特集 持続可能な開発目標(SDGs)への貢献
SDGsの社内浸透活動
Daigasグループは、事業活動を通じた社会課題の解決とSDGsへの貢献を進めるうえで、役員、従業員のSDGsへの認知、理解、浸透は欠かせないと考えています。そこで、2017年度から社会課題やSDGsと自らの業務や日常生活とのつながりを考えてもらうための活動を始めています。
SDGsに関する認知、理解、浸透への取り組み
- 社内での取り組み
全従業員を対象としたCSRセミナーの開催

講師の国谷裕子氏(左)と田瀬和夫氏
2017年度の「CSRセミナー」は、キャスターの国谷裕子氏、SDGパートナーズ代表取締役CEOの田瀬和夫氏をお迎えし、役員、従業員約190人が聴講しました。セミナーでは、私たち一人ひとりがSDGsに取り組む重要性や経営戦略に取り組むことで生まれる付加価値等について、お話しいただきました。聴講者アンケートでは、SDGsの目標達成に向けて自身の業務やプライベートで貢献できることがあるとの回答が92%を占めました。
- 社内での取り組み
座談会「DaigasグループのSDGsへの取り組み 〜各取り組みから気候変動への対応へ〜」

右下から時計回りに、藤野氏、又吉氏、本田氏、津田

座談会の様子
Daigasグループは、気候変動への対応など事業活動を通じてSDGsに貢献する取り組みを進めています。今後、取り組みをさらに深めていくうえでの課題について有識者を招いて座談会を開催しました。
- 公益財団法人 地球環境戦略研究機関
上席研究員
藤野 純一 氏 - 国立研究開発法人 産業技術総合研究所
エネルギー領域 安全科学研究部門
社会とLCA研究グループ 主任研究員
本田 智則 氏 - みずほ証券株式会社
市場情報戦略部 上級研究員
又吉 由香 氏 - 大阪ガス株式会社 CSR・環境部長
津田 恵
■参加者:
SDGsを活用し、イノベーション創出、コミュニケーション、動機づけにつなげる
藤野氏:SDGsは国連総会で2015年9月に採択された「我々の世界を変革する、持続可能な開発のための2030アジェンダ」の肝の部分ですが、一部です。前文には「人間、地球および繁栄のための行動計画」と書かれており、その背景には人間の活動が地球の容量の限界を既に超えているのではないかという危機感があります。そこで2030年までに達成する17のゴールをまず共有し、バックキャスティングで新たなソリューションを創り出すとともに、取り組みのフォローと評価を行う仕組みが「2030アジェンダ」なのです。SDGsは様々なステークホルダーと対話する際の世界の共通言語ですが、2030年に向けて、そもそもの大阪ガスの存在意義、顧客に提供すべきサービスを考え、社員自らが誇りを持てる会社とは何か話し合うときにも活用できます。
津田:大阪ガスは創業以来、ガス灯で街を明るくしたい、ガスコンロで家事の負担を減らしたいなど、人々の暮らしをよくしたい、お役に立ちたいという気持ちを持って事業活動を行ってきました。これは、私たちの「おせっかい精神」「進取の気性」「誠心誠意」という3つの強みに基づいた行動であり、誇りに感じていることです。SDGsをうまく活用することでイノベーションを加速でき、従業員の誇りとモチベーションの原動力になると考えています。
藤野氏:当初は、特に「1 貧困」「2 飢餓」「5 ジェンダー平等」などに貢献したからこそ今があるのですね。SDGsを活用することで、どのようにして今日の会社の形態ができてきたのか、今後はどのような使命を持ち得るのか、2030年を想像しながらご検討されてはいかがでしょうか。
ライフスタイルを含めた社会の仕組みの提案と保有ノウハウの総動員でCO2削減へ
本田氏:気候変動対策として、温室効果ガスの排出削減は今やビジネス上で必要不可欠なものになっています。そこでの目標や成果を定量化していくことはもちろん、現状を認識したうえで適切なアプローチができるように目標を常に見直し、社会のなかに仕組みを作って行動していくことが重要です。注目しているのが、ライフスタイルの提案を念頭においた排出削減です。たとえば、「エネファーム」は理論上の効率ではなく、実際の生活のなかで使うときにどのような貢献ができるか、新たな使い方はないか、そのための仕組みは何かを考えてほしいです。
津田:目標に向けたプロセスが重要です。もし未達成だった場合、次にどの手を打つか、目標が実態に即しているのかを考え、PDCAを回していきます。また、お客さま先ではガス機器の実際の使い方を分析し、ソリューションを提案することはこれまでも手掛けてきたので、私たちが持つノウハウを総動員すれば気候変動に対応できる新しい提案ができると考えます。
本田氏:2050年に向けた長期を予見するのは困難です。そこであえて、将来の会社のあり姿を宣言してみてはどうでしょうか。本気度を示すことで、蓄積された技術がどう使えるかなど、進むべき方向性の話の土台ができるのではないかと思います。
津田:2050年に向けて、若い従業員にもぜひ一緒に考えてほしいですね。今の延長ではない不連続な変革が求められるでしょうけれど、社会全体が追求するゴールはSDGsが目指すものだと思うので、ぶれずにしっかり位置づけていきたいと思います。
情報開示と対話を充実させ、経営戦略に反映していくプロセスが重要
又吉氏:持続可能な社会の構築というSDGsを達成するためには政策的なアプローチだけでなく、お金の流れを変えることが必要になります。そのため、ESGで企業を評価する投資指標が、資本市場におけるSDGs達成のための中核的なフレームワークになってきています。特に化石燃料への依存度が比較的高いエネルギー企業は、E(環境)に関する情報開示の充実が重要です。また、情報開示のあり方や企業価値を高めるための対話手法も問われています。
津田:これまでは企業の瞬発力や筋力を示す財務情報だけを開示していればよかったのですが、これからは内臓力を高めてサステナブルであること示す非財務情報の開示が求められているという認識です。
又吉氏:開示情報はデータでの評価が中心ですが、将来の不確実事象に伴うリスクと機会をどのように捉え、対応するのかというビジョンを投資家との対話のなかで発信してほしいです。さらに、対話で得られたものを経営戦略に反映させていくことも重要です。気候変動のみならず社会の多様な課題を同時達成するには、あらゆるオプションの総動員が不可欠です。そのなかで天然ガスの高効率利用が、SDGsへの貢献になることをもっとアピールすることが大事だと思います。
津田:気候変動のリスクと機会をさらに分析し、投資家の皆さまと対話していくとともに、事業戦略の議論を深めていきたいと思います。皆さま、本日はありがとうございました。