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公益財団法人大阪ガスグループ福祉財団

助成事業調査・研究助成の過去助成状況



2011年度「研究助成報告書」

I.一般部門

A.福祉の向上関係
(1)2009年度1年助成
軽度要介護認定高齢者の社会関連性と介護サービス未利用との関連

研究代表者大阪府立大学大学 院看護学研究科 海原律子

共同研究者
大阪府立大学看護学部 上野昌江
大阪府立大学看護学部 和泉京子
大東市健康福祉部介護保険課 北崎忠良

■要旨
本研究の目的は、介護保険制度の軽度認定者における介護サービス未利用に関連する要因を、人や社会とのかかわりを考慮した社会関連性の観点から明らかにし、その具体的な支援策を検討することである。平成22年4月において要支援1、2および要介護1、2の認定を受けて在宅で生活している高齢者2,355人を対象に、郵送法による無記名自記式の質問紙調査を実施し、以下の結果を得た。
(1) 未利用者は利用者に比べIADL得点が有意に高く、また要支援群では、一人暮らしの割合が有意に多く、要介護群では、平均年齢が低く、居住年数10年以上の割合が有意に多かった。
(2) 要支援群は「家族との会話」があること、要介護群は「家族や家族以外との会話」がないことが、介護サービス未利用と関連していた。
以上の結果から、要支援群と要介護群とでは背景が異なり、区別して支援していくことの必要性が示された。さらに要介護群の未利用者は、家族や地域から孤立する可能性が示唆され、その把握のための仕組みづくりや、家庭訪問等を通じた個別のかかわりが求められる。


特別養護老人ホームにおける介護職・看護職の職種間連携と関連要因
-職場用ソーシャル・サポート尺度を用いて-

研究代表者千里金蘭大学 看護学部 助教 金原京子

共同研究者
大阪市立大学大学院 生活科学研究科 准教授 岡田進一
特別養護老人ホーム メヌエット東館 施設長 江藤愛子

■要旨
近年、特別養護老人ホーム(以下、特養)では利用者の高齢化、重度化が進み、介護職と看護職の連携がさらに重要視されるようになってきた。
本研究では職種間の連携をソーシャル・サポートとして捉え、職種間のソーシャル・サポート状況と関連要因を検討した。
介護職、看護職とも身近な存在である同職種からのサポートを強く感じており、この傾向は看護職で特に顕著であった。介護職が看護職から、看護職が介護職から感じるといった多職種間サポートは同職種間サポートと比べると相対的に少なく、介護職が看護職から感じるサポートは、知識や情報の提供といった道具的サポートの比重が高かった。
多職種間連携の促進要因は介護職・看護職で異なり、介護職が看護職から感じるサポートを高める施設要因は「看取りの導入」「看護職の早出遅出の導入」、看護職が介護職から感じるサポートの促進要因は、看護職の「施設外研修への参加機会」であった。


地域高齢者による子育て支援活動の継続的プログラム開発のための 基礎研究

研究代表者大阪大学大学院人間科学研究科 准教授 権藤恭之

共同研究者
大阪大学大学院人間科学研究科 中原純
大阪大学大学院人間科学研究科・日本学術振興会 田渕恵

■要旨
本研究では、近年重点化されている地域子育て支援の一環である「地域高齢者による子育て支援」に着目し、支援プログラム開発のための基礎研究を行った。研究1では、「地域高齢者による子育て支援」に携わる高齢者の心理的発達としての世代性を測定する「短縮版世代性尺度」の信頼性および妥当性を検討することを目的とした。中高年者802名を対象とし分析を行った結果、信頼性係数(Cronbachのα)は.68であり、年齢や地域活動変数と中程度の有意な関連性が認められた。研究2では、高齢者が子育て中の親世代や子どもと関わる際に、ポジティブなフィードバックを受ける場面について具体的に明らかにすることを目的とした。高齢者76名を対象とし分析を行った結果、「経験や知識の伝達」といった11の小カテゴリーが抽出された。今後はこれらの研究を基に、高齢者の世代性の継続的な発達と継続的な支援行動のための具体的なプログラムを検討する必要がある。


介護業務の「やりがい」に関する調査研究
―介護従事者の確保と定着に向けて―
研究代表者関西福祉科学大学社会福祉学部 立花直樹

共同研究者
関西福祉科学大学社会福祉学部 中島裕
神戸学院大学 総合リハビリテーション学部 九十九綾子
特別養護老人ホーム江之子島コスモス苑 多田裕二
介護付有料老人ホームグラート大今里 永井文乃

■要旨
今日の日本では、超高齢社会を迎え、要援護高齢者並びに特別養護老人ホームが年々著増している。
この様な社会状況の中で、介護職員の需要は年々増加しており、今後もますます必要性が高まると予測されている。その一方で、介護職員は「3K労働(きつい、汚い、低収入)」といわれ、失業率が高い世の中にあっても、特別養護老人ホームでは介護職員不足を解消できない状況である。
また、これまで「ストレス」「バーンアウト」「介護負担」等、介護の否定的側面に焦点が当たった研究が多くなされているが、介護の肯定的側面に焦点を当てた研究は多くない。
そこで本研究では、介護職の就労継続に焦点を当て、大阪府内で開設8年以上の特別養護老人ホーム161施設の施設長並びに介護職員を対象に調査を実施し、以下の3点が明らかになった。
(1)「性別」「経験年数」「上司との関係」「利用者との関係」でバーンアウト得点の有意差が見られた。
(2)介護職を継続する要因として「給与待遇」「同僚との良好な人間関係」を選択した者が多かった。
(3)施設長と介護職員の間には、就労継続要因に対する考え方にズレが見られた。


「団塊の世代」の介護現場への参入と定着に関する研究

研究代表者びわこ学院大学 教授 田中愽一

共同研究者
びわこ学院大学 教授 平尾良治
びわこ学院大学 准教授 村西美惠子
びわこ学院大学 准教授 安田誠人

■要旨
2009年の日本の高齢化率は22.7%になり、介護保障は国の重要な政策課題である。近年、国は地域包括ケアの名称で新しい介護モデルを構築する試みを行っている。それは、医療・介護・福祉・住宅サービスを一体的に供給するものであり、在宅ケアの中核的な人材としてホームヘルパーが重要な役割を担う。今回の調査では、ホームヘルパーのアセスメント能力、そして職種連携能力を高める教育を行う必要があり、現行ヘルパー教育の改善課題が明らかになった。
また、今回の調査では、高齢者の介護は施設利用より、むしろ家族やボランティアの活用を意識する者が多い。現在推進されている「地域包括ケア」では介護保険サービスとインフォーマルケアを連携することが必要である。教養型講座受講者の中では、ボランティア活動経験者が多い。活動経験の豊富な「団塊世代」が、介護領域のボランティア活動に主体的に参加するシステムを構築すれば、見守り、移動支援、権利擁護などの活動への参加に発展する可能性のあることが明らかになった。


高齢者の高齢者による学習講座企画・運営に関するモデル構築のためのアクションリサーチ
研究代表者NPO法人大阪府高齢者大学 長井美知夫

共同研究者
NPO法人大阪府高齢者大学 佐藤宏一
NPO法人大阪府高齢者大学 船本幸二
NPO法人大阪府高齢者大学 永田得祐
NPO法人大阪府高齢者大学 杉本孝三
甲子園大学心理学部 藤田綾子

■要旨
高齢者による高齢者のための高齢者大学を企画・運営する基礎的資料を得る目的で行った。
調査協力者は行政主導で行われてきた高齢者大学修了者657名である。結果、高齢者大学は仲間を作ること、社会貢献についての重要性(プロダクティブ・エイジング志向性)を学ぶことに影響を与えた。修了者の生活満足度は、仲間の存在、プロダクティブ・エイジング志向性、健康、社会参加活動と関連していることが明らかになった。


B.健康の維持・増進関係
(1)2009年度1年助成
認知症を生きる高齢者の生のありようと認知症高齢者のスピリチュアルケアに関する研究―認知症高齢者の「パーソンフッド」の尊重を手がかりとして―
研究代表者同志社大学大学院社会学研究科社会福祉学専攻 博士後期課程 市瀬晶子
■要旨
認知症高齢者のケアにおいて、英国の心理学者Kitwoodは、人間の尊厳の根拠を理性や自律性の能力におく理性の偏重をこえて、認知症の人の尊厳を保障していこうとするありかたを提唱した。本研究は、認知症高齢者の「パーソンフッド」の尊重を手がかりとして、理性能力を必要条件としない認知症高齢者のスピリチュアルケアのありかたを探究する。介護老人福祉施設における関与観察を通して得られたエピソードからは、周囲から肯定的な反応を引き出すことができるという、その人が与える印象から「人」を承認しているのが私たちの自明性と考えられる。その一方、人間であることによるありのままの弱さを通して他者との人格的な連帯が生み出されていくありようが考察された。


結核に罹患した釜ヶ崎居住単身高齢者の健康・生活実態に基づくエンパワーメント方策の検討およびその健康維持・増進への効果に関する実践的研究
研究代表者 四天王寺大学人文社会学部 教授 逢坂隆子

共同研究者
関西大学社会安全学部 高鳥毛敏雄
関西大学人間健康学部 黒田研二
NPO HEALTH SUPPORT OSAKA 山本繁
NPO HEALTH SUPPORT OSAKA 井戸武實
NPO HEALTH SUPPORT OSAKA 大宮陽子

■要旨
大阪市西成区の釜ヶ崎(あいりん地区ともいう)は、日本最大の寄せ場であり、2万〜3万の土木・建設日雇労働者が居住しているといわれていたが、経済不況と労働者の高齢化により、野宿を余儀なくされるものが増加した。長引く野宿生活は高齢化とあいまって、健康破綻を招き、結核に罹患する者も多く、罹患率は全国平均の約30倍にも達する。このため、治療中断しがちな釜ヶ崎日雇労働者・ホームレス等の結核患者の治療完了を増やすことにより、蔓延防止、耐性菌の発生防止をはかるため、大阪市はあいりんDOTS1)2)3)を実施している。そのうち訪問型のDOTS(訪問DOTS)をNPO HEALTH SUPPORT OSAKA(HESO)が大阪市から委託を受けて行なっている。
本研究・調査は、HESOが釜ヶ崎において訪問によるDOTSをおこなっている、単身高齢結核患者の健康と生活の実態を明らかにするとともに、定期的・継続的な訪問が服薬支援のみならず、対象者をエンパワーメントし、生活や健康への意識・生活行動の変容を起こすことを実証した。


地域在住の運動障害を伴う高齢者のための包括的転倒予防システムの開発と転倒リスク評価手法の確立

研究代表者兵庫県立西播磨総合リハビリテーションセンター リハビリテーション西播磨病院 内科 加藤順一

共同研究者
兵庫県立西播磨総合リハビリテーションセンター リハビリテーション西播磨病院 リハビリ療法部 前田慶明
兵庫県立西播磨総合リハビリテーションセンター リハビリテーション西播磨病院 リハビリ療法部 糸谷圭介
兵庫県立西播磨総合リハビリテーションセンター リハビリテーション西播磨病院 リハビリ療法部 大西邦博

■要旨
本研究の目的は、脳血管障害患者(CVA者)を対象に、椅子からの起立動作に着目し、その動作時の身体動揺に関する転倒の影響を周波数成分の解析により明確にし、その動作特性の経時的な変化の様相から、転倒予測を判断するための評価手法を確立することである。対象はCVA者14名とし、非転倒群と転倒群の2群に分類した。方法として、床反力計上で椅子からの起立動作を行い、その時の垂直成分の周波数成分解析を実施するとともに、歩行能力やバランス能力の評価を実施した。その結果、転倒者は非転倒者と比較し、起立動作の所要時間が延長し、また起立終了後の身体動揺が増大した。このことより、CVA者の転倒を予測する上で起立動作時の身体動揺は有用な指標となり、歩行能力やバランス能力にも密接に関係している可能性が示唆された。


高齢者のための安全な運動プログラムの開発とその作用機序に関する研究

研究代表者京都大学大学院医学研究科・人間健康科学系専攻 教授 三谷章

共同研究者
京都大学大学院医学研究科 中村めぐみ
京都大学大学院医学研究科 松林潤
京都大学大学院医学研究科 木内隆裕
京都大学大学院医学研究科 南千尋
京都大学大学院医学研究科 冨永渉

■要旨
通所介護保険施設等の介護職員が高齢者に安全に指導・実施できる椅子座位運動プログラムを考案し、市内地域包括支援センターなどに通所している高齢者(要支援、要介護1、2の介護認定を受けている者および認定を受けていない者)を対象にその効果を検討した。
週1回、9種類の下肢運動を椅子座位にておこなう椅子座位運動プログラムを約6ヶ月間実施した。その際、下肢にはラバーバンドを装着し、運動負荷を加えた。運動プログラム開始前と6ヶ月間の運動プログラム終了後にその身体機能(股関節屈曲・伸展・外転、膝関節伸展・屈曲、足関節背屈の各運動の等尺性最大筋力、歩行能力、バランス能力)および日常生活機能(FIM、健康関連QOL)を評価した。
その結果、本プログラムは介護認定を受けた在宅高齢者のバランス能力(Berg Balance Scaleによって測定)と股関節筋力(ハンドヘルドダイナモメーターによって測定)を有意に向上させる効果を有することが示された。


(2)2008年度2年助成
高血圧・肥満男性を対象とした遺伝子診断を用いた、参加型健康教育の実施

研究代表者
京都府立大学大学院生命環境科学研究科 応用生命科学専攻健康科学研究室 教授 東あかね

共同研究者
京都府立大学大学院生命環境科学研究科 応用生命科学専攻健康科学研究室 北岡かおり
京都府立大学大学院生命環境科学研究科 応用生命科学専攻健康科学研究室 和田小依里
京都府立大学大学院生命環境科学研究科 応用生命科学専攻健康科学研究室 青井渉
独立法人国立病院機構京都医療センター臨床研究センター予防医学研究部 坂根直樹

■要旨
中高年男性を対象に高血圧・肥満の改善をめざし遺伝子診断に基づいた健康教育を実施した。対象者の希望により介入群59名、対照群35名に割り付けた。介入群には5ヶ月間で計5回、食事と運動指導を行うセミナーを実施し、身体測定、血液検査、早朝第2尿による尿検査、食生活習慣に関するアンケートを教育前後に行った。対照群には検査およびアンケートのみを行った。介入群はBMI、血圧、血清脂質が有意に低下した。対照群との変化量の差はBMIが-0.3(95%信頼区間: -0.5, -0.03)、Na/ K比-0.7(-1.1, -0.2)であった。介入群のβ3-AR受容体遺伝子多型の変異あり群と変異なし群との変化量の差は体重 -0.5kg(-1.3, 0.4)、腹囲 -1.3cm(-3.4, 0.8)、TC -11.3mg/ dl(-20.5, -2.1)、TG -31.4 mg/ dl(-59.7, -3.0)、LDL-C -6.8mg/ dl(-14.1, 0.5)であり、変異あり群の方が血清脂質は有意に改善した。


高齢者の潜在的抑うつ傾向と語音聴取能の中枢における相互作用

研究代表者 京都大学大学院医学研究科耳鼻咽喉科頭頸部外科 助教 平海晴一

共同研究者
京都大学大学院医学研究科耳鼻咽喉科頭頸部外科 教授 伊藤壽一
田附興風会医学研究所北野病院 部長 金丸眞一
高次脳機能総合研究センター 助教 松橋眞生

■要旨
高齢者において、振幅変調した背景雑音下での聴性誘発脳磁場を計測して若年者と比較するとともに、日本語版自己評価式抑うつ性尺度で計測した潜在的抑うつ傾向が大脳半球での左右差におよぼす影響を検討した。振幅変調した背景雑音下で信号音を抽出する際の脳内機構は、若年者においては右半球優位に反応を認めた。一方、高齢者においてはこの右半球の優位性が失われていた。日本語版自己評価式抑うつ性尺度で抑うつ傾向を示した被験者では、より右半球での反応が低下しており、高齢者においては潜在的抑うつ傾向が雑音下での聞き取りに影響を及ぼしている可能性が示唆された。

C.分野横断的課題関係

(1)2009年度1年助成
施設利用高齢者の重度・重症化へ対応した、特別養護老人ホームにおける看取りの制度的構築に関する研究
研究代表者武庫川女子大学文学部 大西次郎
■要旨
特別養護老人ホーム(以下特養)をはじめとする介護保険施設において、利用者の終末期を施設内部で看取ろうとする動きが活発化している。これは、療養環境の変化と利用者・家族のニーズの高まりを反映した、受動的な取り組みの側面がある。
今後、看取りを推進する特養には一貫した施設ケアを望む利用者・家族、そうでない施設には病院への搬送を期する利用者・家族という棲み分けが生じ、高齢者向け施設は終末期対応に積極的な施設と、そうでない施設へ分化していくものと考える。
施設における看取りを後押しする制度上の改善策は二つの方向性と、各々の限界がある。一つは介護保険サービスを最低限度の担保と捉え、それを超えるケアの自費による併給を認めること、もう一つはケアの質が高い事業者へ、介護報酬を傾斜配分することである。
サービスの併給は混合診療に抵触する。ただし介護保険制度下の在宅ケアに限って、公費限度額以上を私費で賄うことが可能であり、前者はそれを施設ケアへ適応しようとするものである。この場合、所得格差を施設サービスへ持ち込む懸念がある。後者の傾斜配分については、看取りを全ての利用者が希求するとは限らないことから、施設が提供するサービスを多軸的に評定する仕組みが欠かせない。その一つの因子として、看取りが勘案されるべきである。この場合、利用者の自己負担増や、それに伴う受給の手控えが危惧される。
看取りは人生の終焉に提供される福祉、介護、医療、看護を包括したサービスであり、医療や看護はその一部にすぎない。将来、特養の看取りに供する医療や看護面の基盤整備は、介護報酬上の裏づけを得て、財政的な折合いとサービス向上の両立を果たす可能性があるが、施設内の医療や看護職・設備の強化のみをもって看取りの拡充を図ることは容易でない。在宅療養支援診療所の活用や役割の拡大、機能別協力医療機関の設置努力、施設利用前のかかりつけ医の継続診療など柔軟な対応が必要である。

在宅高齢者ケアにおける訪問看護事業所、訪問介護事業所、居宅介護支援事業所のチームアプローチに関連する要因分析―事業所の管理・運営および経営状況に焦点を当てて―
研究代表者香川大学医学部看護学科 教授 松井妙子

共同研究者
梅花女子大学現代人間学部人間福祉学科 准教授 綾部貴子
京都女子大学家政学部生活福祉学科 准教授 原田由美子
四天王寺大学人文社会学部人間福祉学科 准教授 鳥海直美

■要旨
研究目的は、訪問看護、訪問介護、居宅介護支援事業所の専門職を対象とし、チーム活動が行える事業所はどのような特徴を有しているのかを明らかにすることである。
近畿圏の訪問看護、訪問介護、居宅介護支援事業所の計1,500か所を無作為抽出し、無記名自記式質問紙を郵送した。有効回収数は782票(52.1%)であった。
チーム活動の実践度と関連する要因は、雇用形態、在宅・地域における経験年数、身近な人の介護体験、研修体制、正規職員の退職者数、職場の良好な人間関係、連携・調整業務のための時間や余裕、家族・利用者との良好な関係などであった。チーム活動の実践度を向上するには、雇用形態の常勤化、在宅・地域における経験年数や介護体験を補う研修の企画、上司・同僚との関係、利用者との良好な関係の保持、良好な経営状況、連携や他機関・他職種との調整業務を行う時間的余裕の保障といった職場環境を作ることが求められる。
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