
どん底から這い上がり掴んだ日本選手権出場
新生大阪ガス硬式野球部の意地を見せると誓う
悔しい都市対抗予選敗退を乗り越え、日本選手権大会出場を勝ち取りました。「負けたからこそ見えた景色があった」と語る前田孝介監督に、いかにチームを立て直したか、日本選手権への意気込みを聞きました。
―― 日本選手権出場、おめでとうございます
ありがとうございます。6月10日に都市対抗予選で敗退してから、日本選手権の出場を決めた9月15日まで3カ月。実に長かったですね。この間は選手たちにとって相当つらかったと思いますが、歯を食いしばってよく頑張ってくれました。今回の予選までに新しい戦力が台頭し、チームがうまく機能し始め、出場権を獲得することができたと思っています。
―― 今季のチーム状況はいかがだったのでしょうか
まずは、都市対抗予選に敗退したという現実を受け止めるところからでした。今季は、エースだった河野が抜けた後を埋める新たな軸を担うのは誰なのか、というところからのスタートでしたが、結果的には不在のまま都市対抗の予選に突入してしまった。その不安が攻撃にも影響し、先制点を取れずに相手に主導権を握られ、苦しいまま敗戦するという、投打が噛み合わないままに終わってしまった。打線についても、予選に負けた試合は全て完封という屈辱的な結果に、甘かったなという思いです。この現実を受け止め、チームを一度フラットな状態に戻し、立て直さなければいけない状況でした。
―― どのように立て直しをはかったのでしょうか
練習試合を30試合する中で、レギュラー、非レギュラー関係なく、全員に出場機会を与え、競争してもらいました。負けたら終わるという大一番で、「俺がチームを勝たせる」という強い気持ちのある選手が出てこないと、特に短期決戦では勝てません。チームをフラットな状態にしたこのチャンスに、「それは俺だ」と名乗りを挙げる選手が出てきてほしかったからです。
都市対抗には7人の選手が補強選手に呼んでいただきました。残っていた選手たちの中には、補強選手に負けたくなかったのでしょう、夜9時まで必死にバットを振った者もいたし、かなりの練習量を積んでいた姿が目に焼きついています。
また、戦術を見直すために、選手との意見交換にかなりの時間を割きました。試合を振り返りながら、例えば「あそこはバントでランナーを進め相手にプレッシャーをかけたかった」など、かなり細かい場面に踏み込んで選手たちの考えを聞きました。「劣勢になったときにみんなが一つになる言葉や行動がこのチームには足らないのではないか」といった意見も出ましたね。こちらの意図も伝え、互いに腹の中の思いをぶつけ合ったというか。補強選手たちが戻ってからは、他チームで感じたことを詳しく伝えてもらい、何が取り入れられるのかなど、本当に長い時間をかけて話し合いました。
―― 今回の予選では、新戦力の活躍も光りました
これまで中継ぎだった稲垣に初戦と代表決定戦で先発を任せました。彼は、大学時代、先発、完投型で、何より、責任投手を担っていました。投手はマウンド上では孤独です。自ら投げるボールが勝敗を分けるうえに誰にも助けてもらえない状況に耐えうるメンタルの持ち主です。豪速球はないが、大一番でしっかり腕を振って自分のボールを投げてくれました。抑えで起用した大宮も含め、この夏に新しい軸となるべく名乗りをあげた選手だと思っています。
野手では、花本や清水のように期待通りの働きを見せてくれた選手の他にも、室屋や吉澤、杉内も貢献してくれ、彼らが新たな戦力として育ってきたことで、チーム内に高いレベルでの競争が生まれ、今回の出場につながったとみています。
―― 本戦で勝ち上がるには、何が必要ですか
本戦でもこのまま勝ち上がれるほど甘くないです。優勝するには5試合全勝が条件。特に準々決勝からの3連戦での投手の組み立ては難しい。ただ、予選の戦いぶりを振り返ると、先制点を取り、豪速球はなくとも一球ごとに丁寧に投げた稲垣の結果には、手応えは感じています。あとは、ミスなく、そしてベストコンディションで臨むことと、「日本一になるんだ」という強い気持ちをどれだけ持てるか、ですね。
―― 本戦でのチーム編成はどのようにお考えですか
選手たちにはもう一度、レギュラーを競わせています。大会までに12試合ある練習試合で再び全員に出場機会を設け、その結果を重視したいと思います。チーム全員が納得した先発メンバーで臨みたい。開幕投手を誰が務めるのかも現時点では未定です。練習試合でのアピールを待っているところです。
―― 最後に、大会へ向けて意気込みをお願いします
都市対抗予選敗退というどん底を味わい、這い上がり手にした日本選手権への切符。このメンバーで臨む唯一の大舞台です。本戦では一つでも多く勝って、このチームの意地をお見せしたいです。応援をよろしくお願いします。