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ENTERPRISE FUTURE
米国産LNGを日本へ

グローバルに展開する
コンサルティングビジネス。

タンク底部に設置されたアンカーストラップ

台湾中央部に位置する台中港で、LNG(液化天然ガス)タンク3基の建設工事が間もなく完工を迎えようとしている。台湾では昨今、電力需要の増加に伴ってLNGの輸入量が伸びており、その受け入れのための基地建設が進んでいる。台中におけるLNG基地建設プロジェクトもその一環で、施主は台湾の国営エネルギー企業「台湾中油(CPC)」さまだ。そして、同社から当LNGタンクのコンサルティング業務を大阪ガスグループの大阪ガスエンジニアリング(OGE)が受注し、大阪ガス エンジニアリング部、OGEが一体となり遂行している。本件の受注は、OGEのベテラン海外営業担当である町田の数十年にもわたる地道な営業努力も奏功している。

LNGタンクのコンサルティング業務の流れは、まずタンクの所有者となるエネルギー会社に代わり、どのようなタンクを造るかを示す仕様書作成から始まる。そしてタンク建設業者決定へのアドバイス。建設業者決定後は、設計図面のチェックや工程管理、最終納品に向けた試運転チェックまで、技術的なサポートを一貫して行う業務である。 LNGタンクの建設エンジニアリングには、実績経験に基づく極めて高度な専門技術が求められ、その技術を有する企業は世界でも限られる。そのため、LNGタンクを所有するエネルギー会社は、建設に係る技術コンサルティング業務全般を、当分野に明るい企業へ依頼・発注するのである。

大阪ガスグループではかねてより、LNG基地建設のコンサルティングビジネスをグローバルに展開しており、アジア市場での実績も多い。大阪ガスグループの強みの1つは、耐震技術だ。日本の地上式のPC(プレストレストコンクリート)LNGタンクには耐震性に優れた独自の技術が採用されており、大阪ガスグループはこの分野のリーディングカンパニーだ。地震の少ない欧米式の設計とは異なり、タンク底部には地震時にタンクが浮き上がらないよう「アンカーストラップ」を設け、屋根部分には地震時にLNGがあふれないようドーム屋根構造を採用するなど、耐震・保安面を強化している点が特長だ。台湾は日本と同じ地震国。そこで、欧米式に比べて日本式のPCタンクが誇る高い耐震性能を評価したCPC社が、大阪ガスグループにコンサルティングを依頼する運びとなった。かくして2012年、LNGタンクの建設プロジェクトが始動した。

多様な国際基準を
すべてクリアさせた仕様書へ。

プロジェクトマネージャーを務めた西﨑は、台湾案件も含め過去にいくつもの海外コンサルティング業務を手がけたことのある経験豊富なエンジニアだ。その西﨑のもとへ、LNGを貯蔵する内槽やポンプなどの機械設備を担当する飯田、タンクの基礎や外槽などの土木分野を担当する新村、そしてタンクを安全かつ効率的に運用するための計測装置やコントロール弁などの計装設備を担当する倉木らが集い、プロジェクトチームが結成された。

本プロジェクトでまず難題となったのが、仕様書の作成だった。仕様書とは、「どのようなLNGタンクを建設するか」をまとめたもので、いわばプロジェクトのゴールともいえるもの。この仕様書をもとに、CPC社は建設を請け負うメーカーの入札を行うことになる。コンサルティング会社である大阪ガスグループは、建設の発注者であるCPC社側の立場に立って、この仕様書をまとめる必要があった。ここで誤りがあれば、望まれないタンクができあがってしまう。高い精度が求められる、コンサルティング業務の1つめの大きなヤマ場だ。

今回、困難を極めた要因は設計基準だった。LNGタンクは当地で求められる基準をクリアする必要があるが、台湾の場合、LNGタンクに関する独自基準はなく、適用する基準自体を提案しなければならない。そのためメンバーは、 アメリカ、ヨーロッパ、そして台湾の基準を調査、整理し、基準を提案する必要があった。極めて難度が高いワークだったが、これには西﨑の豊富な経験が役立った。CPC社のこだわった耐震設計についても、メンバーは協力して解決策を導き出し、内槽はアメリカ基準、外槽はヨーロッパ基準、さらに耐震基準については台湾基準を組み合わせて提案し、CPC社を納得させた。

使命を胸に臨んだ
クラリフィケーションミーティング。

仕様書ができると一息つく間もなく、次は入札プロセスへと突入した。コンサルティング担当事業者である大阪ガスグループとしてはまず、応札してきた請負側の建設メーカーの見積仕様にすべて目を通し、その技術評価を行う。次に、評価段階で出てきた疑問点等を発注側と請負側で打ち合わせして明確化する「クラリフィケーションミーティング」を行い、最終的にどの建設メーカーが技術的によいかを発注者であるCPC社にアドバイスするのがミッションとなる。

最初の技術評価では、時間との戦いとなった。応札に名乗りを上げた複数社から提示された見積書と膨大な技術提案資料をわずか1週間強で読み込み、その妥当性を精査しなければならない。この時点で確認漏れがあると後々の工事に影響を及ぼすため、ただ1つの数値すら見落とすわけにはいかない。メンバーは担当分野ごとに手分けし、懸命に確認作業にあたった。

続いて臨んだのは、各社と直接対峙するクラリフィケーションミーティングだ。当然のことながら、高い専門技術力に裏打ちされた世界トップレベルのプロフェッショナルとしての知見が求められる。

そしてまたここでも、時間的に厳しい要求が提示された。各社とのミーティングは数時間の1回のみ。そこで、すべての疑問点について双方納得のいく結論まで導き出せというのだ。

通常ではあり得ない短時間での一発勝負のテーブルには、緊迫した空気が漂っていた。それでも課せられた使命を胸に、倉木や新村といった中堅、若手もそれぞれ百戦錬磨のメーカー担当者を前に、矢面に立って激しく議論を戦わせた。そして理路整然とした主張によって、大阪ガスグループ側と建設メーカー各社が双方納得する着地点へと導き、最終的に、発注すべき建設メーカーを絞り込んでCPC社へ報告するに至った。

建設メーカーが決定した後は、メーカーから提出される設計図面を4 年にわたりチェック。中でも大量の機器を受け持つ機械担当の飯田のもとには膨大な量の資料が送られてきて、それらを全て入念に確認する 日々が続いた。

地上式LNGタンクの
リーディングカンパニーとしてのプライド。

仕様書作成、メーカー選定、設計図面チェック・・・、どれも厳しい条件下での業務が強いられたが、メンバーは決して根を上げなかった。彼らのモチベーションを支えていたのは、「大阪ガスグループは地上式LNGタンクのリーディングカンパニーである」というプライドだった。大阪ガスグループがコンサルティングする限りは、世界に誇れるタンクを造る──。その一念で、プロジェクト推進にあたった。

そして今、数年がかりで取り組んできたプロジェクトがようやく最終局面を迎えている。来春、無事に完工を迎えれば、次は試運転を行い、そこで問題がなければ運用フェーズへと入っていく。大阪ガスグループが誇る地上式高耐震型LNGタンクの完成は目前だ。

実は先ごろ、同じく台湾CPC社が北部に建設を計画している第三LNG基地のタンク建設についても、大阪ガスグループがコンサルティングを請け負うことが決定した。アジアにおけるLNGタンク建設のコンサルティング実績は着実に増えつつある。これらの経験から培った海外の技術規格や設計技術等の知見は、今後大阪ガスグループが重点戦略エリアとする東南アジアでのビジネスにも活かされていくだろう。「大阪」をはるかに超えた大阪ガスグループの挑戦は、とどまるところを知らない。

プロフィール
  • 西﨑 丈能
    大阪ガス株式会社 エンジニアリング部
    シニアリサーチャー
    西﨑 丈能
  • 新村 知也
    大阪ガス株式会社 エンジニアリング部
    土木技術チーム
    新村 知也
  • 飯田 淳
    大阪ガス株式会社 エンジニアリング部
    プラント技術チーム
    飯田 淳
  • 倉木 孝幸
    大阪ガス株式会社 エンジニアリング部
    計装制御技術チーム
    倉木 孝幸
  • 町田 宇市郎
    大阪ガスエンジニアリング株式会社 海外事業部
    海外LNG部
    町田 宇市郎
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