
2021年07月15日(木)
機動力野球と守り勝つ野球を融合し、連覇達成!
2対2の同点で迎えた5回、九番・鳥飼選手、二番・児玉選手をランナーに置いて、三番・峰下選手が右中間を抜く2ベースヒットで1点を奪うと、四番・末包選手がライト前にタイムリーヒットを放ち1点を追加、2点のリードを奪った。
投げては、先発・秋山投手が、強力打線を持つ三菱重Eastを2点に抑えると、エース阪本、MVPに輝いた河野投手ら豪華リレーで追随を許さず、見事、優勝を勝ち取り、二連覇を達成した。
大阪ガスが、大会二連覇を成し遂げた。大会史上3チーム目という偉業だ。
全5試合を振り返ると、投打のバランスがとれていた。準々決勝までの無得点はもちろんのこと、準決勝、決勝でも2失点と、投手陣の奮闘が光る。19回無失点という結果を出した河野投手をはじめ、大一番で安定したピッチングを披露した阪本投手らがチームに安心感を与え、攻撃にリズムをつくった。前田監督が提唱する「投手を含めた守り勝つ野球」を見せつけた。
これまで培ってきた機動力野球も忘れてはいなかった。「一塁にいても点は入らない。一つでも前の塁を目指す」方針で、選手たちがノーサインで盗塁を試みる姿勢は健在だった。失敗しても「ナイストライ!」。そんな声掛けも変わらない。
足がある、左ピッチャーにはめっぽう強いなど、途中出場の選手を巧みに使い分けた適材適所の起用法もズバリ的中、常に大阪ガスらしく、戦力総動員で戦った。
ベテランと若手、機動力と守り勝つ野球といった、従来と新たな戦力とを融合させた新しいスタイルが、優勝、二連覇という功績をもたらした。
前田監督の談話
「同点に追いつかれたが焦りはなかった。早いタイミングで追加点を奪えたので、楽に展開できた。今日のポイントは、7回、1アウト満塁のピンチを無得点におさえたところ。3連打で一気に塁が詰まったが、阪本は昨日以上のピッチングをしていると感じていたから、そこでの継投は考えなかった。あそこを切り抜けたことが大きかった。
今日は、はじめから秋山から阪本、河野への継投策でいくつもりだった。秋山の3回までは想定内。長打力ある相手打線を2点で抑えたのだから、よく投げた。阪本は、前日のホンダ戦の力で押すのとは違い、丁寧につくピッチングが良かった。河野ももちろん良かった。
大会前までの公式戦の結果は、平均5得点で2失点。投手陣が2点までにおさえてくれたら、うちの打力だと4、5点を奪えるだろうから勝てる、と、あくまでデータ上の話ですが、そういう計算はあった。準決勝のホンダ、決勝の三菱重East戦はまさに2失点に抑えての勝利。データ通りということにはなるが、5試合を振り返って29得点、4失点は出来過ぎ。平均6得点、失点に関しては(準々決勝まで無失点で)0点代ですからね。それだけ投手陣が良く投げたし、打線がそれに応えたということ。
優勝できたのは、選手が良くやってくれた、それに尽きる。しかし、スタッフも非常によくやってくれた。コーチ陣が、選手たちに『自分たちはやれる』、『絶対いける』と上手に自信を持たせてくれたこと、マネージャー、トレーナーが野球に集中できる環境を作ってくれた賜物でもある。就任半年の私が、簡単に成し得らることではない。恵まれていたと思う。
橋口前監督が、“絶対に勝つ”と明確な意思を掲げてきた下で、チームは強くなってきた。それに乗って、常勝チームを作っていく。
まずは、都市対抗。今のメンバーで戦えるのは、今年だけ。選手たちには、『令和3年度に、二度の日本一を成し遂げる』と宣言している。さっそく、都市対抗野球へ向けて始動したいと思う。
みなさんには、これまでの応援に非常に感謝申し上げるとともに、今後も、ご声援をよろしくお願いいたします」
決勝点を叩き出し、最後まで頼れる主将だった峰下キャプテン
今日もキャプテンの活躍が光った。5回に決勝点となる、勝ち越しタイムリーを放った。
三菱重工East先発の大野投手は、相手チームのエース。それでも「全員序盤からタイミングが合っていたので、いける」と思っていた。その通り2回に先制すると3回にも追加点をあげ2点のリードを奪った。しかし、直後に同点に追いつかれる。流れをやるまいと、こちらも4回からエース阪本投手を投入。
5回に2打席連続ヒットの九番・鳥飼選手と、二番・児玉選手を塁に置いた場面で打順が回ってきた。「絶対に打つ」と言い聞かせ、打席に立った。待っていたのは、ストレート。大野投手はここまで変化球中心に投げ込んできていたが、「そういうタイプのピッチャーに限って、ピンチなら裏をかいてストレートを投げてくる」と思ったからだ。読みは的中し、甘く入ったストレートを右中間に持って行った。鳥飼選手が生還し勝ち越しに成功、流れを大阪ガスへ呼び戻した。
自らのバットで優勝、そして二連覇を手繰り寄せ、開幕式で返還したダイヤモンド旗を再び手にした。「何度手にしてもいいものです」と思わず笑顔に。しかし「二連覇できたのは、昨年の都市対抗での悔しい負けがあったから」とも。「これで満足せずに、また一からチームを作り」、都市対抗でも日本一になるつもりだ。
峰下キャプテンからのメッセージ
「応援に制限が掛かる中、連日、スタンドに大勢の方が詰めかけてくださいました。みなさんからの精一杯の拍手が、僕たちの力になっていたのは間違いありません。新しい応援のスタイルに、今までにない興奮を覚え、嬉しかったです。本当にありがとうございました」
MVPに輝いた河野投手
1,2回戦に先発、チームを勢いに乗せ、連投となった準決勝、決勝戦にも、クローザーとしてマウンドに登るなど大活躍。19回無失点の堂々とした成績で見事、大会MVPに輝いた。
試合後に行われた優勝インタビューで「鳥飼さんのおかげ」と答えた。真意を尋ねると「謙虚とかでなく、本当だからです」と話した。
自分で考えた通りに投げたくて、サインに首を振る癖があった。大会前、「鳥飼さんから『俺のサインに首を振るな』と言われた」というが、そもそも首を振るようなサインは一つもなかったと振り返る。そうなるまでのコミュニケーションをしっかりとってくれていたことへも、本当に感謝していると話す。
大会を通じて自身がいけると感じたのは、初戦。相手チームの四番打者から、2つの三振を奪い、ランナーを置いた場面での打席では、フォアボールで出塁を許したものの、短絡的に勝負してヒットされなかったことに自信を深めた。成長著しい19歳。これからがますます楽しみだ。
打撃賞を獲得、四番としての風格が増した末包選手
全5試合で20打数9安打7打点。文句なしの受賞だ。決勝戦でも2点目と4点目を叩き出した。「甘くきたところを逃さず振った。勝利に貢献できて良かった」。
大会前は、決して調子は良くはなかった。1回戦でヒット1本を放ち手ごたえを掴むと、尻上がりに調子が上がり、四番として十分な結果を出した。二連覇の立役者なのは言うまでもないが、「前回優勝は、ひと試合も出場できなかった自分が本当に悔しくて」、優勝インタビュー中、思わず涙ぐんだ。「これで真の優勝メンバーになれた」気がした。
走る姿も印象的だった。バッターランナーとしての果敢な走塁はもちろん、大会中2盗塁を決めるなど、意外性も見せた。打つことだけに満足しない、新しいタイプの四番打者として、大阪ガス硬式野球部をますます強くしていってくれそうだ。
涙したことを隠すように、インタビューの最後はおどけて見せたが、根は真面目な選手だ。会社への感謝も忘れない。「まずは、野球をやらせてくださっている大阪ガスに感謝しています。感謝の気持ちを、優勝という目に見える形で返せたことが何より嬉しいです」