FOOD SCIENCE LABORATORY
フードサイエンスラボ
2016年7月、米国シカゴで食品の国際会議・展示会(IFT, Institute of Food Technologists) が開催されました。IFTは食品業界等から2万人以上の参加者があり、1,000件以上の出展がある大きな学会です。この会議に参加し、研究発表※するとともに、最新の食品開発の動向等について学びました。今回は帰国後、追加で調査した内容を加えて、食品の新しいトレンドについてご紹介します。
※「サンマの加熱によるEPA/DHA変化メカニズム解明の研究」を発表。サンマの研究にご興味をお持ちの方はラボレターNo.5をご覧ください!
IFT大会中に、「健全性」(英語でwholesomeness)という言葉をよく耳にしました。健全性とは、食品の栄養や機能だけでなく、「環境に優しい」、「信頼(安心)できる」、「社会に貢献する」などを意味し、製法や販売方法等を含めて、「食品が総合的に健全であること」とを指しています。
では、食品の健全性とはどんなことをいうのでしょうか?
食品ラベルの成分表示の明確性への需要は、ますます高まっています。消費者は、食品が自身の生活スタイル・好みに合っているかどうかに関心があり、食品ラベルに注目している人も増えています。実際、アメリカ人の消費者の91%は「成分が理解できる場合はよりヘルシー」1)と思っており、理解できない成分が入った食品を避ける傾向にあります。このため、食品メーカーは食品の内容物を明確に表示する努力をおこなっています。
また、「有機的」、「遺伝子組み換え無し」、「砂糖不添加」や「グルテンフリー」等と記載された食品が増えてきています。これらの用語が、食品の安全性や健康性のPRに効果をもつようになってきたのです。
表1は、健全性の意味と食品、加工方法の一例です。
最近、「3Dプリンター」という言葉をよく耳にするようになりました。家庭用の3Dプリンターに加え、3D印刷された食品を売る自動販売機も登場しています。また、従来の製造方法では困難であった、非常に複雑な形状の食品(特に菓子製品)などが3Dプリンターにより生産されており、3Dプリンティング技術には、従来の食文化に革命を起こすポテンシャルが潜んでいます。以下に、2つの例をご紹介します。
エディブル・グロウス社(EDIBLE GROWTH)
エディブル・グロウス社は、3Dプリンティング技術を用いて、生物(種子、胞子や酵母等)を含むスナックを開発。(http://theplate.nationalgeographic.com/2015/03/10/the-next-frontier-for-3-d-printers-is-healthy-food/)
そのスナックとは、植物の種を、藻類由来の寒天(土壌の代替品)を練り込んだパイ生地のような材料でカプセル状に包むというユニークなもの。3〜5日間で葉状の野菜とキノコを含むサラダになり、新鮮で健康的な一口サイズのスナックに成長します。この技術を用いると、消費者は、同時に生産者となり、農家を経ることなく、新鮮な野菜を入手できることになります。また、食品の安全性や健全性を感じることもできます。
マージン・ルーバーズ氏(MARJIN ROOVERS)のチョコレートグローブ
3Dプリンティング技術による新しい構造の食品により、味覚を操作することが可能になりました。
例えば、下図はマージン・ルーバーズ氏(MARJIN ROOVERS)がデザインしたチョコレートの球です(http://www.nature.com/news/foodies-embrace-3d-printed-cuisine-1.17358)内側は区画化され、それぞれに異なる成分が埋め込まれています。
このようなデザインにより、どのような味を、どのような強さで、消費者に感じてもらうかをコントロールすることが可能になるのです。
1)Watrous, M.(2015).Trend of the Year:Clean Label.
Retrieved from http://features.foodbusinessnews.net/corporateprofiles/2015/trend-index.html
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