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大阪ガスは、「いただきます」で育もう。をスローガンに、食育活動に取り組んでいます。

食育シリーズ

人間の特徴である「食事づくり力」アップのための食育

執筆:女子栄養大学 教授 武見ゆかり先生

食の外部化の進展が著しく、外食・中食利用の多い人は、野菜摂取量が少ない、ビタミンやミネラルの摂取が少ないといった課題があることも指摘されています。こうした要因の1つには、人々の食事づくり力が低下してきたことと、魅力的な惣菜などの商品が増えてきたことの両方が考えられます。

日本の食文化研究の第一人者である石毛直道先生(国立民族学博物館名誉教授)は、他の動物とは異なる人間の特徴を食の面から説明すると、「人間は、食物を栽培し、調理し、共食する動物である」とおっしゃっています。つまり、食物をつくり一緒に食べることこそ、人間らしい食のあり方と考えられます。

私たちの研究室では、人間の食事づくり行動を、大きく2つから構成されると考え研究と実践活動を進めています。1つは、食べ手の嗜好や栄養的ニーズ、及び入手可能な季節の食材などに合わせて、食事のイメージを描く力です。もう1つは、それを具体的な食事として実現する力、すなわち主には調理力です。この考え方に基づいて、女子大学生の「食事づくり力」を簡便にとらえる質問紙を開発しました1)。食育や調理教育の前に、学習者の食事づくり力を把握できれば、より効果的なプログラムが提供できます。女子大学生に着目した理由は、近い将来、家庭の食事づくり担当者になる可能性の高い集団だからです。

その結果、表1に示すような4つの因子からなる18項目の質問紙を作りました。4つの因子の1つめは中学高校時代の主体的な食事づくり経験、2つめは小学校時代の食事づくりの手伝い、3つめは食事づくりのイメージを描く力、4つめが調理に対する家族の積極的な態度です。これら18項目に「非常にあてはまる(5点)」「少しあてはまる(4点)」「どちらともいえない(3点)」「あまりあてはまらない(2点)」「全くあてはまらない(1点)」の5件法で回答してもらい得点を算出し、その人の「食事づくり力」得点とします。現在、栄養学専攻の女子新入生や他専攻の女子大生など、複数の集団で調査を実施していますが、だいたい60点前後に中央値がくるようです。

また現在、この質問紙による得点と、実際に食材料を示して1食分の献立を考え調理してもらう実技との関連を検討中ですが、総得点が関連することはもちろんのこと、4つの因子の中では、中学高校時代の主体的な食事づくり経験の得点が実際の実技の力と一番関連が強いという結果が得られてきています。つまり、小学校時代の“お手伝い”は重要ですが、思春期以降に自分が主体となって“食事を整える”体験がなくては、自立的な食事づくり力は育たないことを示唆するものと考えられます。こうした主体的な体験は、家庭はもとより、学校の家庭科などでも実現可能でしょう。また、この主体的な体験は“菓子づくり”ではなく、“食事づくり”である必要性も、質問紙開発に先行して実施したフォーカスグループインタビューの結果からわかっています。

表1に示す質問紙の項目は、人間らしい「食」のあり方の要素の1つである食事づくり力を育てるために必要なことを具体的に示唆してくれます。例えば、小学校時代にどんなことが必要で、中高校生時代には何をしなければならないか、また家庭では母親だけでなく他の家族も含め、どうしなければならないかと考える上で、皆さまのお役に立つのではないかと思います。
合せて、大阪ガスの「いただきますで育もう! 調理力検定」も活用してみてください。「食べるチカラ編」「親子でいっしょにクッキング編」「地球にやさしく! エコ調理編」の3つがあります。子どもたちに栄養や調理に関する基本的な知識を知ってもらうだけでなく、子どもが日常生活とつなげて、実際に料理をしてみたいと思う気持ちになることをポイントに内容を考えて作ったサイトです。ぜひ、子どもの食育に関わる皆さまに、一度覗いてみていただき、子どもと一緒に、改めて「食」について学びながら、料理づくりを楽しんでみてください。

  • 1)駒場千佳子、武見ゆかり、中西明美他.女子大学生の「食事づくり力」測定のための質問紙の開発−栄養学を専攻する女子大学生を対象とした検討−.栄養学雑誌 2014;72(1):21-32.
  • 2)駒場千佳子、武見ゆかり、中西明美他.女子大学生の調理をする力の形成要因に関するフォーカスグループインタビューを用いた検討.日本調理科学会誌 2012;45(5):359-367.

表1 「食事づくり力」質問紙の項目
因子 I 中学高校時代の主体的な食事づくり経験
中高 自分の食事(献立)を、自分一人で作った経験
家族の食事(献立)を、自分一人で作った経験
材料の準備から盛り付けまで、一人でした経験
料理を作った時、成功することが多かった
自分から計画して、料理を作ったことがよくあった
家族から、料理のリクエストをされたことがあった
自分が調理をしなければならない状況によくなった
因子 II 小学校時代の食事作りの手伝い
小学 よく調理の手伝いをした
調理の手伝いはとても楽しかった
家族が調理の手伝いをさせることに積極的だった
よく食事の配膳や後片付けの手伝いをした
因子 III 食事作りのイメージを描く力
現在 栄養やタイミングを考え料理を選択することができる
食材に適した料理や調理法をイメージすることができる
季節にあった料理をイメージできる
調理するときに、必要な食材や器具を整えることができる
因子 IV 調理に対する家族の積極的な態度
  主たる調理担当者以外の家族は、調理が好きだと思う
主たる調理担当者と自分以外に、調理をする家族がいる
主たる調理担当者は、調理が好きだと思う

上記の質問に「非常にあてはまる(5点)」「少しあてはまる(4点)」「どちらともいえない(3点)」「あまりあてはまらない(2点)」「まったくあてはまらない(1点)」として、得点を算出。栄養学を専攻する女子大の新入生219名を対象とした調査結果では、中央値61点であった。(駒場千佳子他 栄養学雑誌 2014;72(1):21-32.

武見 ゆかり教授 プロフィール

武見 ゆかり教授

東京都出身。慶應義塾大学文学部フランス文学専攻卒。編集社勤務を経て、栄養学の道へ。
女子栄養大学大学院修了後、女子栄養大学助手、専任講師、助教授を経て、2005 年より女子栄養大学・大学院教授(食生態学研究室)に就任。
専門は栄養教育論、公衆栄養学。 博士(栄養学)、管理栄養士。
日本学術会議 連携会員、日本健康教育学会理事、日本栄養改善学会評議員。
内閣府 食育推進会議食育推進会議専門委員として国の食育推進に、厚生労働省厚生科学審議会地域保健健康増進栄養部会委員として、健康日本21(第2 次)の策定に関わる。
大学院生の息子と大学生の娘の母という一生活者として、子どもの食育を実践。

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