者であり、孤独感の低い家族同居高齢者の水準が最も良好であった。同居高齢者の高い孤独感を規定する要因として、有意な関連を示したのは老研式活動能力指標と、配偶者以外の家族からのサポート、友人からのサポートの3変数であった。
日本人におけるKIBRA遺伝子型の軽度認知症・アルツハイマー病の病態への影響
(効率的な医療や介護等の計画及び実践のために)

大阪大学大学院医学系研究科精神医学教室 助教 徳永博正

大阪大学大学院医学系研究科精神医学教室 高屋雅彦
大阪大学大学院医学系研究科精神医学教室 木藤友実子
大阪大学大学院医学系研究科精神医学教室 和田民樹
大阪大学大学院医学系研究科精神医学教室 杉山博通
大阪大学大学院医学系研究科精神医学教室 山本大介
大阪大学大学院医学系研究科精神医学教室 野村慶子
大阪大学大学院医学系研究科精神医学教室 数井裕光
大阪大学大学院医学系研究科精神医学教室 武田雅俊
■要旨
ApoE遺伝子のタイプがアルツハイマー病の発症に影響を与えていることはよく知られている。最近、KIBRA遺伝子のタイプにより記憶能力に差をもたらす、という議論がある。KIBRA遺伝子変異が、ApoE遺伝子のタイプと同様に、アルツハイマー病の発症、症状に影響を与えるかどうかを、我々は日本人を対象にして初めて検証した。KIBRA遺伝子変異は日本人において、アルツハイマー病の発症、臨床症状に有意に影響を与えるとは考えられないという結論に至った。しかし、KIBRA遺伝子多型の別の分類方法を採用する、被検者の数を増やす、といったことで今回の結論と異なる結論がでる可能性は否定できない。
地域密着型病院における後期高齢者の処方実態と減薬トライアルの効果

京都大学大学院医学研究科人間健康科学系専攻 野本愼一
京都大学大学院医学研究科人間健康科学系専攻 中西由佳
■要旨
地域密着型病院の後期高齢者を対象に、処方実態調査を行った。また、同病院のある診療科の初診時に多剤処方されていた患者に対して試薬を試み(減薬トライアル)、その試みに対する意識を調査した。これらから、後期高齢者の薬物治療についての問題点を検討した。
I.処方薬の実態調査
連続した6日間に外来受診し処方されたすべての後期高齢者(155名)を対象にカルテベースで処方実態を調査した。1日服用薬剤は最大36錠(15剤)で、平均12.6±7.7錠(6.5±3.5剤)であった。
II.試薬トライアル
同病院のある診療科の初診時に20錠以上服薬していた後期高齢者(5名)を対象に減薬トライアルを行った。初診時の処方は平均31.6錠(15.6剤)であったが、臨床所見や検査所見をもとに減薬した結果、それぞれ平均12.0錠(7.2剤)になり、患者満足度は高かった。
今回の調査では、大学病院に比べ複数科受診者も、多剤処方例も多かった。後期高齢者の多剤処方患者には、医師だけでなく看護師、薬剤師も含めたチームで減薬にのぞみ、patient-oriented medicationに従った処方に変えていくことが今後必要と思われる。
高齢者の糖尿病・脂質異常症に対する魚食指導の臨床的意義
−アディポネクチンを介したアプローチの試み

滋賀医科大学医学部 糖尿病・内分泌内科 医員 森野勝太郎

滋賀医科大学医学部附属病院 病院長 柏木厚典
滋賀医科大学医学部内科学講座(内分泌・腎臓・神経)教授 前川聡
滋賀医科大学医学部大学院医学研究科 大学院生 近藤慶子
■要旨
魚摂取が多いと心血管イベントが少ないことが日本を含む諸外国より報告されているが、魚食による動脈硬化予防効果についての分子機構には不明な点も多い。我々は魚食中心の食事介入が脂質・血中アディポネクチン濃度、血管内皮機能に及ぼす影響について検討した。健常ボランティア19名を対象とし、摂取エネルギー量は変えず、魚由来ω-3 多価不飽和脂肪酸(PUFA)を3g/day以上8週間摂取させ、介入後4週間観察を継続し、血中脂質・脂肪酸・血中アディポネクチンを比較検討した。魚摂取後8週まで血中ω-3 PUFA、HDL-Cの増加、TGの減少を認め、12週で試験前のレベルに戻った。一方、アディポネクチンは8週まで増加し、12週で試験前のレベルに戻った。現在、高齢糖尿病患者で同様の効果を認めるかどうかを検討中である。
(2)H19年度2年助成
郵便を活用した高齢者のメンタルケアの効果についての研究
介護予防情報紙「お達者通信」の活用

関西医科大学公衆衛生学講座 三宅眞理

関西医科大学精神神経科学講座 田近亜蘭
関西医科大学公衆衛生学講座 三島伸介
関西医科大学公衆衛生学講座 保津真一郎
関西医科大学公衆衛生学講座 西山利正
流通科学大学サービス産業学部 上田照子
■要旨
現在はインターネットが普及した情報社会であるが、高齢者には郵便が馴染み深く利用しやすい通信方法である。郵便を使った情報提供は、加齢や病気、一人暮らしによる社会交流が減少や自ら交流を遮断する「閉じこもり」高齢者に対して「生きがい」となる情報になる可能性がある。ITを使ったコミュニケーションの研究は盛んであるが、高齢者に馴染み深い郵便を使ったメンタルケアの効果について検討した。本研究は高齢者を対象にして、月に一回、12ヶ月間に手紙付き情報誌「お達者通信」を送り、それに対する返信を受ける双方向の郵便によるコミュニケーションの活性化を図った。それぞれの交流の相手は家族や高齢者介護施設の職員やケアマネジャーなどである。その結果、高齢者からの返信の状況などから高齢者が返事を書くことが生活リハビリテーションなり、定期的な情報の提供が社会的にまた家族間の交流を深め高齢者の健康管理に貢献できることが示唆された。
重度化予防を目的とした転倒対策体操の試み

大阪市立弘済院附属病院 リハビリテーション科 副部長 平田繁
大阪市立弘済院附属病院 リハビリテーション科 石川春男
大阪市立弘済院附属病院 リハビリテーション科 西川かをる
大阪市立弘済院附属病院 リハビリテーション科 土田実歩
大阪市立弘済院附属病院 リハビリテーション科 吉田江里子
■要旨
要介護高齢者が重度化する原因の一つが転倒であり、ADLを維持し、QOLを保つためには、転倒対策が重要である。今回、高齢者施設に入所中の高齢者に対して、集団による体操を実施し、その効果について調査した。転倒時、上肢による「かばう動作」によって、頭部外傷、大腿骨頚部骨折を防止することを目的に、座位で上肢・体幹の動きが多い体操を実施し、以下の結果を得た。
ファンクショナルリーチは経過を追えた13名中8名が改善、片足立ち(左)13名中7名改善、片足立ち(右)は13名中3名改善した。TUG:10秒以下は16名中3名、12名は10秒〜15秒、1名は初期評価の26秒から、終了時18秒へと改善した。
体操に参加した14名中5名が大変満足した、7名がやや満足したと答えており、多くが継続的な参加を希望された。介護施設を利用している要介護高齢者においてもバランス運動能力が短期間で改善されることが示されたが、その能力の浮動性は高く、継続的な対策が重要である。
運動ベッドを使った周期的加速運動の血管内皮機能改善効果

京都大学大学院医学研究科 人間健康科学系専攻 教授 藤田正俊

大阪医科大学 内科学III 寺崎文生
滋賀医科大学 呼吸循環器内科 松本鉄也
田附興風会北野病院 心臓センター 宮本昌一
■要旨
運動負荷ベッドによる周期的加速運動の血管内皮機能改善効果について、上腕動脈の反応性充血による血管拡張反応(FMD)で検討した。運動習慣のない成人20名(43±3歳、男8名、女12名)を対象とし、4週間の運動期間と4週間の非運動期間の順番をクロスオーバー法で割り付けた。運動は±2.2m/秒2の加速度を120〜180回/分で45分間、計20回施行した。運動療法により、FMDは7.3±0.6%から8.2±0.7%に有意に(p<0.05)増加したが、非運動期間では有意な変化は認められなかった。硝酸薬によるFMDの増加は、運動、非運動期間の前後で同程度であった。運動習慣のない成人において、運動ベッドによる周期的加速運動は血管内皮機能を改善した。この治療法は、動脈硬化進展防止、生命予後改善効果をも含めた運動療法として期待される。
II.特別部門
(1)平成20年度1年助成
立ち上がり動作時の床反力指標および体重心加速度指標による下肢筋力評価

大阪電気通信大学医療福祉工学部健康スポーツ科学科 准教授 太田暁美

大阪電気通信大学大学院医療福祉専攻 矢野正大
■要旨
本研究の目的は、1回立ち上がり動作時の床反力(vGRF)と体重心加速度(vaCOM)および下肢関節トルクとの関係を調べることであった。さらに、腰背部に装着した3軸加速度計で計測した加速度(vACC)との比較を行った。被験者は若年者15名(年齢:22.2±0.4歳、男性10名、女性5名)と高齢者28名(年齢70.2歳±3.2歳、男性14名、女性14名)であり、腕を前に組んだ姿勢でできるだけ速く立ちあがり動作を行った。vACCの波形はvGRFが最大値に達するまでに2つのピークを示した。高齢者では下肢関節トルクとvGRFの3指標との間 (膝関節: r = 0.69-0.78、 股関節: r = 0.44-0.68)、および vaCOM (膝関節: r = 0.70-0.80、股関節: r = 0.54-0.57、vaCOMmaxとpeak-to-peak)に中程度の相関がみられた。若年者では vGRF 増加時の傾きと下肢関節トルクとの間に相関はなく、vaCOMmax と 股関節伸展にのみ有意な相関がみられた(r = 0.63 p < 0.05)。これらの結果は立ち上がり動作中の vGRF と vaCOM が高齢者の下肢筋力の評価となりうることを示している。
地域の公共施設に脚の健康度を測定評価できる機器設置と介護予防運動教室の効果検討
−脚の健康度を自らが知り低下予防に役立てる−

天理大学 中谷敏昭

日本橋学館大学 芳賀脩光
京都市立芸術大学 上英俊
天理大学 寺田和史
■要旨
地域の公共施設など人が集まる場所に一人で下肢筋力を測定できる機器を設置し、介護予防運動教室の際に下肢筋力を毎回測定してその効果を検討するとともに、脚の健康度を知ることが下肢筋力の低下の予防につながるか否かを検討した。測定方法と機器に関するアンケートの結果、「下肢筋力の測定が必要である」、「筋力の状況を知ることで下肢筋力の低下予防につながる」、という意見が多くみられた。測定機器に関してはハード面や測定上の問題点がわずかながら認められたことから、今後は機器を改良して下肢筋力測定の信頼性を高めることが必要である。公共施設に機器を設置することについては7割の者が「必要である」と答え、脚の健康度を自らが知り低下予防に役立てるという点は理解された。運動教室の中で下肢筋力を測定し続けることは筋力の改善に貢献する可能性が示され、脚の健康度を測定することが筋力の状況に意識を向けさせることにつながった。下肢筋力の測定は体脂肪体重や血圧と同様に自らの健康維持に役立つと考えられる。
(2)平成19年度2年助成
超高齢社会における高齢者のプロダクティブ・エイジング志向性を高めるための調査研究
―尺度の開発と高齢者大学への適用―

甲子園大学人文学部 藤田綾子

大阪大学大学院人間科学研究科 刈谷明美
大阪大学大学院人間科学研究科 中原純
大阪大学大学院人間科学研究科 中里和弘
大阪大学大学院人間科学研究科 河村諒
大阪大学大学院人間科学研究科 蓮華のぞみ
■要旨
健康な高齢者のサクセスフルエイジングのための生き方としてプロダクティブ・エイジングの可能性を探るために、「次世代への社会貢献」「自己成長因子」「精神的充実因子」「地域・仲間への貢献因子」からなるプロダクティブ・エイジング志向性尺度を開発した。開発された尺度について、イノベーター普及理論を用いて「イノベーター」「初期少数採用者」「前期多数採用者」「後期多数採用者」「採用遅滞者」に類型化するカットオフポイントを算出した。類型化はポジティブ感情とプロダクティブ・エイジング活動を予測し、1年間の高齢者講座は「前期多数採用者」「後期多数採用者」「採用遅滞者」をより高い志向性の類型に変化をさせる影響を持つことが明らかになった。