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公益財団法人大阪ガスグループ福祉財団

助成事業調査・研究助成の過去助成状況



2009年度「研究助成報告書」

I.一般部門

A.福祉の向上関係
(1)H19年度1年助成
介護老人保健施設におけるケアスタッフへのBPSDケアの質向上のための教育的介入の効果
研究代表者大阪大学大学院医学系研究科 九津見雅美

共同研究者
松下介護老人保健施設はーとぴあ 介護福祉士・認知症ケア専門士 泉敦子
松下介護老人保健施設はーとぴあ 介護福祉士 北原健一

■要旨
本研究の目的は、介護老人保健施設のケアスタッフにBPSDケアの質向上のための教育的介入を行い、その効果を明らかにすることである。教育的介入の効果の測定には、介入前後に実施するケアスタッフの認知症に関する知識量の変化をはじめ、ケアスタッフの情緒的消耗感、入所者のBPSDの変化としてBehave-ADを評価指標とし、検討をおこなった。調査・介入時期は2008年10月〜12月、対象者は介護老人保健施設に勤務するケアスタッフ31人(認知症専門棟ケアスタッフ9人で、この群を介入群とした)、認知症専門棟の入所者23人である。認知症および認知症者のコミュニケーションスキルに関する知識は、介入前後の得点差に有意差はみられなかったものの、介入群においてやや上昇していた。ケアスタッフの情緒的消耗感は、非介入群において違いはみられなかったものの、介入群においては有意に得点が減少していることが示された。入所者のBehave-ADの変化については、得点の減少はみられなかった。2ヶ月間の介入がBPSDの出現を低下させているには至らず、今後は長期的な視野のもと教育的介入と観察を続ける必要がある。今後は教育内容をさらに改善し、知識の向上や情緒的消耗感の低下、Behave-ADの低下を図り、ケアの質向上を目指すことが重要である。


在宅訪問栄養食事指導におけるニーズの実態とその関連因子の検討

研究代表者武庫川女子大学生活環境学部 爲房恭子

共同研究者
相愛大学人間発達学部発達栄養学科 中村富予
NPO法人ケアプランニングNEST 逵妙美

■要旨
本研究の目的は、在宅医療・介護に関わるスタッフとその在宅療養者・介護者双方の訪問栄養食事指導のニーズや専門職としての管理栄養士への期待感などの実態とその関連因子を明らかにすることである。 訪問栄養食事指導の認知度は、在宅療養者(23%)、それに関わるスタッフ(62%)いずれも高くなく、その利用率も低い。しかし、満足度は在宅療養者100%、スタッフ71%と高かった。また、食や栄養の問題を抱えているとの認識は、在宅療養者は58%、スタッフの82%と乖離していた。在宅療養者の「食や栄養の問題を抱えている」と「ストレスが大きい」の関連(p<0.02)から食そのものがストレスとなっており、このことが訪問食事指導の依頼低迷の一因と推察された。スタッフからは、「どこに頼んでよいかわからない」が示すように在宅療養者を支援しているわれわれ管理栄養士の怠慢さも本研究で明らかになった。 さらに、スタッフが、専門性の高い管理栄養士の指導に対する要求も示された一方で、在宅療養者は日常的な食事に対するアドバイスを求めていた。 今後は、適切な栄養管理サービスの提供のために、訪問管理栄養士の教育・研修が重要な課題である。


健康で文化的な最低限度の生活水準を確保するために必要な公共交通サービス水準に関する研究
―英国第二期地域交通計画のアクセシビリティ指標と数値目標を中心に―
研究代表者和歌山大学経済学部 辻本勝久

共同研究者
大阪市立大学医学部看護学科 板東彩
甲南女子大学看護リハビリテーションセンター 津村智恵子

■要旨
人口減少・高齢化社会を迎えたわが国では、社会と環境・経済が鼎立する持続可能な都市・地域づくりに向け、総合的な交通戦略の策定と実施が望まれる。本研究では、英国の法定化された地域総合交通戦略であるLTP(Local Transport Plan:地域交通計画)におけるアクセシビリティ関連の指標や数値目標に着目し、それらの設定方法や、優秀な第二期LTP("Excellent"LTP2)における設定状況について議論した。その上で、わが国への応用方向について若干の考察を行った。 研究の結果、1)コントロールと支援とを適切に組み合わせた制度設計の重要性 2)アクセシビリティ確保の意義を高いレベルで認識し、実情に応じた具体的な指標構成に向けて十分議論することの重要性 3)優秀な第二期LTPのアクセシビリティ戦略における達成度指標と数値目標の特徴等を指摘することができた。


福祉医療建築の連携による住民改善実施の長期にわたる在宅支援効果に関する事例的研究
研究代表者特定非営利活動法人 福祉医療建築の連携による住民改善研究会(関西大学)
馬場昌子

共同研究者
理事 柳尚夫(兵庫県津名保険所)、 理事 新雅子(臨床心理士)
理事 佐藤和子(佐藤建築事務所) 、運営委員 馬場健一(馬場健一建築研究所)
運営委員 山田隆人(大阪保健医療大学)

■要旨
当研究会が今までに取り組んできた住居改善事例を対象に、改善実施後の時間経過の中で長期にわたる在宅生活におけるQOL支援効果、および各専門分野の果たした役割を見極めることを目的に、いくつかの事例のフォローアップ調査を行った。その結果、当初の改善目的が達成されていることを確認した。しかし、その後の生活変化に対して新たな専門的見地からのサポートが必要な事例があった。訪問職種がかかわっているにもかかわらず、その問題が放置されている事例があった。現行の様々な福祉サービスが縦割りで、総合的な生活支援の仕組みが欠如していることが確認できた。


被差別部落高齢者の生活変化に関する調査・研究 ―大阪市内住吉地区を事例に―
研究代表者 大阪体育大学健康福祉学部 矢野亮

共同研究者
松山大学 山田富秋、松山大学大学院 西岡真希子、大阪市立東粉浜小学校 川口智
部落解放同盟大阪府連合会住吉支部 森本浩資、大阪市人権協会 前田雅之

■要旨
同和対策が終了して約7年が経過した現在、地区在住の高齢者の生活後退が顕著に現れ始めている。本調査の目的は、いわゆる同和対策終焉(2002年)を起点として、被差別部落で暮らす高齢者の生活変化について、大阪市内の住吉地区を事例にしながら、その詳細を明らかにすることである。調査方法は調査票を用いた半構造化インタビューを実施した。 結果、268人の高齢者のうち206人(172世帯)の方からインフォーマントとして回答が得られ、次の点が明らかとなった。(1)依然として部落の高齢化が加速し続けていること、(2)高齢者の約半数が、この一年の暮らし向きは悪くなった、同和対策がなくなって悪くなったと回答した。(3)収入に関しては、多くの高齢者が僅かな年金での生活を余議なくされており、健康状態についても約60%の高齢者が病気や障害を有するが、医療費が家計を圧迫したり、将来病状が悪化した時の不安を抱いていること等が具体的な語りから明らかとなった。最後に「調査」という営み自体が「福祉と人権のまちづくり」運動(訪問運動)の一環となった。


(2)H18年度2年助成
介護予防のための食支援〜配食サービスの現状と展望

研究代表者大阪信愛女学院短期大学人間環境学科 田中順子

共同研究者
大阪信愛女学院短期大学 田中順子、羽衣国際大学人間生活学部 黒川由美
帝塚山学院大学人間科学部 高谷小夜子、畿央大学健康科学部 南幸
甲子園短期大学 和辻敏子、鳴門教育大学 岡田美津子、奈良県栄養士会 福岡明美
大阪青山大学健康科学部 名村靖子、大阪府栄養士会 愛水幸代、大阪市立大学生活科学部 春木敏

■要旨
関西地域において実施されている生活支援型配食サービス利用者の実状や、自治体が委託している配食サービス事業者の事業状況を調べ、高齢者のQOLの向上や介護予防のための配食サービスのあり方について検討した。地域のボランティアなどが配達・安否確認をしている自治体の例では、利用者は「摂取食品数が増えた」「安心感が増大した」「人とふれあえるようになった」と評価していた。業者が配達・安否確認をしている自治体の例でも同様に評価されていたが、配食サービスの利用頻度が低かった。 配食サービス事業者については、社会福祉法人などに委託している2自治体と民間業者に委託している1自治体について調べた。3市を比較すると1日平均配食数を利用登録者数で割った利用率に差があり、民間に委託している自治体の利用率は低かった。虚弱で孤独になりがちな高齢者の安否を確認し、介護を予防するために生活支援型配食サービスは重要な手段である。高齢者のQOLを向上させ、介護の重度化を予防するためにも、ボランティアの活用など地域の実情にあった方法をさらに検討していくことが必要である。


B.健康の維持・増進関係
(1)H19年度1年助成
医療機関受診高齢者における睡眠衛生の知識と生活指導による睡眠及び質(QOL)に対する改善効果の検討
研究代表者大阪大学保健センター 足立浩祥
■要旨
本研究では、睡眠に問題を抱え、医療機関を受診した高齢者を対象に1)睡眠衛生の知識について調査すること、2)また、生活の質(QOL)に大きな影響を与えうる睡眠の問題解決に、睡眠衛生教育がどの程度効果があるのかについて検討することを目的とした。 不眠・過眠の症状を主訴に外来受診した、60歳以上の高齢者10名(男性5名;平均年齢71.2±6.9歳)において、睡眠衛生の知識の有無について調査を行った。また、睡眠衛生教育の前後に、不眠の評価尺度と日中の眠気の評価尺度を用い、それぞれ比較を行った。 調査の結果、睡眠衛生の知識では、「早い時刻に寝床につき睡眠時間を長くすること」や「寝付けない時や途中で目が覚めたときに時計を確認する」について、正解率が低く、睡眠を獲得するための対処行動について正しい知識の啓発の必要性が示唆された。さらに、睡眠衛生教育後、生活習慣が変容し、不眠の重症度および日中の眠気がいずれも有意に改善することが示された。 これらの結果から、睡眠に問題を抱えて受診する高齢者において、睡眠衛生の知識がそもそも不足している場合も多く、睡眠衛生教育により高齢者の不眠が改善できる可能性が示唆された。 


パーキンソン病に対する運動療法の開発

研究代表者 甲南女子大学看護リハビリテーション学部 阿部和夫

共同研究者
大阪電気通信大学医療福祉工学部 河野奈美、甲南病院リハビリテーションセンター 内田豊
甲南病院リハビリテーションセンター 山本静香、甲南病院リハビリテーションセンター 大西智恵子
甲南病院リハビリテーションセンター 澤下浩二、甲南病院リハビリテーションセンター 小西智子
甲南病院リハビリテーションセンター 福西梓、甲南病院リハビリテーションセンター 小林弘美
甲南病院リハビリテーションセンター 田野絢子、甲南病院リハビリテーションセンター 中沢尚子
甲南病院リハビリテーションセンター 高内麻千子

■要旨
目的:パーキンソン病患者では、身体機能をできるだけ長く良い状態にすることは重要であり、運動療法やパーキンソン体操などの自主トレーニング法が報告されてきた。しかし、個別での指導に要する時間や体操方法に対する患者の理解および自宅で自主トレーニングを継続に行うことの困難さは、加齢とともに増加することから、これまで行われてきた機能維持の運動提供のみでは、十分な効果を挙げていない。また、パーキンソン病患者に対する、集団で行える一般化された運動プログラムは少なく、パーキンソン病患者に対する集団での運動プログラムを開発することは、介助量の軽減や転倒による二次的障害の軽減による医療費削減の観点からも重要である。そこで今回、我々が開発した自己身体認識向上と姿勢改善を目的とした運動プログラムを用い、パーキンソン病患者を対象に集団で運動プログラムを実施し、その有用性について検討したので報告する。
対象と方法:研究の目的と方法を説明し同意が得られたパーキンソン病患者9名、平均年齢76.4(65〜89)歳、Hoehn-Yahrのstage1:2名、stage2:1名、stage3:6名を対象とした。姿勢改善を目的とした運動プログラムの指導方法について説明を受けた理学療法士および作業療法士にて集団運動プログラムをパーキンソン病患者に指導した。運動プログラムは1回30分間、週1回のペースで2ヶ月間実施し、介入前後の姿勢、握力、肺活量、Unified Parkinson's Disease Rating Scale(UPDRS)を評価した。また、自己記入式調査票を用いてやる気、うつと疲労を評価した。
結果:6回以上運動プログラムに参加した対象者は6名で、他の1名は月1回のペースで2回のみ参加、2名は途中で入院のため中止となった。UPDRS合計得点が初期時に比べ介入後に5点以上改善した患者は5名で、特に、日常生活動作において改善がみられた。しかしながら、やる気スコアとうつスケールにおいて半数以上が得点増加しており、介入後やる気スコア16点以上が7名、うつスケール50点以上初期時2名、介入後5名であった。
結論:週1回の運動プログラムを実施することで、パーキンソン病患者の機能維持や姿勢の改善傾向がみられ、本運動プログラムがパーキンソン病患者の集団運動プログラムとして有用と考えられる。しかし、指導者による内容のばらつきや、パーキンソン病患者の精神面での効果が殆どなかったことから、今後、指導内容や実施頻度を含め運動プログラムの改善をさらに検討する予定である。


筋力・筋厚・運動機能・姿勢の加齢変化に関する研究

研究代表者京都大学大学院医学研究科 市橋則明

共同研究者
大畑光司、建内宏重

■要旨
本研究の目的は、筋力、筋厚、運動機能、姿勢の加齢変化を明らかにすることである。筋厚の加齢による低下率は、腹筋群においては腹横筋よりも内腹斜筋および外腹斜筋の低下率が有意に大きい値を示した。背筋群においては、多裂筋よりも広背筋は有意に低下率が大きかった。股関節周囲筋においては、小殿筋よりも大腰筋は有意に低下率が大きかった。筋力の低下率においては、股伸展・外転および膝伸展の筋トルク低下率が大きかった。若年者と高齢者における安静立位時の脊椎アライメントを比較した結果、高齢者では若年者に比較して腰椎後弯角度は有意に高値、骨盤前傾角度は有意に低値を示した。高齢者における脊椎アライメントおよび脊椎可動域と運動機能の関連性については、腰椎後弯角角度と10m歩行時間、TUG、FRとの間、骨盤可動域とTUG、FRとの間のみ有意な相関が認められた。


連続暗算課題の難易度と脳賦活部位の変化について

研究代表者京都大学大学院医学研究科 酒井浩
■要旨
健常ボランティア9名を対象に、異なる2種類の難易度で連続暗算課題を行っている間の脳内賦活部位についてfMRIを用いて検討した。対象は男性3名、女性6名(合計9名)、全例右利きで、年齢は27.9±6.85歳であった。課題にはワーキングメモリー課題としてよく使用されているPASAT(Paced Auditory Serial Addition Test)を用いて、CDを用いた聴覚呈示で、刺激の時間間隔は2秒(2秒用)と1秒(1秒用)のものを使用した。測定は(安静)30秒―(2秒用)60秒―(安静)30秒―(1秒用)60秒を合計3サイクル行った。 その結果、PASAT実施時には左上側頭回、左頭頂小葉、前頭葉内側面、小脳、そして背外側前頭野(DLPFC)に賦活が認められた。また、正解率が85%を超える場合にはDLPFCの賦活は認められず、脳内の賦活部位が限局化する傾向も認められた。したがって、計算課題においては、正解率が80%までの課題を行うことでDLPFCを含む脳部位の賦活が期待できるものと考えられた。


(2)H16年度2年助成
経穴刺激理学療法の効果とその中高年者に対する臨床応用に関する筋電図による検討
研究代表者関西医療大学保健医療学部 鈴木俊明

共同研究者
関西医療大学保健医療学部臨床理学療法教室講師 谷万喜子

■要旨
経穴刺激理学療法は、鍼灸医学における循経取穴の理論を理学療法に応用して、著者らが独自に開発した新しい理学療法の手法である。 本研究に同意を得た健常者11名を対象として、足太陽膀胱経の崑崙への経穴刺激理学療法前後のヒラメ筋H波を測定した。 ヒラメ筋の筋緊張抑制を目的とした経穴刺激理学療法における振幅H/M比は、1分間刺激において刺激中は低下傾向であるが、終了直後に刺激前までに回復し、その後は徐々に低下する傾向にあった。5分間刺激では、刺激直後に低下傾向を認め、刺激5分後には回復したが、終了後に徐々に低下傾向を認め、15分後では刺激前と比較して有意に低下した(t−test:p<0.05)。H波の出現頻度および立ち上がり潜時は1分間刺激、5分間刺激共に経穴刺激理学療法前後での変化は認めなかった。 ヒラメ筋の筋緊張促通を目的とした経穴刺激理学療法における振幅H/M比は、1分間刺激において刺激中に軽度増加傾向、終了直後に更に増加する傾向であったが、その後は経時的に低下した。5分間刺激では、刺激前後ともに大きな変化を認めなかった。H波の出現頻度および立ち上がり潜時は経穴刺激理学療法前後での変化は認めなかった。 なお、経穴刺激理学療法をおこなわないコントロール群では、経穴刺激理学療法実施時と同様の時間経過によってH波を測定したが、経時的なH波変化は認められなかった。 経穴刺激理学療法の結果、年齢による効果の差は認められず、加齢変化が経穴刺激理学療法も与える影響は認められなかった。この結果から、経穴刺激理学療法は中高齢者に対する筋緊張のコントロールにも用いることができると考えている。
身長低下が高齢者に及ぼす影響に関する調査研究

研究代表者京都女子大学家政学部 田中清

共同研究者
兵庫医科大学篠山病院 楊鴻生、介護老人保健施設松柏苑 太田淳子

■要旨
高齢者において、立位身長はしばしば測定困難であり、その場合代替測定部位から推測される。若年者ではいずれの代替部位も立位身長とよく相関したが、高齢者では、膝高・前腕長以外は測定可能率が低く、代替測定部位としてはこれらが適切と考えられた。一方既報の身長予測式は、現在身長を推測するものであるが、栄養評価においてむしろ最大身長を用いるのが適切な状況も考えられ、これは膝高に比例する。体重/(膝高)は、通常のBMIの代替として、一定の有用性が示された。次に骨粗鬆症外来受診の女性患者を対象に調査したところ、椎体圧迫骨折を持つ例では、プロトポンプ阻害剤(PPI)、H2ブロッカー、消炎鎮痛剤(NSAID)、降圧剤服用者の割合が有意に高く、身長150cm未満群では、150cm以上群に比して、有意にこれら薬剤服用の割合が高かった。高齢者における身長低下は、高齢者にとって重要な健康阻害要因であり、その予防に努めなければならない。
高齢一卵性双生児1,200組の同胞間比較からみた老年期の人生満足度に関する遺伝と環境要因の研究
研究代表者大阪大学大学院医学系研究科 早川和生

共同研究者
大阪大学大学院医学系研究科 西原玲子、大阪大学大学院医学系研究科 蔡陽平
大阪大学大学院医学系研究科 門田憲亮、大阪大学大学院医学系研究科 大野智代
大阪大学大学院医学系研究科 佐伯志穂

■要旨
本調査研究の目的は、老年期における人生満足度に関与する遺伝要因及びライフスタイル・環境要因を明らかにすることである。人生満足度の測定尺度としてNewgartenの人生満足度テストlifesatisfacition index(LSI-A)を用いた。65歳以上の高齢双生児1,250組について郵送質問用紙調査を実施し、人生満足度についてペアの双方より回答を得ることができた高齢双生児159組(318名)、(一卵性226名、二卵性92名)について分析した。調査データ分析には、級内相関係数および共分散構造分析を用いて遺伝子寄与率を算出した。男女とも一卵性と二卵性の間で人生満足度テストの得点の解析において級内相関係数に有意差はなかった。本調査結果の解析では、人生満足度に関与する要因としてはペアの共有環境要因及び非共有環境要因の影響が大きいことが示唆された。これら環境要因の内、11のライフスタイル要因(配偶者と同居、社会交流、栄養摂取バランス、朝食摂取、運動習慣、睡眠時間、職業、主観的ストレス度、喫煙、飲酒、健康状態)について多重ロジスティック解析及び同胞間比較し分析した。その結果、4つの要因(主観的ストレス、社会交流、栄養摂取バランス、運動習慣)の関与が大きいことが示唆された。
左右非対称な聴覚刺激によって重心動揺は変化するのか?

研究代表者京都大学大学院医学研究科 山田実

共同研究者
神戸大学大学院保健学研究科 川又敏男、先端医療センター 河内崇
神戸大学大学院保健学研究科 平田総一郎、神戸大学大学院保健学研究科 小野 玲

■要旨
[目的]本研究の目的は、耳栓によって左右の聴覚情報量を変化させた際の姿勢動揺の変化について検討することである。
[対象]対象は健常若年成人30名(21.7±1.8歳)であった。 [方法]測定環境はバランスマット上で、開眼、腕組みでのロンベルク肢位とした。加速度センサーを頭部と腰部に装着し、30秒間の計測を行った。 これを耳栓なし、利き耳のみ耳栓、非利き耳のみ耳栓、両耳耳栓の4条件で実施した。 パラメーターは、頭部加速度RMS(以下、Head)、腰部加速度RMS(以下、Pelvis)、それにHeadをPelvisで除したHead/pelvisとした。
[結果および考察]Head、Head/Pelvisともに、利き耳に耳栓をした条件で大きくなっていた。つまり、利き耳と非利き耳への聴覚情報量に不均衡が生じることで、頭部動揺および上半身動揺が増大することが示唆された。
[結語]左右耳への異なる聴覚情報量は、姿勢制御に影響を及ぼした。


II.特別部門

(1)2年助成
地域住民の行政の協働と参画による地域交通計画に関する研究

研究代表者大阪大学大学院工学研究科 猪井博登

共同研究者
大阪大学大学院 猪井博登、兵庫県立福祉のまちづくり工学研究所 北川博巳
兵庫県西播磨県民局 市原考、大阪大学大学院 谷内久美子
兵庫県立福祉のまちづくり工学研究所 柳原崇男

■要旨
先進事例として8つの事例を収集し、住民が主体的に運行しているものの、行政は住民のみに任せてしまうのではなく、支援施策を整備し、協働関係が構築していることが確認された。また、ソーシャルキャピタル概念を用いることにより、自治会の組織化など認知的ソーシャルキャピタルが構築されているかよりも、一般的に人を信頼している人が多く、他者に対する援助しようという規範があるといった認知的ソーシャルキャピタルが構築されている地域である方が、住民と行政の協働の参画による地域交通の成立の可能性が高いことが分かった。 住民と行政の協働によるバスの検討過程を、ケーススタディの経験をもとに、1)問題意識の醸成 2)組織化 3)問題点の明確化 4)代替案の作成 5)代替案実施の5段階に整理した。このケーススタディ地区では、アンケートより、交通を整備することにより、移動制約者の約半数で解決できることがわかった。住民主体型の交通を整備することで、これらの問題が解決することができ、高齢者の生活向上が図られることが期待される。
地域見守りの実践課題―災害福祉と介護予防の視点から―

研究代表者大阪人間科学大学人間科学部 峯本佳世子

共同研究者
関西福祉科学大学社会福祉学科 斉藤千鶴、神戸市灘区保健福祉部保健課 岡本和久

■要旨
本研究は、1995年に発生した阪神淡路大震災の被災地・A市が災害復興において始めた高齢者の地域見守り事業の活動実態と成果をあきらかにし、今後の超高齢社会における安心な地域のあり方を探ることを目的とした。研究方法としてA市の見守り推進員に対してアンケートによる量的調査、およびグループインタビューによる質的調査を行った。その結果、見守り推進事業開始から7年が経過したなかで、次第に見守り推進員の存在が地域住民に理解されるようになり、地域全体で見守り活動が展開され、孤独死防止や介護予防活動促進に貢献していることが実証された。一方で、地域包括支援センターの制度が介護予防の業務に集中している状況下、3職種に加えられた地域見守り推進員の役割が十分に認識されず、課題が多いこともあきらかになった。


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