
2023年11月19日(日)
少ないチャンスを活かし、大阪ガスが決勝へ
近畿勢同士の対決は、少ないチャンスをモノにした大阪ガスが勝利。2回にエラー絡みで先制をゆるしたが、3回に一番・橋本典之選手のソロホームランですかさず同点に追いつくと、二番・峰下智弘選手がヒットで出塁したのを、四番・三井健右選手の犠牲フライで逆転に成功した。投げては、エース、稲垣豪人投手が8回を投げて被安打2と好投、少ないリードを守り抜いた。
嫌なムードだった。2回に2アウトからエラー絡みで1点を献上、その裏の攻撃は、ランナーを3塁まで進めながら無得点。チャンスを逃すとそのまま相手ペースで運ばれ負ける試合をこれまで何度か見てきた。だが、今の大阪ガスは違う。3回に橋本選手が鮮やかなアーチを放ち同点に追いつき、嫌なムードを払しょくした。若手が活躍すると、ベテランも黙ってはいない。二番・峰下智弘選手がヒットで出塁すると、相手投手の牽制エラーの間に三塁へ到達する好走を見せた。結果、四番・三井選手のレフトフライが犠牲フライとなった。まさに峰下選手の走塁が効いた格好だ。その後、8回まで追加点が取れず苦労したことを考えれば、好走塁をみせた峰下選手の攻撃姿勢は大きかった。まさにベテラン選手の成せる業だ。この一体感が、劣勢になっても崩れないチームの強さとなっている。
エース稲垣、圧巻のピッチング
稲垣投手は2回戦に続き、中2日での登板。前回は139球を投げ、完投している。疲れがないはずがない。それでも8回を投げ被安打2と、エースの意地を見せた。味方打線がチャンスを活かせなかった直後の3回は、ギアを上げたようにも見えた。バッテリーを組む高橋選手は、「力強い球がきていたので、いつも通り攻めていった」と話す。ただ、三振を多く取りに行った前回とは違い、今回は打ち取る戦法だった。相手打線はインコース攻めが頭に入っていて体が開いていた分、アウトコースを上手く使い、結果、ポップフライや良い当たりをされても正面に行った。作戦通りに打ち取れたのも、コントロールがあってこそ。「相手を術中にはめたというよりは、稲垣が本当によく投げてくれた、それだけだと思います」。
前田孝介監督の談話
「先を見ずに目の前の1勝を稲垣に託した。できるだけ点差をつけて早めに継投へ入りたいところだったが、思うように得点できず投手交代が難しくなった。2試合連続完投もなくはなかったが、さすがにボールが抜けてきたので。何とか7回までもってくれたらというところを8回までよく頑張ってくれた。あの粘りだね。
嫌な形で点を献上してしまったが、今日は橋本の1本に救われた。嫌なムードを短い時間で払しょくできたのはやはり大きい。前回の高波同様、若い力がやってくれた。
日本一まであと一つまで辿り着きました。決勝の相手のホンダ熊本は、強力打線なうえ、投手力のある、隙の無いチーム。うちはスーパースターがいるわけではないし、総動員で戦うのみ。これまでもそれで勝ってきた。いつも通りを崩さず、今季、特に夏以降に立て直してきたチームの集大成となる試合を見せたい」
最終回にマウンドを任された守護神、宮本大勢投手
大会4試合目にして初のマウンドへ。リードは2点と接戦だったが、「やっと出番が来た」と、ワクワクした気持ちでマウンドに立てたという。躍動感ある投球フォームは、その喜びを表しているかのようだった。気持ちが乗って、先頭打者にこそヒットを打たれたもののダブルプレーでチャンスの芽を摘み、リードを守り抜いた。
出番がなかったのは、同い年の稲垣、大宮投手の活躍が目覚ましいから。そんな2人の投球に、大舞台で投げられている羨ましさと凄さを感じながら見ていた。凄さを認めるには理由がある。
今夏、都市対抗の補強選手を終えチームへ戻ってくると、今まで以上にハードな練習が待っていた。「相当きついんです。でも、僕が(補強で)抜けている間、彼らは毎日やり続けていたんですよね」。その姿は、野手との信頼関係も築いた。それは尊敬の念が湧くはずだ。
先発にこだわる2人と違って、宮本選手は自ら抑えを志願。短いイニングの方が力強いストレートを活かせると思ったからだ。夏から秋へ、自身も進化させた。「僕が投げるときは、ピンチのとき。『ここは1点がしょうがない』ではなく、投げるからには絶対にゼロに抑えます」。負けん気をちらりと見せた。
同点ホームランで試合を振り出しに 橋本典之選手
迷いなく振り抜いた一発だった。打球は高い角度で上がりグングン伸びてライトスタンドへ。1点ビハインドで迎えた3回、橋本選手の1本で試合を振り出しに戻した。
1回戦で2ベースを含む2本のヒットを放ち、波に乗るかと思われたが、2回戦以降、無安打に終わっていた。「思うようにバットが振れていませんでした」と振り返る。室屋太郎選手に、ベンチから自分の打席がどう見えているのかのアドバイスを求めた。「打ちに行く姿勢やスイングは悪くないが、どのコースに手を出そうかを迷っているようだ。その分、振りが鈍くなっている」と言われたという。室屋選手からのアドバイスは、「迷わずどんどん振っていけ」だった。それに従い、迷わず強振した結果、生まれたホームラン。「手応えはありました。試合であんなに綺麗に打てたのは、これが初めてじゃないかな」。表情を崩さずダイヤモンドを1周したが、ベンチに帰ってくると小躍りしながらチームメイトとタッチを交わし、スタンドへ向かったガッツポーズと喜びを爆発させた。試合後、あの1本で、良い形でボールが見えてきたと話す。決勝戦でもダイヤモンドを駆け巡る姿が期待できそうだ。