
バイオメタン充填ステーションと天然ガストラック
タイの首都バンコクから南へ約800km下ったところにある、Nakhon Si Thammarat(ナコーンシータンマラート)県。市街から少しはずれるとあたりは一面の緑で、パーム椰子のプランテーションや湿地が広がっており、そこにぽつぽつとパームオイル工場が建っている。そのうちの一つ、ABC社の工場の一角で、未来へ可能性つなぐ新たな試みがスタートしている。パームオイルを製造する過程で出る廃水から高純度のバイオメタンを精製し、自動車用バイオガス燃料(CBG)として用いるというものだ。その試みをけん引しているのが、独自のバイオガス精製技術を開発した大阪ガスである。

パーム搾油工場で排出されるパーム廃棄物
バイオガスは、有機性廃棄物やゴミ、下水処理場の活性汚泥等の発酵によって発生する、カーボンニュートラルな再生可能エネルギーとしてその活用が期待されている。中でもタイは、バイオガスの原料を多く有することからCBGの普及に積極的で、政府は現在ごくわずかしかないCBGの活用量を、2036年には一日あたり4,800tまで引き上げる目標を掲げている。こうした普及目標は世界でも例を見ず、バイオガス活用に対するタイ政府の強い意気込みと大きな期待を感じさせる。
一方、大阪ガスはガス分野において最有力の再生可能エネルギーと目されるバイオガスにかねてより着目しており、優位性のある独自技術を創出することによって、有効な地球温暖化対策としてバイオガス活用を推進していこうと考えていた。
そして今、国境を越え、その高い有用性が認められた大阪ガスのバイオガス精製技術は、異国の地タイで花開こうとしている。新たなフィールドを切り拓くバイオガス活用プロジェクトの道程を追った。