渡邉監督インタビュー

 大阪ガス陸上部は、11月9日に和歌山県龍神村で行われた「第67回関西実業団対抗駅伝大会(以下、龍神)」で3位に入り、2025年元日に群馬県高崎市で行われる「第68回全日本実業団対抗駅伝競走大会(以下ニューイヤー駅伝)出場を決めました。陸上部、渡邉浩二監督に龍神での戦いぶりやニューイヤー駅伝への抱負を聞きました。

渡邉 浩二 監督

――― 2区、中村友哉キャプテンが流れを引きもどしてくれた 

 1区の目片将大選手が6位と出遅れましたが、2区の中村友哉選手が日本人選手のみならず外国人選手も抜き去り3位まで押し上げ、一気に流れを引き戻してくれました。通常なら、遅れを取り戻そうとしてオーバーペースで入り、終盤失速するという展開になりがちなところをキャプテンとしての役割をしっかりと果たしてくれたおかげで、3区以降は落ち着いたレース運びができました。
 実は目片選手は、走行中に足の指が骨折していたことが判明しました。そんな中でよくタスキを繋いでくれたし、その想いを十分に感じたからこその中村選手の走りだったように思います。

 3区を走った坂東剛選手は、試走でペース配分を掴み、その計画通りの走りを見せてくれました。本番では4位のNTT西日本さんに追いつかれたとき、本人は「風よけ対策として付いて後ろに付いて走れば良かったのかもしれない」と反省していましたが、気持ちを抑えて設定タイムを刻み続けたことでペースが落ちず、結果、いい位置で4区へ繋いでくれました。このとき5位を走っていた住友電工の阿部弘輝選手には実力的には追いつかれても不思議はない選手にもかかわらず、実際は差を広げました。これが効いて、4区で住電さんに抜かれたものの大きな差とならずに5区の逆転劇に繋がったのだと感じています。

――― 各選手の粘りが5区西選手の逆転劇を生んだ 

 その4区での井上大輝選手は、日差しが強く気温が20℃を超える厳しいコンディションの中でのレースを頑張ってくれました。4位に15秒差と、前を行く選手が見える範囲内で西選手へタスキを繋いでくれたことは非常に大事でした。
 5位から2位へ押し上げた西研人選手へは、もともと期待していましたが、まさかあそこまで前半から行ってくれるとは思っていませんでした。10キロあたりで2位グループに追いつければ良いと考えていたところを、5キロで追いついてくれました。前半に突っ込んで、中盤は耐えて、後半さらに引き離すというレース展開は本当に力がないとできない走りです。西選手が走った5区は、最初の5キロは下り、後半は上りというコース。前を追って序盤でつい飛ばすと後半にばててしまうため、入りは我慢して後半上げていくよう伝えていたところをあの走りですから。
 同じ5区を走ったNTT西日本の一色恭志選手は、昨年5区の区間賞選手で、後半に強い選手。その一色選手を置き去りにして、大塚製薬の相馬崇史選手との競り合いにも勝ち、他チームの6区、7区に大きなプレッシャーを与えたと思います。

――― 全員がレース運びを考えた走りを見せた 

 昨年と同じ6区を任せた2年目の堀畑佳吾選手は、大会前から調子が上向きで、昨年以上のタイムで走ってくれました。順位は3位に落としたものの、設定通りにタイムを刻み、5区で4位となったNTT西日本さんが猛追してくるところをさらに差を広げたことは大きかったと思います。彼の力が発揮できた証だと思います。

 アンカーの辻村公佑選手も気の抜けない展開の中で、最後まで落ち着いて走ってくれました。彼は本来、上りが得意なランナー。7区は下り基調ですから、本人の希望とは違ったかもしれませんが、チームの為に走り、3位を守り抜いてくれました。
 4位で通過したNTT西日本・服部弾馬選手は、24年のニューイヤーで1区を区間2位、5位通過の住友電工・田村和希選手は、3区区間2位と実力者たちが後ろから迫ってくる中で、自分を見失わず設定タイムを刻めたことは、プレッシャーに打ち勝ったということです。
 辻村選手はマラソン経験もあり、数多くの修羅場をくぐってきている選手です。何より駅伝で失敗したことがないのが強み。一番プレッシャーのかかるアンカーに彼が適任だと思いましたが、その通りでした。

――― 好調なチーム状況が好成績を生んだ。この勢いを2025年元日でも 

 今回の結果を出せた要因は2つあると思います。
 ひとつは、メンバー変更なくベストな布陣で臨めたことです。競り合いが得意な選手や、単独走を苦にしない選手といったタイプの見極め、選手たちの希望とをすり合わせて配置を決めます。選手らは、任されたコースを繰り返し試走して当日に臨みますが、ひとり体調不具合者が出ると、メンバーの入れ替わりや配置転換が起こり状況は変わってきます。今年は、故障者が出ずに本番を迎えられたことは大きかったです。

 もう一つは、チームの雰囲気です。龍神では選手自らが3位目標と決めました。それに向けて、これまで以上に陸上に時間をかけようと選手同士で話し合ってやってきました。出場チームの顔ぶれを見ると、大阪ガスがニューイヤー駅伝出場圏内に入ることは非常に厳しい現状でしたが、中村キャプテンのもとでチームが一丸となり、勝ち取った結果だと思います。中村選手が坂東選手へタスキを渡す瞬間に鼓舞していましたが、チーム全体を押し上げたと思います。

 今回のニューイヤー駅伝での順位目標を、選手たちで話し合って決めました。10番台を目指し、関西地区の出場枠を5に戻すことです。現在の選手たちの調子やチームのムードは、非常に良いです。好調をキープし、龍神のときのように自分たちのレースができるよう、気を抜かず調整していきたいと思っています。日頃から応援してくださっている皆さまに、元日に力強い走りをお見せできるよう、頑張ります。