• JP
  • ENG
ENTERPRISE FUTURE
-196度の低温粉砕技術

缶チューハイとLNG冷熱の不思議な関係。

缶チューハイとLNG冷熱の不思議な関係。

大阪ガスリキッド(株) 粉体ビジネス部
庄野 紗彩夏さん

教えてもらった住所に向かうと、大きなタンクが見えてきました。
地図で確認すると、「大阪ガス泉北製造所」とあります。
どうやらタンクはLNGを貯蔵するためのタンクのようで、そこに隣接して、大阪ガスリキッド(株)の食品工場がありました。
「ようこそ、お越しくださいました」
出迎えてくれたのは、粉体ビジネス部の庄野さん。
「ガスの製造所のすぐ隣にあるんですね」
「そうなんです。私たちの事業は、ガス製造の過程で得られるLNG冷熱を利用しているので・・・」
「LNG冷熱?」
「はい、詳しくは中でお話しします。さあ、どうぞ」
LNGとは、液化天然ガスのこと。その冷熱を利用?
それが缶チューハイ製造とどういう関係が?
さまざまな「?」の謎を解いてスッキリさせるため、とにもかくにも話を伺うことにしました。

国際規格もクリアした食品専門の粉砕工場。

国際規格もクリアした食品専門の粉砕工場。

缶チューハイ
写真提供:サントリースピリッツ(株)さま

ズバリ聞きます。大阪ガスリキッドは「-196℃ストロングゼロ」の製造にどう関わっているのですか?
庄野 実は、「-196℃ストロングゼロ」に使われている果実は、当社の食品工場で粉砕したものなんです。
国際規格もクリアした食品専門の粉砕工場。

各種粉砕品

えっ? この工場で?
庄野 はい。粉砕加工だけを受託して手がけているかたちです。サントリーさんから支給いただいたレモンやライムなどの果実を、丸ごと超低温で凍結させ、数十ミクロンのパウダー状に粉砕して納品しています。
どちらかといえば食品は常温で粉砕するのが一般的なのですが、それだと機械で砕く際に非常に高い粉砕熱が素材にかかり、たんぱく質が変質してしまうなど影響が少なくありません。それが超低温だと熱がかからないため、素材の風味や香りを生かしたまま粉砕することができるというわけです。
なるほど。しかし、こう言っては何ですが、衛生管理は大丈夫なんですか?
庄野 もちろんです。当社の食品工場は食品衛生エリアを設けており、2018年には食品安全管理の国際規格である「FSSC22000」の認証を取得しました。これにより、2020年に国内で義務化される「HACCP」(食品衛生管理手法)もクリアした工場となりました。
「HACCP」対応の食品専門粉砕工場は国内でもかなり珍しく、この規模で事業化しているところはほぼ当社だけと言っても過言ではありません。こうした衛生管理が認められ、サントリーさんにも安心してお任せいただいています。
百聞は一見にしかず。実際に工場をご覧になりませんか?
ぜひお願いします!

液化窒素をフル活用した独自の粉砕装置。

これが粉砕機ですか?
これが粉砕機ですか?
庄野 こちらは粉砕装置全体で、この扉の中に粉砕機が収納されています。扉を開けてみますね・・・。順を追ってご説明すると、まず左にある先の尖った筒のようなものがフリーザで、ここに液化窒素を満たして、上部から原料を投入します。液化窒素はマイナス196度なので、そこに浸すと原料はカチコチに凍ります。
凍らせた原料はスクリュフィーダという管を通って低温粉砕機に送り込まれ、数十ミクロンの大きさに粉砕されます。
ちょっと待ってください。先ほどの話だと、粉砕熱でせっかく凍らせたものが溶けてしまいませんか?
ちょっと待ってください。先ほどの話だと、粉砕熱でせっかく凍らせたものが溶けてしまいませんか?
庄野 実はそこも一工夫しています。粉砕する際も、-196度の液化窒素を活用することで、溶けない温度に保つようにしているんです。当社の粉砕機はハンマークラッシャーミルと呼ばれる衝撃式のものを採用しており、これは強い力で細かく砕くことができる半面、粉砕熱が高いことから敬遠されがちです。しかし当社の場合は、こうした液化窒素の吹き付けによって温度上昇を防げるからこそ、ハンマークラッシャーミルも採用できるというわけです。
あともう一つ。食品は酸化を嫌うのですが、原料の周囲を液化窒素で満たすことによって、できるだけ酸素にふれない環境を作っています。こうして、熱による劣化、酸化による劣化、その両方を防いで鮮度の良い素材として納品できる製造プロセスを確立しています。
扱っているのは果実だけですか?

粉砕加工時は、装置も凍ってしまいます。

扱っているのは果実だけですか?
庄野 いいえ、さまざまなお客さまから多彩な食品の粉砕を受託しています。ただ、粉砕装置は限られており、同じ装置に異なる食品を通すため、洗浄には非常に気を遣っています。一つの食品粉砕が終わると、装置をすべてバラバラに分解してきれいに洗浄し、乾燥してから次の食品を通すようにしています。アレルゲンを扱うこともあるため、常に完全リセットするよう徹底して取り組んでいます。

粉砕フロー

売れなかった粉砕装置。そこで発想の転換。

ところで、大阪ガスのグループ会社がなぜ食品の粉砕加工をやることになったのですか?
ところで、大阪ガスのグループ会社がなぜ食品の粉砕加工をやることになったのですか?
庄野 都市ガスの原料である天然ガスは、マイナス160度に冷やして液化した状態で海外から運んできます。その方が体積が小さくなり、一度にたくさん運ぶことができるからです。そして、使う時には温度を上げて気化させるのですが、その際、空気にふれさせると、LNGは温められるとともに、空気は冷やされます。冷やされた空気は、約80%の窒素と20%の酸素、そして少量のアルゴンに分離します。LNGを気化させる段階で発生するそれらのガスが、当社の販売する産業ガスなのです。
ふむふむ、それで?
庄野 それらの中でも液化窒素の需要向上を図るため、超低温を利用した高精度の粉砕装置を作って販売すれば、運用段階で液化窒素を継続して仕入れていただけると考えたのが、そもそもの出発点です。
なるほど。で、粉砕装置は売れたのですか?
庄野 それが・・・、ほんのわずかしか(苦笑)。でも、せっかく開発した粉砕装置なので、それなら自社で保有して粉砕加工を受託しようと、発想を転換しました。最初は、ゴムやナイロンといった樹脂の加工からスタートし、次第に食品も受託するようになりました。
しかし樹脂と食品を同じ工場でというのは・・・。
庄野 その通りです。そこで、2004年に当時の経営陣としては大英断で食品だけを扱う専門工場を作りました。規制が厳しい食品加工事業を自社工場で展開しているのは、数多くあるDaigasグループ企業の中でも当社だけです。でも、樹脂工場でずっと事業を続けていたなら、粉砕加工事業は今のような発展を遂げていないと思います。

LNGタンカーから都市ガス供給に至る間での冷熱~液化窒素~低温粉砕センターといった流れの図

「乾燥」や「液体の粉末化」など、夢は広がる。

低温粉砕技術は、今後まだ発展の余地がありますか?
低温粉砕技術は、今後まだ発展の余地がありますか?
庄野 これからの技術だと考えています。現在は、当社で培った粒体に関する知見を活用し、お客さまから「原料」と「それをどのように使いたいのか」という、いわばスタートとゴールだけをお聞きした上で、望ましい粒度を提案したり、試作品を作ってチェックいただいては改良したりと、さまざまなお客さまと一緒になって用途開発に取り組んでいます。
扱う食品の幅も広がりそうですね。
庄野 昨今、食品廃棄の問題が大きく取り上げられていますが。この粉砕技術を使えば、規格外の野菜など、いわゆる捨て材料を生かすことも可能です。実際、絞った後のブドウの種や皮などの粉砕も受託しており、食品廃棄の削減目標を課せられているメーカーさんにとっては、まだまだ活用の可能性があると感じています。
さらに先のビジョンとしては?
庄野 あまり詳しくは言えませんが、「乾燥」や「液体の粉末化」といったテーマのもとで、研究開発を進めています。「乾燥」は輸送コストや長期保存面でメリットがありますし、「液体の粉末化」はこれまであり得なかった加工食品の可能性を秘めています。
それは必ずしも粉砕というかたちでなくてもかまいません。当社のコア技術である冷熱利用の技術を用いて、より高品質で高価格の粒体加工を生み出すことができれば、当社の出発点である「LNG冷熱の有効活用」を達成できると考えています。
いろいろな謎が解けました。今日はありがとうございました。

関連リンク

最新記事