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NOBYはなぜまちづくりに貢献できるのか 荒木秀夫(徳島大学教授)×朝原宣治

—なぜ、NOBYを創ったのか?

朝原:現役時代から社会貢献活動として、陸上教室とか講演などをおこなっていたのですが、子どもたちを継続的に見ていく施設なり、社会システムなり、仕組みの必要性を感じていました。現役を引退した際、私の仕事が今津グラウンドの有効活用だったので、会社と相談してNOBYを創設させていただきました。したがって会社の社会貢献活動でもあるのですが、私のキャリアをそのまま活かせるような仕事にさせていただいているので、非常にありがたいと感謝しています。われわれはアスリートとして様々な場で、様々な経験はしてきましたが、子どもたちの教育と指導は素人でした。そこで子どもたちのバランス良い身体の発育とか、脳の発育とか、感情の発達を研究されていた徳島大学の荒木先生を知人のスポーツライターに紹介してもらいお会いさせていただきました。荒木先生と話をさせていただいた時に、コオーディネーション理論は私の感覚と非常に近いものがあったので、その理論をNOBYのプログラムに取り入れることにさせていただきました。

—現在の活動について

朝原:5年目を迎え、おかげ様で、会員も増えてきました。それもほぼ口コミで会員が増えてきているというのは非常にありがたいなと思っています。発足当時は、指導といってもなかなかうまくいかなかったですね。しかし荒川や山本両コーチと議論したり、学生から意見をもらうなどして、徐々に子どもたちへの指導法とかが見えるようになりました。荒木先生は定期的にNOBYにお越しいただき我々を含めて指導いただいているので、知識も蓄積していきコーチたちの教え方もレベルアップしていっています。
毎年会員や親御さんにアンケートをお願いして評価を受けるようにしています。初年度は子どもたちにNOBYに入ってどういうことが一番良かったかというアンケートをしたんですけれども、一応トラッククラブなので、「走りが速くなった」というのが一番にくるのが、良かったのでしょうけれど、でも1位にきたアンケートの答えっていうのが、「友達がたくさんできた」ということでした(笑)。走りが一番ではなかったですけど、私は逆にうれしかったことを覚えています。地域全体で子どもたちがここに集まって、違う学校の子どもたちと知り合い、あるいは世代を超えて、そういう仲間ができる、そういう場所をつくれたことがよかったのではないかと考えています。

—NOBYの活動についてどう思われますか?

荒木:トップアスリートっていうのは、引退した後は、だいたい全国で講演したり子どもや指導者に対する指導など、その場面場面の対応に追われるケースが多いんですよね。そうじゃなくて、トップアスリートの方っていうのは、普通の人では経験できないような感性とか感覚を持ってるんだけど、でもこれはスポーツの成績の結果とは別に、一般の子どもたちにも伝えられるものがほとんどだと思うんですよね。恐らく朝原さんもそうだと思うんだけども、もう完全に燃焼し切ったと。これで燃え尽きたというか、もう終わってね、満足です、て言ってもね、トップアスリートの人は、必ず何か後悔が残っていると思うんですよ。何かやり残してる。何かもっとできたんじゃないかと思いながら、自分で言い聞かせながら、ここで一つの区切りでしょうと思う。
でも、その何か残ってるな、何か抜けてたんじゃないかなという想いとか、それまでにトップアスリートとして経験したことや学んだ感性っていうのが、才能があるからとかトップアスリートだからじゃなくて、子どもたちにも十分伝えられることがたくさんあると思う。そのためには、子ども教室を1回やりましたっていうんじゃなくて、継続的な教室で、朝原さんにしろ、トップアスリートたちが見続けるっていう場や仕組みが必要ですよね。自分たちが教えてる子どもたちが非常に足が遅かったときのレベルの時期、幼稚園生のときであったり、もっと小さかったり、そのときのことを思い出して、それを感じ取って、言葉で表せるようなものっていうのは、継続的に子どもたちをずっと見ていくなかで得られるものです。逆に子どもたちから何か学べることもあるし、アスリートもそういった経験が、一般的な子どもに限らず、一般の人たちの健康のための運動にしろ、競技力のスポーツにしろ、語りかける言葉にその深みが増す。
ですから、トップアスリートというスポーツの選手っていうのは、割と引退が他の世界に比べて早いかもしれませんが、その引退した後に残す業績っていうのは、これからの社会で求められるんじゃないかな。そういう点で、興味持ちました。

—コオーディネーション理論について

荒木:コオーディネートっていうのは、たとえばこういう会議をコオーディネートしようとか、いろいろありますけど、組み合わせといいますかね。たとえば、ひとつひとつは大したことないような食材があっても、これをどういうふうにして調理するかによって、素晴らしい料理ができると。この『組み合わせる力』というのが、実は私たち人間が生物の中で進化した中に、最後に得た解答です。鳥は空を飛ぶために大胸筋を、イルカは泳ぐために腹筋、背筋を発達させます。しかし、人間はひとつひとつの能力はそこそこの発達に止めるんだけども、それらを自由に組み合わることができます。その中で活路を見いだして、私たち人間は他と動物とは考えられないくらい、あらゆる環境に適応して生きてきたのです。
だけど、逆に言うと、動物のように学ぶこともできるんです。動物のようなやり方で、投げたり蹴ったり泳いだりすることではなく、創造的に工夫して新しいものを組み合わせて、新しい能力を作り上げていく。この数百万年の歴史のなかで、人間が進化しきているものこそ、人間が総合的に発達するうえで一番大事なものであるといえます。コオーディネーショントレーニングっていうのは、ひとことで言えば、ひとつひとつのことは大したことはない。筋力も何も上げることばっかり考えなくてもいい。今ある筋力で力を発揮するには、どうしたらいいのかなって考えること。そのために気づく、気づかせること、それを仕向けるトレーニング。だから本来の人間がやるべき運動ということになります。

—今後NOBYをどのように発展させていきますか?

朝原:荒木先生のコオーディネーション理論であったり、われわれがいろいろ試行錯誤して培(つちか)ってきたプログラムは、主に子どもたちであったり、トップアスリート向けに進めてきました。ただ、今後少子高齢化というか超高齢化社会の到来によって、これからの街づくりという意味で、中高齢者に向けてのプログラムというのもNOBYの中で開発していきたいなと思っています。より多くの人が世代を超えて、NOBYに関わってほしいと思っています。
私もエネルギー会社に勤めているということもありまして、街を活性化することに貢献していくこと、安全で安心でイキイキとした住みたい街を創るお手伝いをして地域社会がこれから都市間競争に勝ち抜いていくために貢献することがミッションだと思いますので、その中核となる「街の健康力」を上げていくという意味でも、NOBYの活動を充実させていきたいと考えています。
NOBY T&F CLUBっていうのは、たんに一企業の陸上クラブということではなくて、自治体を含め、大学であったり、あるいは他企業であったり、いろんな地域の人はもちろんそうなんですけど、いろんな方がNOBYに関わることによって、そのつながりがさらに活動を活発化させていけるのではないかと考えており、NOBYの活動もそのような連携が進んでいけるように努力したいと考えています。

—荒木先生、何か良いアドバイスは?

荒木:そうですね。それはとてもいい、しっかりとした戦略だと思います。ちょうど、都市の発展っていうのは、1人の人間とか生物の成長と似ているところがあります。それは何かというと、隅々にまで行き渡った毛細血管、血がずっと流れ渡る。同じように情報もこう流れ渡って。私たち人間の体もそうなんですけれども、ばらばらじゃないんです。ひとつ何かが良くなるとそこが頑張って、免疫機能が良くなれば、何かホルモンも関係する、自律神経も関係する、こういうものを考える脳全体にも関係するということなのです。
お年寄りたちはそういう意味では停滞することなく、長年の経験を蓄積したものを、伝えるという能力があるし、伝えたいって言うんです。こういう方たちが社会に活躍できる場が必要。その前提となる、社会に出て何かしたいという意欲を醸し出すっていうのは、まさに身体の問題から始まります。高齢者が外に出るのを嫌がるというのは、もう皺(しわ)があるとか、頭がこういうふうになってるから嫌だということもあるけれども、高齢者だからといって邪険にされるんじゃないかと考えているからでもあります。いや、そんなことない。私は若い者に負けない、こういうものがあるっていうことを気づいていただくことが大切です。客観的に、科学的にみても、高齢期にこそ非常に伸びる能力はたくさんあるのです。そういうことをお伝えして、高齢者が自ら、老化を防ぐという消極的な理由だけなく、積極的に高齢者だからこそ伸びるものを伸ばそうっていう意欲を持てば、若い人たちもそういう人から学ぼうとかいう気運が、人の関係がどんどんどんどん広がってくる。そうすると、新しい産業、新しいテーマっていうのがね、どんどん生まれてくると思います。
だから、どんな建物を作っても、どんなプログラムを作っても、それを実行する人、担い手、これはただたんに若い世代だけではなくて、年齢的にも階層的にも幅を広げるっていうこと自体が、相乗的に街の活性化につなげていきます。この活性化した街が、またさらに人々を育てるという、そういう循環のなかには、スポーツも非常に大きな役割をはたす、これは歴史が証明していると、私は思います。

—NOBYのまちづくりへの取り組み

朝原:荒木先生もおっしゃったように、いろんな年代の層の人たち、多様な価値観を持った人たちが集まる街。そして、そういう多様な人たちが元気になるということが、街づくりにおいて非常に欠かせないんじゃないだろうか?先ほども触れましたが、これまでは、NOBY T&F CLUBのプログラムというのは、子どもたち向けを中心にして作ってきました。特に荒川コーチであったり、山本コーチ、あるいは低学年を見てもらってる鈴木祐美子コーチと鈴木奈都美コーチにも努力してもらって、いいプログラムになってきました。しかし、これからはさらに多様な人たち、シニアの方々にも対応してもらえるようなプログラムづくりを、NOBYはやっていかないといけないことだと考えています。
そして、このNOBYの活動が地域社会の課題の解決につながるような効果が出していければ、スポーツの価値というものも社会に浸透していくのではないでしょうか。そのためにもさらに努力を重ねてNOBYという社会連携モデルを西宮のみならず多くの地域で誕生するお手伝いもしていきたいなと思っております(2015年大阪市でNOBYを開講、京都市で大学運営のクラブに協力予定)。荒木先生、これからもアドバイスをよろしくお願いします。

荒木:こちらこそ、よろしくお願いします。

荒木秀夫(あらきひでお) 徳島大学総合科学部教授
1952年生まれ。筑波大学 大学院博士課程体育科学研究科体育科学専攻 修了。学術博士(筑波大学)
徳島大学 教授、大学院ソシオ・アーツ・アンド・サイエンス研究部教授。
「コーディネーション運動‐トレーニング実践へのガイド‐」(財)健康体力づくり事業財団、「脳に効く!コーディネーション運動」桐野 衛二・多田 ゆかり共著 など、コオーディネーショントレーニング理論に関する著著多数。
全日本大学サッカー連盟評議員、社団法人徳島県サッカー協会理事・大学高専部長、NPO法人日本コーディネーショントレーニング協会理事。

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