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ENTERPRISE FUTURE
オー太とジー子の現場突撃訪問
オー太とジー子
  • エネルギー技術研究所バイオ・ケミカルチームマネジャー 加藤 真理子
  • エネルギー技術研究所バイオ・ケミカルチーム副課長 山田 昌宏
  • エネルギー技術研究所バイオ・ケミカルチーム 杉本 雅行
  • オー太 知的好奇心旺盛でエネルギッシュ。素直な性格の純真ワンコ。
  • ジー子 面倒くさいことが嫌い。行動が省エネ化しているエコネコ。

ジー子

今日はいったい何やの? うち忙しいんやけど。

ジー子さん、今日はすごいんですよ! 山田さん、杉本さんのお二人は、未来のモノづくりを大きく変える可能性がある素材を開発しているんです! ですよね?

そう思いますよね。そこもちゃんとお話しします。まず「セルロースナノファイバー(CNF)」という、最近注目されている植物由来の素材があるのですが。これは、木材から作られるパルプを、直径3~4ナノメートル(ナノは10億分の1)まで細かくした繊維です。

オー太

パルプって紙の原料に使われている、あのパルプですか?

そうです。このCNFは、なんと強度が鉄の5倍なのに、軽さはわずか5分の1なんです。そこで、樹脂に混ぜ合わせることによって「強くて軽いプラスチック」が作れないか? と期待されているんです。

ほんまかいな。うち初耳やけど?

まだ一般の方々が耳にするほど実用化が進んでいないのですが、もしこのCNFを用いた強化プラスチックが実用化されれば、自動車や飛行機などが軽量化され、燃費が飛躍的に向上すると言われています。しかも原料は木材なので環境負荷が低く、地球にも優しい。

いいことづくめですね!

そう、まさに「夢の素材」なんです。木材国でありパルプ資源をたくさん保有している日本としては、世界的な潮流である循環型社会の実現に、CNFの実用化で貢献したいと考えていて、閣議決定された「日本再興戦略2016」の中にも、このCNFの開発が挙げられているくらいなんですよ。

計算ミスが大発見につながった?

そんだけええもんやったら、はよ作ったらええやんか。

ジー子さん、またそんな簡単に・・・。

実はCNFの実用化には1つ、とても大きな壁があるんです。パルプは水の中で細かく砕く必要があるので、CNFは大量に水気を含んでいるのが普通です。でもそれだと、石油由来で「油」の性質を持つプラスチック原料とうまく混ざらないんです。

それはうちでもわかるわ。水と油やからな。

その通りです。でもだからといってCNFから水を抜くと、繊維がボロボロになってしまって使いものになりません。

プラスチックメーカーは、樹脂と混ざりやすい粉末状態のCNFが欲しいのですが、CNFが大量に含んだ水分を取り除くことが高いハードルとなって、なかなか粉末化が実現できなかったというわけです。

それを何とかしたのが大阪ガスということですね!?

はい、ようやく大阪ガスの登場です。

世界中の警報器を電池式に!

大阪ガスはかつて、石炭からガスを製造していた時代に、副産物を有効活用する中で「フルオレン」という物質を生み出しました。フルオレンは現在、大阪ガスケミカルが製造・販売していて、携帯用カメラレンズや液晶ディスプレイなどに用いられ、世界でも高いシェアを誇ります。

そんなすごい製品を大阪ガスが!?

あまり知られていないんですけどね(苦笑)。ともあれこのフルオレンを、何か新しい用途に使えないかといろいろ検討している中で、木材と相性が良いことがわかってきたんです。

棚からぼた餅かいな。

いやいや、研究開発の成果です! で、木材といえばセルロースです。将来性が期待されているセルロースナノファイバーの実用化への道を、もしもフルオレンが拓くことができたなら、社会的に非常にインパクトの強い製品になると考え、本格的に研究開発に着手したのです。

ふーん、ガス会社がこないなモノづくりをやってるのは、そういうわけやったんやな。

そうなんです。それからさまざまな方法を試して研究開発を進めました。

そして、膨大な試行錯誤を重ねた結果、ついにCNFとフルオレンをうまく化学反応させることに成功しました。

やりましたね!

やりました(笑)! 化学反応によって、樹脂と混ざりやすい性質に変化し、CNFが持っていた課題をうまく解決する「フルオレンセルロース」が誕生しました。

このようにフルオレンセルロースは細くて長い繊維です。それをプラスチックの原料に混ぜ込むと、繊維がクサビのようにからんでプラスチックを強くするのです。

鉄筋コンクリートの鉄筋の役割のような?

イメージは近いですね。鉄筋とコンクリートがうまくなじんでいなければ強度が確保できないのと同様に、フルオレンセルロースも、樹脂と繊維がうまくなじむことで初めて強度を向上させることができるのです。

湿ってもいない、ボロボロでもない、ちゃんとした粉末です。大阪ガスが初めてCNFの粉末を世に出したのは2015年のことで、世界から画期的だと注目を浴びました。それから数年経ちましたが、今でもCNFの粉末化に成功しているのは、世界でもわずか数社しかありません。

オー太くん、ジー子ちゃん、こんにちは! マネジャーの加藤です。ごめんなさいね、ちょっと別の会議に出ていて・・・。

こんにちは! 今ちょうど、フルオレンセルロースがいかに先駆的であるかという話を聞いていたところです。ところで、実用化のメドは立っているんですか?

それはまだこれからの話。今、いろいろな樹脂メーカーさんと一緒に開発を進めていているところなの。すでに多くの問い合わせを受けていて、フルオレンセルロースのサンプル提供も進めています。

これは、実際にフルオレンセルロースを樹脂に混ぜて成型したプラスチックです。

実用化に向けて乗り越えないといけない壁はまだまだたくさんあるものの、「樹脂と混ざらない、粉末にできない」という課題はクリアして、今は一つ上の課題に対して解決を試みている段階です。競合する他メーカーの一歩先を行っていることはまちがいありません。

ところで実用化されたら、うちに何かええことあるの?

フルオレンセルロースが何に用いられるかは、今後の開発次第。でも、うまくいけば身の回りのいろいろなモノが、より強く、より軽くなります。ある試算では、自動車の重量を20%も軽量化できるとされています。これは、わずか100gの軽量化でしのぎを削っている自動車メーカーにしてみれば、すごいこと。クルマや飛行機といった輸送機器に限らず、オー太くんやジー子ちゃんが普段使っているモノにもフルオレンセルロースが用いられればいいですね。さまざまなモノづくりの常識を変える素材へと育ってくれることを夢見ています。

より強く、より軽く、よりエコな素材ですからね!

結局うちにとってええこと、あんまりなさそうやな。

ジー子さん、社会全体にとって、いいことがいっぱいなんですよ。それでいいじゃないですか!

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