極低温のLNG(液化天然ガス)を輸送する配管には、優れた低温特性と安定した品質を持つステンレス鋼を使用します。しかし、ステンレス鋼LNG配管には、LNGの極低温により生じる大きな熱収縮を吸収するための曲管(コの字型のループ管)等が必要になります。そこで、線膨張係数が極めて小さいインバー合金をLNG配管に適用し、ループ管の不要な合理的なLNG配管構造を実現し、LNG配管の建設費の低減を図りました。
1.インバー合金の特長
インバーの基本組成は64%Fe-36%Niで、以下のような特長を持ちます。
インバー合金 | ステンレス鋼 | |
---|---|---|
線膨張係数 |
1.7×10-6 /℃ | 15×10-6 /℃ |
LNG冷却時収縮量 | 0.3 mm/m | 2.8 mm/m |
インバー合金 | ステンレス鋼 | |
---|---|---|
0.2%耐力 | ≧240 N/mm2 | ≧205 N/mm2 |
引張強さ | ≧440 N/mm2 | ≧520 N/mm2 |
2.LNG配管に適用した場合の効果
ループ管を必要としないため、ループ管を設置するための広いスペースを確保する必要がなくなり、大幅な建設費のコスト削減を図ることができます。
(特にトンネル内に従来技術でLNG配管を設置する場合には大断面のトンネルが必要でしたが、インバー合金はトンネル断面を小さくできることから大幅なコスト削減が図れます。)
上記で紹介した開発技術をもとに、2001年4月大阪ガス(株)泉北製造所第二工場内の気化器付属配管に世界で初めてインバー合金LNG配管を設置しました。2003年9月には、タンク付属配管に最大口径700Aのインバー合金LNG配管を設置しました。これらは、いずれも順調に稼動しています。
■インバー合金LNG配管設置実績
設置年月 | 設置場所 | 配管口径 | 配管延長 | |
---|---|---|---|---|
気化器付属配管 |
2001年 4月 | 泉北製造所 | 150A | 約10m |
タンク付属配管I | 2003年 9月 | 姫路製造所 | 700A | 約25m |
タンク付属配管II | 250A | 約40m | ||
LNG出荷配管 | 2005年11月 | 姫路製造所 | 250A |
約200m |
海底トンネル配管 | 2006年 9月 | 泉北製造所 | 300A | 約2,000m |
2006年9月大阪ガス(株)泉北製造所の第一工場と第二工場を結ぶ海底トンネル内に口径300Aのインバー合金LNG輸送配管(配管延長約2km)を設置しました。
ステンレス鋼を配管材料として使用する場合トンネル内径は4m必要となりますが、インバー合金を適用することによってトンネル内径を2.4mまで縮小することができ、インバー合金のメリットを最大限発揮しました。
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