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ENTERPRISE FUTURE
米国IPP事業への新たなる挑戦

海外エネルギー事業を強化。

2017年、大阪ガスは「長期経営ビジョン2030」を発表し、2030年度の連結経常利益を2017年度の3倍程度まで拡大するという目標を掲げた。そのための最大のミッションは、海外エネルギー事業の大幅な強化であり、具体的には、2030年度までに海外で計350万キロワット分の発電施設を獲得することである。その中で最も重要な位置を占めるのが、北米のIPP(Independent Power Producer、独立系発電事業者)事業の拡大である。

大阪ガスは、2015年4月のメリーランド州のセントチャールズ発電所への出資を皮切りに、2017年3月にはニュージャージー州のショア発電所とペンシルベニア州で建設中のフェアビュー発電所、そして2018年には、ミシガン州とコネチカット州にある計3つの発電所への出資も果たした。この4年間で一気に北米のIPP事業におけるプレゼンスを高めたのだ。

大阪ガスがアメリカで発電事業への出資を開始したのは2004年に遡る。当時は、IPP事業の中でも、長期の電力買い取り契約を地元電力会社等と結ぶことで価格変動などのリスクを回避するPPA(Power Purchase Agreement、電力購入契約)と呼ばれる方式が主流だった。しかしその後、変動リスクを取って市場で電力を取引する“マーチャント型”のIPP事業が主流となっていく中で、大阪ガスは新たな手を打つ必要に迫られた。

そこで大阪ガスは2014年、エネルギー分野、IPP事業で長年の経験を持つ一人の専門家をOGUSAに迎え入れた。ジョン・ドレイクである。ジョンは言う。

「私が入社した当時、大阪ガスは新規案件の取得が進まず、米国でのIPP事業に積極的ではない会社と思われていました。私はまず、米国でのそのイメージを変えること、そして、大阪ガス本社の上層部に、米国でマーチャント型のIPP事業に参入することの重要性を理解してもらうように働きかけることから始めました。その上で、実際に出資する計画を進めていきました」

2015年、マーチャント型IPP事業への最初の出資として、メリーランド州に当時建設中であったセントチャールズ発電所の出資権益の25%を取得。本案件の取得は、大阪ガスが米国での事業を新しいステージに進めていく第一歩になったのだ。

2つの契約を結合させて、ウィン・ウィンの取引に。

北米の主要なIPP事業者にCompetitive Power Ventures社(以下:CPV社)がある。セントチャールズ発電所の運営をリードするのも同社である。ジョンにとって、セントチャールズ発電所への出資を進めることは、CPV社との関係を築くという意味もあった。そしてその次のステップとして、CPV社がニュージャージー州に保有するショア発電所の権益獲得へと歩を進めたのだ。

「2016年、CPV社はショア発電所の権益の20%を売りたいと考えていて、私はその獲得を目指しました。社内には契約に慎重な意見もありましたが、今後のCPV社との関係構築のことを考えると、この取引を中断するべきではないと考えました。そこで私はCPV社と話し合いを持ち、互いに有益な解決策を探る中で一つの提案を持ちかけました。CPV社がこれから立ち上げ、50%の出資者を必要としていたフェアビュー発電所への出資と、ショア発電所への出資の2つを結合した契約を結ばないか、と」

その頃CPV社は、株主が交代するなど多忙を極めており、大阪ガスが早々にフェアビュー発電所への出資に手をあげてくれるのは願ってもないことだった。一方大阪ガスにとっては、ショア発電所への出資と、フェアビュー発電所への出資を結合することで、フェアビュー発電所の権益獲得への道を開く、戦略的出資という意味合いを持つことになりえたのである。こうして2つの契約を結合することでウィン・ウィンの取引にする絵姿が描けたのだ。

さらにジョンは重要なポイントとして、フェアビュー発電所に関しては50%出資するだけではなく、大阪ガスが自らアセットマネジメント(発電所の管理・運営)を行うオプション権もCPV社に求めた。それは今後大阪ガスがアメリカのIPP事業者の競争の中で生き残っていくためには、どうしても必要なことだったのだ。

強い意志によって実現させた契約締結。

「両社にメリットのある取引とはいえ、締結までの道のりは簡単ではなかった」とジョンは言う。

「CPV社は最初、私たちが本当にこの契約を締結にまでこぎつける力があるのかを疑っていました。というのも、私たちはセントチャールズ発電所の出資契約に7カ月かかったのですが、ショアとフェアビューの結合契約は、交渉がより複雑な上、期限までに残された時間も短かったからです」

さらに、アセットマネジメントを自分たちが行いたいという大阪ガス側の要望も、契約締結への大きなハードルとなった。CPV社は、IPP案件を開発し、自らアセットマネジメントも行うことをビジネスモデルとしており、アセットマネジメントを大阪ガスに渡すことは、彼らにとって新しい競争相手を作ることにもなったからだ。

「CPV社を説得するため、私は締結までの綿密な計画を提示して、大阪ガスにその能力があることを説明しました。また、彼らに、自分たちが競争相手になる意図がないことをはっきりと伝えました。大阪ガスはこれから海外の電力事業への投資を拡大するべくその拠点を作りたいと考えていること、そのためにどうしても自らの発電施設を保有管理することが必要で、それにはフェアビュー発電所が最適であるということ。そして、その計画が叶えばいずれ、CPV社とはパートナーとしてともにビジネスを行うことができるはずだ、と。私個人がこれまでこの業界で得てきた信用と経験も彼らを説得するのに役立ちました。」

複数の山場を越えながら、ジョンはCPV社の説得に成功。そして2017年3月、両者はついに契約締結へとたどり着いた。ジョンは、当時を振り返ってOGUSAの社長であった米山久一、そして大阪の本社メンバーからの支援が大きかったことを繰り返し強調した。

「交渉過程で最も忘れられない瞬間は、2016年7月20日、OGUSAのヒューストン事務所で、CPV社側と私たちが話し合いを持ったときのことです。米山さんが、ものすごい熱意で、私たちの強い意志と思いをCPV社に伝えてくれたのです。そしてその後米山さんは私にすべてを一任してくれるとともに、大阪ガスの上層部への説得に尽力してくれました。そうしてなんとか、契約締結を引き寄せることができたのです」

北米IPP事業のプレーヤーとなる。

契約締結後、プロジェクトは順調に進んでいる。今も建設中であるフェアビュー発電所は、予定していた2020年3月よりも前倒しでの完工を目指しているという。費用も当初の予想より抑えられている。また、ショア発電所への出資も順調な結果を出し続けている。

契約を締結しプロジェクトが動き出した後も、建設過程などを含めて当然様々なリスクがあったが、いまではそのほとんどが解消されているという。

「この契約を結べたことは大阪ガスにとっても私自身にとっても、特別なことでした。大阪ガスにとっては、今後の北米でのIPP事業の基盤を作るという大きな意味を持っていました。私にとっては、この契約を経ることで真の意味で大阪ガスの一員になれたという気がしました。米山さんが私においてくれた信用は、これまで経験したことのないほど大きなものだったのです。そのことを通じて、私は大阪ガスとの強固な絆を得たように思っています」

ジョンは、そう振り返った。

2018年には、コネチカット州のトワンティック発電所とクリーンエナジー発電所、ミシガン州のミシガンパワー発電所の3つの事業への参画を決めた。1年でこれだけの取引を進めることができたのには、ショアとフェアビューのプロジェクトを経て、OGUSAも大阪ガスの本社にもIPP事業を推進する強力なチームが出来てきたことが大きいとジョンは言う。

「私たちは今、確実に成長していることを感じます」

2030年に定めた目標に向けて、大阪ガスが北米のIPP事業における有力なプレーヤーとなる足場は、着実に固まっている。

プロフィール
【IPP事業 新規開発/アセットマネジメント担当】
Osaka Gas USA Corporation(New York Office)
Merchant IPP Team
Vice President
John Drake

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