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ENTERPRISE FUTURE
米国産LNGを日本へ

米国LNG輸出基地の先駆的大プロジェクト。

Freeport LNG Development社提供
Freeport LNG Development社提供

米国テキサス州フリーポート。州最大の都市であるヒューストンの南約100キロ、メキシコ湾岸のこの場所に米国産の天然ガスを液化して輸出するための大規模基地が建設されている。現地エネルギー企業「フリーポートLNGデベロップメント」(フリーポート社)が進めるこのプロジェクトに、大阪ガスは約6億米ドルを投資し事業参画している。米国ではシェール革命による天然ガス生産量が飛躍的な伸びを見せる中、フリーポートLNGプロジェクトは、まさに世界のエネルギー業界が注目する一大プロジェクトだ。

このプロジェクトにスタート時点から加わったのが、プロジェクトへの投資(契約・ファイナンス等の株主業務全般)を担当する椹木(さわらぎ)と、テクニカル全般を担当する江見だった。先駆的な巨大LNGプロジェクトに大阪ガスが主導的な立場で参画できるとあって、気合い十分で臨んだ2人だったが、米国でも例がない試みの先には、いくつもの壁が待ち受けていた。

巨額の融資交渉に、
50本を超える大量且つ複雑な契約交渉。

Freeport LNG Development社提供

プロジェクトの着工までには、建設に必要な資金を調達するとともに、20年間に及ぶ長期事業の様々なルールを定める大量の契約書(株主間協定・プロジェクト契約等)の締結が必要となる。

まずは銀行団との約38億米ドルに及ぶ巨額プロジェクト・ファイナンスの交渉。銀行団にとっては、今まで実績のない米国LNGプロジェクトへのプロジェクト・ファイナンス供与ということで、融資交渉には相当な時間を要した。大阪ガスとしても、これだけ巨額且つ複雑なファイナンスを主導的に進めるのは初めての経験であった。それでも大阪ガス交渉メンバーの2年半に亘る粘り強い交渉の末、政府系金融機関の支援を得て何とか融資の道筋がついた。

更に、フリーポート社との50本を超える大量の株主間協定やプロジェクト契約交渉。このプロジェクトは、一般的なLNGプロジェクトと異なり、3つの液化設備(第1~第3系列)のそれぞれに異なる所有者が存在するため、契約書の構造は非常に複雑となり、交渉は難航した。互いに譲れない条件を提示しあう中で、一つひとつの事項の妥当性を精査しながら着地点を見出す。テクニカルな部分については江見のアドバイスを受けながら、大阪ガス交渉メンバーはハードな交渉を重ねていった。

それだけではない。これらの契約交渉に並行して、プロジェクトへの参画に係る承認を得るための社内の意思決定会議への対応にも追われた。約6億米ドルもの出資という極めて大きな意思決定となるため、フリーポートプロジェクトチームは、経営陣および社内関係部署の説得に奔走した。最終的に本プロジェクトへの出資を諮る意思決定会議の直前、椹木は予期せぬ高熱にみまわれながらも、社内承認に必要な書類の最終仕上げに全力を注いだ。

その奮闘の甲斐あって社内決裁は無事に下り、待ちに待った米国政府からのLNG輸出許可も発行され、2014年11月、プロジェクトは晴れて着工セレモニーの日を迎えた。大勢のプロジェクト関係者や米国の政治家、マスコミが見守るなか、大阪ガス尾崎社長(当時)がスコップを用いて鍬入れ式を行う姿を見て、椹木は怒濤の2年半を感慨深く思い返していた。

一筋縄ではいかない海外エンジニアリング。

Freeport LNG Development社提供

着工式が済み、建設工事がスタートすると、プロジェクトの主役は江見らテクニカル部門に移る。日本とは事情が異なる海外エンジニアリングだが、江見にはすでに経験があった。本プロジェクトに参画する直前、オーストラリアのシェブロン社のプロジェクトにプロセスエンジニアとして出向していたのだ。出向の目的は、「将来、大阪ガスが主体的に関わる海外プロジェクトが発生した時に備え、実地経験を積むこと」。オーストラリアに赴任した時にはまだ見えぬ未来だったものが、こんなに早く経験を活かせることになるとは江見自身も思っていなかった。まさにその「時」がやってきたのだった。

本プロジェクトにおける江見の役割は、エンジニアとして、安全で安定的な運転ができる設備を「スケジュール通りに、予算内で」実現できるよう日々の進捗状況を管理することだ。とはいえ、そうスムーズに事は運ばない。現地エンジニアは、プロジェクト単位で会社を渡り歩くのが普通で、会社への忠誠心が薄く、契約書に記載されたワーク以外は一切やろうとしない、いわば一匹狼の集まりだ。そうと認識して進捗管理をしなければ、足下をすくわれる。そこで江見は、実際に建設の進行を管理するオーナーズエンジニアリングチームに大阪ガスのエンジニアを出向社員として送り込んだ。そして彼らと密に連携し、問題が深刻化する前に芽を摘んだり、問題発生後の対策を検討できる体制を整えた。

また人の問題だけでなく、時に天すら江見らの道をはばむ。2017年夏には巨大なハリケーンHarveyがヒューストンを直撃。日々さまざまなことが起きる状況に苦労しながらも、江見はただひたすらLNG基地の完成というゴールを見すえ、着実に工程を進めることに心血を注いでいる。

第一号のLNG船が出航するその日まで。

Freeport LNG Development社提供

2014年の着工当時は、まったく何もないだだっ広い更地だった所に、今は巨大な液化設備を構成する機器の搬入及び据付が完了しつつあり、着々と完工に向けて工事が進んでいる。新しい配管や装置が取りつけられ、現場の風景は毎日変わっていく。その様子を感慨深く眺めながら、椹木と江見は日々小さな達成感と感動に包まれている。

しかし本当の感動は、無事にプロジェクトが完工し、米国産LNGを積んだ第一号の船がこの基地を出航していく瞬間であるに違いない。その時、大阪ガスは年間232万トンという、年間調達量の約5分の1にあたる巨大なLNG調達ルートを新たに確保することになる。

計り知れないインパクトを持ったプロジェクトの完遂まで、あともう数歩。プロジェクトのメンバーとともに椹木と江見は、なお気を引き締めて力強く歩んでいる。

プロフィール
  • コマーシャル(契約・ファイナンス等株主業務)担当 椹木 公生
    【コマーシャル(契約・ファイナンス等株主業務)担当】
    Osaka Gas USA Corporation
    Freeport LNG Project Development Division
    Vice President
    椹木 公生(さわらぎ きみお)
  • テクニカル担当 江見 浩
    【テクニカル担当】
    Osaka Gas USA Corporation
    Freeport LNG Technical Division
    Vice President
    江見 浩(えみ ひろし)
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