小坂田 淳監督に、日本選手権でのレースを振り返りつつ、坂井選手について解説していただきました。
今回の快挙は、坂井選手の努力の賜物。入社以来、練習のし過ぎでケガに泣かされてきた坂井選手ですが、この冬は、その心配なく、良い練習を積んでこられたと思います。
彼の練習量は誰よりも豊富、そして独特です。走る練習をする選手が多い中、坂井選手の場合、ドリルと呼ばれる、走る動きのもととなる基礎動作のトレーニングにかなりの時間を割きます。もし練習見学会をしたなら、見学者は退屈してしまいそうな(笑)、同じ動きを繰り返すばかりの地味な練習を欠かしません。そうして、他の選手が練習を終える頃にようやく走り始めるほどです。
ウエイトトレーニングも非常に熱心で、ユニフォーム姿を見たことのなかった職場の方々が、今回の日本選手権で初めて筋肉隆々な坂井選手を目にしてビックリしていたようですね(笑)
坂井選手の持ち味は、スタートの良さと圧倒的なピッチの速さ、そして何より同じ動きができること。例えば、運動会などの競争で、他の走者に横に並ばれると動きが硬くなったりしませんか? 坂井選手はそういうことがない。だから、日本選手権で、他の選手が硬くなり動きが鈍ったのとは裏腹に、坂井選手はむしろ後半も伸びたし、サニブラウン選手に並ばれても硬くならず、さらに3位以下の選手を引き離しました。結果、2位でしたが、あのレースでのインパクトの強さは1位だったでしょうね(笑) それくらい、見事なレースでした。
日本選手権明けの月曜日に、終わったはずの朝礼を彼のためにもう一度開いて下さるなど、坂井選手は社内でこれほどまでに愛されているのかと嬉しかったですね。笑顔も良いし、ひたむきな雰囲気がその理由なのか。また、彼の上司が、いつも非常に盛り立てて下さっているんですよね。我々陸上部としても非常にありがたいことです。
一度、海外を知ると、必ず上昇志向が芽生えます。今後も見据えて、世界での自分の立ち位置を確かめてきて欲しいですね。持ち味を発揮できれば、十分に良いレースができると思います。
小坂田淳監督に河内選手について聞きました。
河内選手との出会いは、彼が大学生の時。当初は、もの凄く粗削りの選手という印象でした。まず、背が高いという体格を活かさない手はないと、ピッチ走法からストライド走法へと指導しました。もともと良いポテンシャルを持っているので、今では、素晴らしい走りができていると思います。
今年は5月頃まで調子が良いはずなのに本番で上がってこない状況が続き、6月の日本選手権まで、全力疾走する練習を止めるなど、試行錯誤を繰り返し対策してきました。そうして臨んだ日本選手権は、私が思った以上の結果でした。400mは、全力疾走で走り切ることができない競技です。スタートから全力疾走すると最後は必ず失速します。速く走りながらペース配分を上手く、ゴール地点できれいに枯渇できるように走れるかがポイント。特に日本選手権予選での河内選手は、見事な走り方でした。
世界陸上はリザーブですが、競技日程の都合で、初日から最終日の2週間まで滞在し、その間、ベストな状態を保つ必要があります。ある種、正式メンバーよりも過酷かもしれません。特に、最終日の4×400mリレーは、リザーブ選手が出る確率も少なくありません。
スプリント競技は年々若い選手も台頭してくる厳しい世界。激戦が待っていますが、今回の経験で何かを掴み、23年のブダペスト世界陸上、24年のパリ五輪への代表を掴めるよう、ステップアップして欲しいと願っています。