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2012年02月08日
意識の変化は持続している?
豊田 尚吾
2012年も既に2月に入り、あと1ヶ月あまりで東日本大震災発生後1年を迎えようとしています。この間、震災やそれに伴う事故がどのような影響を与えたのかについての調査や提言が様々なところで行われてきました。マクロ経済的な視点から、個別の被災者の具体的な暮らし向きに至るまで、様々な論点が提示されています。
エネルギー・文化研究所でも昨年6月に、臨時の生活意識調査を行い、季刊誌CEL97号でその結果概要を報告しています。そこでは他の研究機関が公表した結果と同じように、生活者の互助やつながりを再評価する意識、今までの生活の中にある無駄や行き過ぎた部分を見直そうとする気持ち、省エネルギーや再生可能エネルギーに対する関心の高まり、エネルギーの供給体制に対する疑問などが表れていました。
ただ、震災のインパクトがあまりに大きかったため、そのような意識の変化もそれにつられたものであり、時間が経過するとともに薄れていくのではないかと見通しを持つ人も少なくありませんでした。したがって、今述べたような変化が一時的なショックであり、時間の経過とともにゆり戻しが起こるのか、それとも生活者の意識の構造そのものが変化し、今後も継続していくものであるのかの検証は重要な課題であると思います。
冒頭にも申しましたように、震災後1年近くが経過しつつある現在、今一度、生活者の意識の“変化の変化”があるのかないのかを調べることに意味があると考え、1月下旬に調査を行いました。その内容については3月末に発行予定のCEL100号で報告しますが、ここでは速報的な情報提供と、地域差に焦点を当てた考察を行います。
確認ができたのは、基本的な回答傾向に前回との差はあまりなかったということです(一部の結果は下図で掲載しています)。確かに事前の予想通り、いわゆるゆり戻し、一時的なショックからある程度慣性が働いて、回答が落ち着く方向に変化するという現象は広く見られました。ただ、それは肯定的な意見が全体の5%程度減少するといった水準にとどまりました。例えば「震災を機に、生活が多少不便になっても、省エネを実践しようという意識が高まった」かどうかを問う質問について、肯定的回答(「そう思う」「どちらかといえばそう思う」の合計)は前回の61.4%に対し、今回は60.4%で1.0%の減少となっています。70%であったものが50%に激減するとか、逆に何十%も激増するということはありませんでした。
その結果からいえば、2011年6月の前回調査から半年以上経過したものの、大きなゆり戻しもなく、前回の結果が比較的頑健なものであったといえるように思います。

※大阪ガス(株) エネルギー・文化研究所 調査
(調査時期 2011年6月、2012年1月)
※「そう思う」「どちらかといえばそう思う」の合計(%)
※拡大図をPDFで添付しています
細かく見ていくと、極端な回答が減って中央近くの回答に寄っていく傾向が見られる質問が多い中、前回の回答傾向に拍車がかかっているものもありました。それは依然として専門家の間でも主張が大きく対立して解決の方向性が見えず、生活者の不安感を増すような情報が出続けているエネルギー関連の質問です。企業に対する不信感や制度の見直しに対する必要性に前回よりも大きな支持が集まっていました。
一方で、エネルギーに関する知識について、不足感を自覚している生活者も多いようです。今まで光熱費という生活コストの節約以外、あまり関心を持たれていなかったエネルギー問題に関して、今後どのように発展させていけばよいのかを、的確に判断してもらうことが今後ますます重要になってきます。そのためにも、生活者がエネルギーに関する基礎知識を持つためのお手伝いをすることは、エネルギー事業に携わる我々の使命でもあると今まで以上に強く感じました。
これとは別に、気になったのが意識の地域差です。今回の調査も諸事情あり、関東と関西のみを回答対象としたのですが、前回同様、関東がエネルギー問題のみならず、生活を見直したり、生活者同士の助け合いを重視したりする傾向が明らかに強いという結果となりました。被災地にも近く、放射性物質の影響や交通機関の麻痺、計画停電などの不自由を実体験したという意味で、関東の回答者への影響が、より強く現れているということは不自然ではありません。
ただ、それが本当に被災地との距離が近いか遠いかによってもたらされたものなのかに関しては精査が必要です。よしんば、距離の影響だとしても、“結果として”意識の変化の大きく変わった関東と、今までとあまり変わらない関西という意識のギャップができてしまうのかもしれません。それは長い目で見てどのような影響があるのでしょうか。
現在、エネルギーのある政治リーダーの出現で、関西から日本を変える、といったような元気のよい声が聞こえてきます。ただ、本当に世の中を変えるためには、誰かに責任を委ねるのではなく、一人一人の生活者の意識と行動が変わることが必要です。
その意味では、本当に世の中を変えていく力を持った地域や生活者というのは、震災で大きく価値観を変えた、被災地や関東を中心とした人たちなのかもしれません。関西に基盤を持つ企業に所属する者として、今回の調査結果を見て、ふとそのような思いが頭をかすめました。


※データは2012年1月調査の回答









